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ホルヘ・ルイス・ボルヘス ブロディーの報告書


 短編小説の巧みな作家は多いが、ボルヘスの短編は特別だ。「伝奇集」「不死の人」といった作品集に収められた短編は、いずれも短い作品ながらそこにこめられた意匠は極めて深く、長編並みの重量感がある。
 これはそんなボルヘスの、「伝奇集」や「不死の人」からは20年ほど後の1970年に発表された短編集である。

 ここに収められた短編は11作。以前の「伝奇集」や「不死の人」とは明らかに違うカラーで統一されている。以前の作品集で大きな比重を占めていた幻想味はここには全く覗えず、どの作品もリアリスティックで、ほとんどの作品が犯罪をテーマにしていて、ボルヘス・ノワールとでも言うのだろうか、なんとも言えない独特の雰囲気のある作品が並んでいる。

 中でも白眉は「マルコ福音書」という短編で、これは…う~ん、なんと表現するべきだろうか。宗教の矛盾を突いた作品とも言えるし、事件そのものは無知が惹き起こした悲惨な事件とも言えるだろう。聖書を引き合いに出して、再話する形で(発表当時の)現代の受難の物語をスリリングに描き出す。後味の悪い、衝撃的な幕切れに唖然とする。
 表題作「ブロディーの報告書」もかなり後味の悪い作品で、ヤフー族という未開の人種についての報告書という体裁のもの。結論としてブロディーはこの未開人たちを「救済」する必要がある、と述べているが、その「救済」が彼らの文化を破壊することに他ならないことは自明のことである。こういった「報告書」をもとにアチェベの「崩れゆく絆」のような事が世界中で起きたのだ。
 他ではふたりの男が因縁の武器を持ってしまったが故に殺し合うことになる、というちょっと以前のボルヘスに近い幻想味が盛り込まれた「めぐり合い」が印象に残った。

 この作品集は出版当時「伝奇集」のような作品を期待した読者たちからは不評だったのだそうだが、それでもセールスは好調だったらしい。たしかにこっちの作風の方が一般受けしそうだと思う。「伝奇集」や「不死の人」が苦手だった人にもぜひ読んで欲しい短編集だ。
.05 2014 中・南米文学 comment0 trackback(-)

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