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おおかみこどもの雨と雪


2012年 日本
監督:細田守
声の出演:宮崎あおい、大沢たかお

 私は細田守の作品をひとつしか見ていない。「時をかける少女」だ。で、記事にも書いたように正直好きではなかった。だからこの映画もあんまり食指が動かなかったのだが、ついつい見てしまった。

 本当に映像は美しい。田舎の光景など背景やエフェクト動画は見事なものだ。ジブリや新海誠の作品にも劣らない。だが「時をかける少女」でもそうだったように、相変わらず人物の絵はぞんざいで立体感もなく、背景から完全に浮いてしまっている。このアンバランスな絵がまず気になる。
 これについて細田監督は「キャラクターの影なし作画は、キャラクターから影をなくすことで逆に影を強調し、またアニメアニメしない幅広い人に見てもらうための画作り」との発言をしている。また、「シンプルな方が見やすく、豊かに出来る(以上Wikipediaから引用)」ということなのだが、これは全く納得できない。どんな絵だろうとアニメなんて見ない人は見ないのだし、シンプルな方が見やすいのなら背景もシンプルにすべきだろう。背景やエフェクトアニメにはあれだけ手をかけるのに人物を影も付けずぞんざいに描くのは、私にはこれは人間を軽視しているからだと思えてしまう。そして、この作品の内容そのものがまさしく人間軽視である。

 ヒロイン花は狼男と出会い、恋に落ち、結婚して二人の子供をもうけるが、子供たちは狼男の特徴を受け継いでいた。夫の死後花と娘の雪、息子の雨は人目を避けるべく田舎に移り住む。ここで成長していくなかで子供たちは自分が普通の人間ではないことに悩む、というようなストーリーだ。結果雪は人間として生きることを選択し、雨は狼としての人生を選ぶのだ。一見雨の選択を許すのはまっとうな話だと思えるかも知れない。だがニホンオオカミは既に絶滅している種だ。雨は結局狼としても一人ぼっちで人生を過ごさなければならない。人間として過ごせば、少なくとも母や姉がいてくれるのに。母である花は、わずか10歳の子供である雨にそんな選択を許すべきではない。親のエゴと言われても、だ。

 雨と雪の姉弟は、要するに社会不適合者のカリカチュアである。ほかの子達と異質な性向・才能を持っていて学校という社会の中で浮きそうになっている。それを姉の雪は自分を上手く抑えて、時に暴走することもあるが普通の女の子として生活している。だが雨の方は人間社会(学校)に幻滅を感じ、不登校になり野生動物としての生活に心惹かれていく。花は雨が不登校になった時点で危機感を覚えるべきなのに、全くそんな描写がない。雨が山に入って山のヌシである狐と親しんでいることを知っても、雨の山行きを止めようともしない。
 これをはじめ、父にいつも笑顔でいろと言われたからと父の葬儀でも笑顔を絶やさなかったエピソードなど、花の行動にはかなり異常な点が多く、一度としてはっきり雨を叱るシーンがないなど母親としての行動にも常に疑問が付きまとい、納得できない。

 雪のパートだけ見たら、「狼男」要素というのが少女の幼い凶暴性の比喩であり、それを恋愛感情のようなものの発現によって捨て去って行くことによって大人へのステップを一段上がる、というストーリーがはっきり示されていて、演出面でもそれがとてもうまく描かれているのに、もう一方の雨の旅立ちは、おそらく作者としては個性の尊重とか才能の肯定とかを意図しているのだろうが、いわば人間性の否定、獣性・凶暴性の容認とも取れるわけで、雨が人間社会から去るのを容認した花は、母としてはコントロールできなくなった子供を社会から葬った(殺害した)のと同じことではないだろうか。嵐の日を舞台にこの二つのエピソードが並行して語られるが、そのアンバランスさには気持ちが悪くなる。

 そして、花は雨がいなくなったことを世間にどう説明したのか。それが語られない。嵐の日に行方不明になったとでも?それこそ手に負えなくなった息子を殺害して山に捨てたのでは、と疑われるのではないだろうか?この作品には全体的にそういう現実味が乏しい。どうしてそうなるのか。

 この監督は人間が嫌いなのだと思う。だから絵も中身も正しい人間が描けていない。細田が結婚しているのか、子供がいるのか知らないが、もし子供がいたとしても子育てには参加してないんだろうと思う。極論すれば子育てにおいて「個性を生かす」などはただのきれい事に過ぎない。「個性を生かす」などというのはあくまでその子が社会に居場所を見つけた上での事だ。親は最低そこまでは子を導く必要がある。そんな事すら、彼が知らないことは明白だ。
.14 2014 アニメ comment6 trackback(-)

comment

細田守の作品は「サマー・ウォーズ」しか観てないので、もしかしたら的外れな意見になるかもしれないことを先にお断りして・・・。

細田作品は人間関係とか家族なんかを積極的にメインモチーフに使っているのですが、違和感がつきまとう点で同意見です。

SWはコンピュータウィルスによる事件がメインストーリーを構成しているのでクライマックスで盛り上がります。また、キャラクター間の構図も物語を構成する要素としては過不足なく描かれているのも事実です。

ただ、あれだけ細かく日常描写をしている割に生活感みたいなもの、ソトとの繋がりが希薄なのです。登場人物だけ見ている間はいいのですが、観ていて我に返った時に「それはないでしょう」みたいな感覚があるのです。
その違和感を「細田監督が人間嫌い」だという結論に帰結させようとは思いませんが、ちょっとした日常生活を営むための要素に対してあまりに無頓着な気がしています。

正直なところ、そのあたりの感覚は普段の生活に基づくご本人の肉体感覚だと思うので、自分には単に合わないのだと割り切っています。
ちなみにキャラクターの絵柄についても全く同感なのです。でも近年の主流の傾向だと思って、今さらツッコむ気もないです。このような絵柄については「作画する人のスキルによる仕上がりへの影響」を極小化する方向に独自進化したものであり、好悪はともかく作画水準を一定以上にキープする上で貢献しているとは思っています。

2014.02.15 10:24 | URL | Amleth Machina #SY/LY76s [edit]
録画したまま見る気にならず放置しています(笑)。それなのにこの映画よく観たな自分。

>「作画する人のスキルによる仕上がりへの影響」を極小化する方向に独自進化したもの

要するに、「下手くそなアニメーターに描かせても一定の仕上がりが期待できるよう複雑なデザインを避けている」ということですね。
でもそれは「近年の主流の傾向」でしょうか?これほど手抜きな描き方の人物は予算がはるかに低いだろうTVアニメでもそうそう見かけないと思うのですが…
2014.02.15 20:04 | URL | piaa #- [edit]
>でもそれは「近年の主流の傾向」でしょうか?
>これほど手抜きな描き方の人物は予算がはるかに低いだろう
>TVアニメでもそうそう見かけないと思うのですが…

すみません、細田作品の作画傾向を一般的な傾向として言い切って
しまうのは乱暴だったかもしれませんね。

'90年代以降の傾向として、仕上がりが綺麗だったり、回による
出来のムラはなくなったけど、のっぺりした感触と差別化できる
作家要素が少なくなったと感じています。そのため、piaaさまが
細田作品の著しく手抜きと感じられたキャラクター作画も、他作
品に比べて程度の差にすぎないとして観ていたので、前回の発言
となりました。

ここ二十年間の日本のアニメの方向性については色々思うことが
あるのですが、もう少しきちんと考察してみます。

細田作品のキャラクターに立体感が感じられないという点については
完全に同意です。

2014.02.15 23:46 | URL | Amleth Machina #SY/LY76s [edit]
>仕上がりが綺麗だったり、回による
出来のムラはなくなったけど、のっぺりした感触と差別化できる
作家要素が少なくなったと感じています。

確かにそうですね。80年代頃のアニメは個性的な作画のものが多かったですが、回によってはとんでもない絵になってたり、全然動かなかったりとかしましたよね。最近はひどい絵や動かないとかはあまりないですが、絵柄的に似たり寄ったりのものが多いとは思います。
逆に言えば細田作品はその雑な描き方をもって個性的と言えるのかもしれませんね。
2014.02.16 01:00 | URL | piaa #- [edit]
通りがかりのものです。
正しい人間がかけていない以下のくだりはどうかな、と思いました。

細田監督が子育てに参加しているどうかは知りませんが、私は良く書けていると思いました。

piaaさんは、子育てに苦労されていないのでは?
piaaさんのお嬢さんお二人はきっと育てやすいいい娘さんなのではないでしょうか。

親ができることなんて限られているんですよね。
私は花ができる限りのことをしていると思いますし、そこから子どもが同じ社会を選ばないとしたらしょうがないと思います。
2014.02.19 10:17 | URL | puragoro #C9gRCUcI [edit]
puragoroさん、コメントありがとうございます。

子供の特性を生かせる環境を与えるべき、と思えば、雨が「自然」を選んだ事を肯定的に考えることもできます。
でも雨が選んだ世界は、あれは野生の世界。『社会』ではありません。しかもほかの狼は一匹もいません。彼はこれから全く生産的でない人生を送ることになります。それはたとえば外国に住むとか、人とは違うリスキーな職業に就くのとは訳が違います。
極論すれば、雨はネットゲームの世界へ行ってしまって、一生ひきこもりになる事を選んだニートと大きな違いはありません。当然ながらそんなのを親は容認すべきではないですよね。

ご指摘のとおり、私は特別子育てに苦労していると言うようなことはありません。二人とも素直でなんでも話してくれるいい娘です。
でも20年の間にはやはり級友たちや部活などとの関係でいくつも細かいトラブルはありました。でも普段からのコミュニケーションの積み重ねで、問題の芽が小さいうちに対処できてきたから大きな問題もなく過ごせてこれたのだと思います。

花は雨が学校で孤立していることを数年にわたって漫然と見過ごし(そのように見える演出でした)、結果雨は不登校に。とても彼女が、親としてできる限りのことをしているとは、私には思えませんでした。
2014.02.19 21:50 | URL | piaa #- [edit]

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