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トーベ・ヤンソン ムーミン谷の十一月


 ムーミンシリーズあと二作読んでなかったなあと思って二冊買ってきて、一生懸命読んだら「ムーミンパパ海へ行く」と間違えて「ムーミンパパの思い出」をまるまる読んでしまった。どおりでなんか読んだことあるなあと思ったんだ。図らずも50歳を超えていかに記憶力が弱っているかが証明されたことになったが、それにもめげずに読んだこれはムーミンシリーズ最終作。

 これはね、傑作だ。
児童文学でここまで深い内容を持った作品は例がないのではないだろうか。

 冬ごもりが近づくムーミン谷の十一月。スナフキン、ヘムル、フィリフヨンカ、ミムラといったサブキャラの面々六人がムーミン屋敷を訪ねるが、ムーミン一家はどこかへ出かけてでもいるのか、ムーミン屋敷はもぬけの殻。六人はムーミン屋敷に住み始める、という意表をつくストーリー。そう、この作品にはムーミン一家が登場してこないのだ。

 そこで浮き彫りになるのはもちろん不在の物寂しさでもあるのだが、それぞれのキャラクターがムーミン一家の一員にあこがれを持っていて、その役割を果たそうとするとする。ヘムルはパパに、フィリフヨンカはママに、ミムラはミイに、ホムサ・トフトはムーミントロールに、そしてスクルッタおじさんはご先祖様に。スナフキンだけはスナフキンのままだが、そうやってなんとなく住み始めた彼らが共同生活を送るうちに擬似的にではあるが家族を形作っていくさまを淡々と描く。

 これはいろんな見方ができる作品だと思う。彼らがムーミン一家のことを思いめぐらすさまは、まるで死者を偲んでいるかのようだ。そう考えると死者への思いを描いた作品と取ることもできる。家族のありようを、家族ではない者たちの共同生活を通じて描いてみせた、とも取れる。どのように読んでも決して間違いではないのだろう。
 考えてみたらムーミンシリーズの登場人物たちは、全員がわがままで利己的である。この作品でも全員が自分の思った通りに行動する。作者はこの作品で明らかにフィリフヨンカを主役に据えているが、彼女の行動も全く利己的で、自分のやりたいことしかやらない。やりたいことでも人に言われてやるのはまっぴら、というスタンスだ。それでも料理をし、もう二度とやらないと言い張っていたお掃除を始めることで自己を解放していく。ほかのそれぞれのキャラにも、頑迷なスクルッタおじさんにさえ同じように解放が訪れ、やがて満足した彼らは自分に家へと戻っていくのだ。

 そして幕切れまでムーミン一家は姿を現さない。彼らの乗った(と思われる)ヨットが近づいてくるのをホムサ・トフトが迎えようとするところでこの作品は(そしてシリーズは)終わるのだ。こういう事ができるのはトーベ・ヤンソンという作家がホンモノの作家だからこそだと言えるだろう。そのクールさに頭が下がる。

 くり返し言おう。これは傑作だ。これはもはや児童文学ではない。大人であるあなたが、ぜひ読むべき一冊だ。
.26 2014 その他欧州文学 comment2 trackback(-)

comment

ファンタジー大好きになった小学校中学年以降今も「指輪物語」「ホビットの冒険」の映画を楽しみに見ていますが、小学生から見ても「ムーミンシリーズ」は北欧のクールな自然描写と作者の突き放した哲学が子供には不思議な魅力と解りにくい近寄りがたさがありました。

このシリーズ最後の本、今読んでみたいですね。

ちなみに、スナフキンの魅力に目覚めたのは二十歳過ぎでした。
2014.02.04 13:14 | URL | mimosa #pSJ6Fihk [edit]
いやほんとに、このシリーズって全然子供向きじゃないんですよね。
このシリーズって、「彗星」は戦争、「夏まつり」は大水害、「冬」は北欧の厳しい冬というようにそれぞれ危機的な状況をムーミン一家が楽天的に、後先考えずに乗り越えていく物語のパターンなのですが、ここではそれらの大前提を見事にひっくり返して見せます。
日本的な表現で言えばちゃぶ台返しというんでしょうか。
すごいです。是非ご一読を。
私は「ムーミンパパ海へ行く」が残ってしまいました。読まなきゃ。
2014.02.04 21:19 | URL | piaa #- [edit]

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