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ローベルト・ムージル 三人の女・黒つぐみ


 この作家のことは全く何一つ知らないまま古本屋で発見して買ってきた。ローベルト・ムージルはオーストリアの作家だそうだ。これは彼の連作短編「三人の女」と短編「黒つぐみ」を収録した一冊。

 「三人の女」は、それぞれには全く関係のない三つの短編からなる連作。というか三作共通のテーマみたいなものが全くので見えないので、実のところ連作でさえない。三作に共通しているのは単にある女性に出会うことで運命が変わってしまう男を描いているというプロットだけだ。とはいえ誰かに出会って運命が変わるのは当たり前のことで、それが共通プロットとはとても言えないだろう。

 三作のうち、人妻とねんごろになり、結局はそれが原因で命を落としてしまう男の物語「グリージャ」と中世の貴族の夫婦の物語「ポルトガルの女」は、それぞれ短編として佳作であるものの、特筆するような内容ではない。この程度の短編ならそのへんにごろごろしていると思う。

 ところがもうひとつの作品「トンカ」が曲者。これは下働きの女性トンカと彼女に恋をした金持ちの息子がふたりで駆け落ちをすて暮らし始めるのだが、やがてトンカが妊娠する。だがそれは彼の子ではなく、しかもトンカは深刻な性病に罹患していた。疑いようのない事実を前にしていながら、彼はトンカを捨てることもできず、不貞を認めない彼女を信じようとするが、ふたりの行く末はやみにとざ。この救いのない物語が、暗いトーンでゆっくりと語られ、結局真実は何も明かされずに物語は終わる。
 ここで作家は一体何を描こうとしたのだろうか。ふたりの行く末は闇に閉ざされている。彼の子ではない子供を身ごもった時点でトンカの未来はもうないのだ。それでも必死にトンカを信じようとする彼の姿は滑稽でもあり、悲惨でもある。
 いや、そうではないのかも知れない。この作品に描かれるトンカは頭が良いとは言えないが徹底して善良な女性で、不貞の結果子供を身ごもるような風には思えない。実は主人公の男が本人が知らないだけで既に性病を持っていて子供の父親だったという可能性も捨てきれないのだ。そこが読者にとってもとても悩ましい作品である。
 トンカが不貞を働いたのかどうか、この一点をどう取るかによってこの作品は全く違う様相を見せてくる。その意味で非常に興味深い作品で、この作品は読者によって、あるいは読むときの精神状態によっても全く違うものに見えてくるのではないだろうか。
 
 私はどう読んだかといわれれば、かなり心がざわついた作品であったということを述べておくことに止めようと思う。
.15 2013 ドイツ文学 comment0 trackback(-)

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