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莫言 赤い高粱


 昨年(2012年)のノーベル文学賞受賞作家、莫言(モー・イェン)の代表作。「赤いコーリャン」のタイトルで映画化もされており、そちらでご存知の方も多いだろう。
 言うまでもないだろうが、莫言は現代中国の作家。

 実はこの作品、中編5作からなる連作で、岩波現代文庫から出ているこの本にはそのうちの最初の2作しか収録されていない。残る3作は同じ文庫から「続・赤い高粱」のタイトルで出ているのだが、今回はその一冊目しか読んでいない。ただしそれぞれの中編は完成度が高く、各作品の連作としての結びつきは全部読まないと評価できないほど強くはない。それを鑑みての分冊なのだろう。

 一作目の「赤い高粱」では侵略者である日本軍に対してゲリラ戦を挑む、語り手の祖父・余占鰲と祖母・戴鳳蓮を、彼らの若き日の出会いを絡めて描く。過去と現在(いや、語り手から見れば二つの過去を)行きつ戻りつして描き出すその手法は南米文学的で、実際この作家の作品は『中国のマジックリアリズム』などとも言われるのだが、確かにその雰囲気といい内容といいバルガス・リョサを思わせる。血なまぐさい戦闘のシーンもさる事ながら、高粱畑の赤い色彩が鮮烈なイメージで強烈な印象を与える。
 後半に収められた「高粱の酒」では一作目で書けなかった部分を補完するような形で、さらに詳しく若き日の余占鰲と戴鳳蓮が描かれる。ここから彼らの一代記が始まり、残りの作品で一族のその後の歴史が語られるのだろうか。

 とにかく全体にいかにも20世紀初めのまだまだ未開といっていい時代の中国らしく、粗暴で残酷なシーンが続出。結婚式の行列を襲った追い剥ぎを皆で寄ってたかって撲殺するシーンにはギョッとする。日本軍との戦闘よりもはるかに衝撃度が高い。登場人物の性格も粗暴かつ自己中心的。正直言って正視に耐えないような物語なのに、それでも目を背けられないような、そんな求心力がある。物語そのものも、世間知らずの小娘だった戴鳳蓮が嫁ぎ先で夫と舅が殺害されると途端に横暴な女主人に変貌するとかかなり強引な展開でかなり無理があると思うのだが、そういう細かいことが吹っ飛んでしまうようなパワーのある作品である。
 あと日本軍が敵役ということで、反日的な作品なのではと勘ぐる人もいそうだが、特にそういうわけではない。日本だって太平洋戦争の時代の話ならアメリカ人は敵になる、ただそれだけのことだ。

 『マジックリアリズム』とはその土地の土着的なものを全面に出しながら、その土地を代表する「色」を意図的に強烈な原色で再現したものと言えるだろう。『緑の家』なら緑だったし、『ペドロ・パラモ』なら灰色だ。ここでは題名通りの『赤』だ。強烈な赤が読者の心に焼き付く。もちろん赤は中国の色でもある。というわけで中国におけるマジックリアリズムが堪能できる不思議な作品だ。
.10 2013 アジア・アフリカ文学 comment0 trackback(-)

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