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ウィリアム・モリス ユートピアだより


 RINRINが大学の課題で読まなくてはならなくなって図書館から借りだしてきた共産主義関連本の中の一冊。ちなみに他にはマルクスとかエンゲルスを借りてきた。その中でこれは小説仕立てでサクッと読めたので拝借して2日で読んだ。
 これは19世紀英国の装飾芸術家で社会主義運動家でもあったウィリアム・モリスが1891年に発表した共産主義ユートピア小説。

 日頃ブログには自分の仕事のことと政治がらみのことは書かないことに決めているのだが、多分いつもこのブログを読んでいる人には私が左寄りであることはお察しのことと思う。実際最近では今のままの資本主義では遠からず人類は滅ぶのではないかと思っている。その辺りについてはこのブログを完全に止めるときにはちゃんと書こうと思っているのだが、かといって共産主義に入れ込んでいるわけでもない。
 それはさておきこの作品では19世紀の活動家がこうあれかしと考えた未来の理想社会が描かれていて非常に興味深い。
 19世紀末に書かれたこの作品には、当然ながら20世紀の現実の歴史は反映されていない。なのでここで語られる「歴史」には二度の世界大戦も、資本主義国家と社会主義国家の対立も、民族主義の勃興や宗教的対立もなく、今我々が手にして普通に使っているような、ネットや携帯電話といったテクノロジーはおろか、自動車すらもない。ここに描かれたのは作中の架空の歴史上の1952年の革命から少なくとも150年以上経った、22世紀頃の社会なのだが、人が移動するのに使われるのは馬車や手漕ぎの船である。鉄道すら廃止されているようだ。人々は19世紀初頭程度の科学技術しか持たず、自然に調和して幸福な生活を営んでいる。
 これはそんな未来に紛れ込んだ19世紀の人物(おそらくは作家自身)が未来社会のありようを見聞きする物語なのだが、読者も主人公と一緒にこの共産主義ユートピアを見聞することで様々な発見をして行くことになる。

 まずいちばんに思うことは、この理想郷は、人類には成し得ないということだ。共産主義ユートピアでよく言われることはお金というものがなく、仕事がレクリエーションのようになっている、ということだが、ここでももちろんそうなっている。ついでに政府と呼べるものもない。ところがこの前提がありえない。
 人類の活動というものは物を生産し、消費するというところから始まる。食べるものでも、小麦を作る人がいて、それをパンに焼く人がいて、食べる人がいる。100人の村で全員にパンを食べさせるためには100人分の小麦を作る農民とパンを焼く人が必要だ。そのために10人を農夫として働かせる必要があるとする場合、誰がその作業をするのか仕事を割り振らなければならない。もしおれは大工仕事しかしないよというやつがいたらこの社会は成り立たない。要するにやりたい仕事しかしない、あるいは仕事をしない人間がいてはこの社会は成り立たない。人々の100%の善意がないと成り立たないし、10人に農夫としての仕事をさせるよう采配する機関(それこそが「政府」だ)が必要だ。さらに作物が不作だった場合は他のコミュニティと融通する必要が出てくるがそういう交渉をする意味でもやはり「政府」が必要だ。

 「教育」についても疑問だらけだ。学校のような教育機関はなく、自然の中で学ぶのだというが、それでは子供たちは読み書きすら覚えないだろう。高度な科学技術などは及びもつかないだろう。その結果、彼らは200年もの間田園の牧歌生活に甘んじていて、飛行機も車もなし。宇宙への進出など考えもつかないだろう。
 人間は基本的に怠惰である。大多数の人間はしなくていいのなら仕事も勉強もしない。
 だから社会全体が生活の向上を目指して人々の後押しをする必要がある。資本主義の良い面は企業の競争によってそういう活力が生まれたことだ。共産主義の社会になっても、何らかの形で人類全体を向上させるアクションが必要だが、この作品の22世紀人は現状に満足していてそこに留まり続けている。
 現実に共産主義の世界が実現したとしても、人間は生活の向上を目指すだろうし、冒険心を失わないだろう。この作品にはそういう視点が欠けている。モリスはあくまで共産主義思想家で未来学者でもSF作家でもないのだからしかたがないのだろうか。
 
 それでもこの作品には示唆に富むところがいくつもある。資本主義の欠点として語られた『「にせの必需品」、あるいは人為的な必需品を際限なく生み出す』(143ページ)、『商品は使うためでなく、売るためにこそ作られる』(147ページ)などは全く身につまされる。今世界中にそういう商売をしている会社が、私の勤務先も含めて無数にある。そうやって資本主義は地球のリソースをいまも食い荒らしているのだ。ではどうしたらいいのだろう。残念ながら理想主義に走ってしまったこの作品には答えはないようだ。
.09 2013 英文学 comment0 trackback(-)

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