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kindleで「風立ちぬ」読む


 今月下旬公開のジブリの新作映画が「風立ちぬ」ということで、これは航空技師堀越二郎の伝記と堀辰雄の「風立ちぬ」をミックスした話なんだそうだ。
 ジブリは嫌いな私だが、「風立ちぬ」が好きな私としてはちょっと気になる。で、先日MINMINの病院の日に待ち長かった間に堀辰雄の「風立ちぬ」をkindleで改めて読んでみた。

 もちろんこの作品、これまでにも何度も読んでいるのだけど、これまではいつも新潮文庫版で読んでいたので「美しい村」とセットで読んでいた。
 しかし、これは今回気づいたのだが「美しい村」との流れで読んでしまうと、主人公が軽井沢を訪れ→そこで夏を過ごし→節子と出会い心惹かれるようになり→婚約し→節子が肺病に倒れ→サナトリウムに入り→節子が亡くなり→一年後の冬を悲しみと諦念の中で軽井沢で過ごす、という一連のストーリーの流れになってしまう。

 ところが、「風立ちぬ」だけを取り出して読むと、この作品にとってそういうストーリーの流れでは重要ではなく、間近に迫った死を見つめながら、その一瞬一瞬に幸福を感じながら懸命に生きた若者の姿が浮かび上がってくる。それは作者である「私」のエゴイスティックな自己満足であったかもしれず、作者自身もそう考えて自己嫌悪に陥ったりするが、それも含めてこれは恋人の死が迫るという極限的な状況で「幸福」というものについて突き詰めて考えた名作だ。生活する以上当然あっただろう細々とした出来事などの余分なものを一切削ぎ落としている点も素晴らしい。
 表面的には似たような物語である村上春樹「ノルウェイの森」が無駄な描写のオンパレードであったことを考えると興味深い。あれに比べたら「風立ちぬ」がどれだけ文学的に研ぎ澄まされた作品かよくわかると思う。
 また、「美しい村」とセットで読んでしまうと、そのそぎ落とし具合がちょっとわかりにくくなるので、もし「美しい村」とセットでしか読んだことのない方は単独で読んで見ることをお勧めする。

 現代の読者には「ヒロイン節子の心情が見えてこない」という不満もあるだろう。しかし、人と人の繋がりというのはどんなに親しくても100%見えているものではない。「冬」の章の最後のほうで、節子が風景の中に父親の面影を追っているのに気づいた「私」が動揺する場面があるが、どんなに愛していても人と人はこんなものだし、でもだからそれで「愛」や「幸福」が揺らぐものでもないのだ。

 全体に抑制の効いた語り口がいかにもジブリっぽいとは言えるかもしれない。ジブリがこの作品のどのシーンを映像化しどのシーンを捨てるのか、またどんなふうにアレンジしてみせてくれるのか興味津々である。劇場に観に行ってみようかな。
 アニメ好きな皆さんにはぜひこの本も読んで欲しいものだ。できれば映画を観てしまって先入観ができる前に。
.05 2013 日本文学 comment0 trackback(-)

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