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ジャネット・ウィンターソン 灯台守の話


 実は勤務先が大変なことになっていて、先月から今月にかけては本を読むどころではなかった。私の勤めている会社が、業界最大手のさる会社に買収され子会社化されてしまったのだ。システムがすべて親会社と同じものに変更になり、その非人道的なシステムに呆れ、独自性が皆無になってしまったうちの会社もうヤバイぞと思いながら、お客さんの利便性よりも自分の会社の利益が最優先の会社が、ただ見た目の価格が安いだけで業界最大手(それもぶっちぎり)になってしまう日本という国自体もう終わってるのかもしれないなどと思わずにはいられなかった一ヶ月だった。
 で、まあそんな中読んだのがこの小説。英国の作家ジャネット・ウィンターソンの作品である。

 「灯台守の話」というタイトルが不思議にシンプルなこの作品は、母を失って孤児になった少女シルバーが灯台守のピューに引き取られる。ピューはシルバーに、100年ほど前の牧師、バベル・ダークの物語を語る。この小説はシルバーとダークの物語が絡みあうように進んでいく。

 冒頭の、シルバーが母と一緒に住む家の描写が強烈だ。
「わたしたちの家は、崖の上に斜めに突き刺さって建っていた。椅子は残らず床に釘で打ちつけてあり、スパゲッティを食べるなんて夢のまた夢だった。」「夜になると、母さんは床の傾斜に交差するように吊ったハンモックに私を寝かせた」…まるでティム・バートンの映画に出てくるワンシーンのようだ。それからピューと住むようになったシルバーは、闇の中で暮らす事になる。ここの描写が素晴らしい。
「光が仕事なのに、わたしたちの暮らしは闇の中だった。…あらゆるものに闇がつきまとっていた。…わたしの服は闇で縁かがりされた。時化帽をかぶれば、つばが顔に黒い影をおとした。…腰を下ろすにも、いちいち闇を追い払ったり押しのけてから座った。闇は椅子の上にうずくまり、階段の途中にカーテンのように垂れ下がった。」
 こういう象徴的な入り方をした作品は、シルバーの成長とともに少しずつリアルなものになって行く、というわけではなく、ダークの物語と絡みあって物語られるこの作品は深い象徴と暗喩に彩られた大変美しいものだ。
 一回や二回読んでも完全に理解できるとは思えないが、ただその美しさに浸って読むのもいいのではないだろうか。

 この作品で重要な事の一つは、灯台守たちの物語る「物語」である。機械化されて「物語」が失われる事が語られる。「そのうち船から船乗りがいなくなって、飛行機からパイロットがいなくなって、工場がロボットだけになって、電話もコンピュータが返事して、そしたら人間はどうなっちゃうんでしょう?」
 今、私の会社が置かれているのがまさにこの状況だ。お客さんの『物語』に耳を傾ける事が「無駄」と言われる時代が来てしまった私の会社は、さてどうなるのだろう。
.28 2013 英文学 comment0 trackback(-)

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