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カーレド・ホッセイニ 君のためなら千回でも


 アフガニスタン出身の作家ホッセイニのデビュー作。原題は「The Kite Runner」。日本でも「カイト・ランナー」のタイトルで単行本が発売されたが、文庫では映画化された時の邦題「君のためなら千回でも」が採用されている。
 この作品には以前から興味があったのだが、タイトルがちょっとセンチメンタルすぎる感じがして、なかなか手が出ずにいた。

アフガニスタンという国はここ40年くらいの間に大変な事になっている。1973年のクーデターを皮切りに、1979年のソ連の侵攻、さらにタリバーンの台頭という流れで、国内はいまだに混乱を極めている。この小説はそんな時代の流れの中で生まれ育ったアミールと、その召使の息子ハッサンの人生を描いた作品である。
 あるアメリカの新聞がこの作品を「Soap Opera(昼メロ)」と評したらしいが、確かにかなりメロドラマ的なメリハリありすぎる展開。それでもこの作品の持つ強烈な力と独自性は揺るがない。

 イスラム。ニュースではよく聞く宗教だが、我々日本人には全く馴染みのない宗教だ。ニュースだけ見ているとこの宗教はまるで世界の悪の根源ででもあるかのように思える。だがイスラム教は世界で第2の信者数を誇る宗教で、信者の大半はそれこそ我々と何ら変わらない普通の人間なのだ。そんな彼らが否応なしに戦乱に巻き込まれ、ある者は死に、ある者は外国に逃れ、ある者は残って辛酸を嘗めた。そんな時代を背景に友情と禍根の物語が、平易な文章で描かれるこの作品には惹きこまれる。相当重い内容で、だからこそ「Soap Opera」的な過剰にドラマティックな展開で読みやすくしたのだろう。だとすればこの作家、なかなかのしたたか者である。翻訳も見事なもので、まるではじめから日本語で書かれた作品であるかのように読みやすく、上下巻で600ページもある作品だがすらすら読める。

 アフガニスタンという国のことも、ニュースではよく聞く。昔はソ連が武力侵攻したことから、「ランボー3」のような反ソ映画のネタにもされたし、最近ではタリバーンの拠点として米国の攻撃を受けたりもした。しかしそんな映画やニュースをいくら見ても伝わってこないのはそこで暮らす市井の人々のことである。戦乱の中で、タリバーンの恐怖政治の中で、人々がどうやって生き延びてきたのか。この作品を読んだらぜひそのことを考えて欲しい。

 アメリカに逃れ平穏に暮らしていたアミールが決死のカブール潜入を敢行、ハッサンの息子ソーラブを凶悪なタリバーンの手から救い出す。しかし心を閉ざしたソーラブを前にアミールは為す術を持たない。だがある日、子供の頃ハッサンと一緒に興じた凧揚げにソーラブを連れ出す。この幕切れは決してハッピー・エンドとはいえない。それでもなんとも言えない深い感動を覚える。
 そしてこの作品の邦題を、「君のためなら千回でも」に変更したのは、読む前ははセンチメンタルすぎる気がして違和感を持ったのだが、ここまで読んでしまった今では、全く妥当なことだったと思うのだ。
.06 2013 アジア・アフリカ文学 comment2 trackback(-)

comment

原作は読んでいませんが、映画をみました。
内戦状態になってしまう前の平和なアフガニスタンのシーンがとても印象的でした(もちろん現地ロケではないのですが)。 でも、そうした中でも人種的な差別があったことも暗示されていて。
映画はあまりメロドラマ風ではなくサラッと淡泊にまとめられていて、地味だけれど心に残っています。
2013.03.09 01:05 | URL | vogel #9JN9NMwM [edit]
アフガニスタンってニュースではよく聞くけど、全然知らない国ですよね。
そんな知らない国の抱える問題について、こういう作品を読んで、もっと知ることができ、その国に興味を持つようになる。
それだけでも素晴らしいことなのですが、
タリバーンの支配のもと(北の将軍様もそうですが)ではそんな事もできなくなってしまう。
自由っていいですね。

映画のほうも機会があったらぜひ観たいと思っています。
2013.03.10 01:31 | URL | piaa #- [edit]

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