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ヴィクトル・ペレーヴィン 寝台特急 黄色い矢


 以前読んだ『眠れ』に引き続き、ペレーヴィンの初期の短編集『青い火影』収録作ほか全7篇を収めた短編集。
 実はずいぶん前に買って、一度読み始めたのだが、冒頭に置かれた「幼年時代の存在論」がどうにもピンとこなくてその後ずっと放置していた。

 今回も正直この「幼年時代の存在論」はピンとこなかった。すごく抽象的で、いわゆる「小説」とは言いがたい作品なのだ。ところが次に置かれた「ニカ」がすごく面白くて惹きこまれる。これは同居するヴェロニカ(ニカは愛称)の奔放さに振り回される男性を語り手にした20ページほどの短編。読者は主人公とともに彼女に振り回されるのだが、最後にニカの正体が暴かれる。実は私は半分くらい読んだ時点で彼女の正体が分かってしまったのだが、それでもこの作品を十分に堪能した。ナボコフの「ロリータ」を連想させる作品で、非常に巧妙に書かれた傑作だ。

 「ターザン・ジャンプ」は夜の街を今知り合ったばかりの男と二人でさまようピョートル・ペテローヴィッチ。夜のロシアの街角はまるで迷宮のようで、そこを舞台に二人の男のちぐはぐな会話が展開して行き、やがて現実を逸脱していく。
 逸脱のイメージは「ミドルゲーム」でさらに顕在化。コールガールのリューシャは同業者のネリーと一緒に、コールガールを殺しては口にチェスの駒を咥えさせる猟奇殺人犯に囚われてしまう。ネタバレになるのでこれ以上詳しいことは書けないが…仰天の展開もさることながら、ストレートに同性愛を描いてしまっているのが珍しい。旧ソビエトでは同性愛は犯罪だったのだそうで、そのへんも考えあわせて読むと奥深い作品だ。

 で、表題作でもある「寝台特急 黄色い矢」がラストに収められているのだが、これは列車の中で生活する人々を描いた作品。いや「列車の中で生活している」というよりは「現実の生活を列車の中での生活に見立てた」という方が正しい。現実の生活の閉塞感を、列車の中での生活になぞらえているのだ。人々は列車の中で生活し、そこで食事し、恋をし、やがて死ねば遺品とともに車外に放り出される。
 この作品はストルガツキーの作品をいくつか連想させる。列車の中で人生をすごすというのは研究所の76階に街がある「トロイカ物語(アンガラ版)」を思わせるし、閉塞した世界と、そこからの脱出というのは「滅びの都」と同じプロットであるし、作品に漂う雰囲気も非常にストルガツキー的で興味深い。旧ソビエト時代にストルガツキーが感じていた閉塞感を、ソ連崩壊後のペレーヴィンも感じていたのだろうか。

 というわけでかなり興味深い作品集で、かつ面白かった。
 ただ冒頭に「幼年時代の存在論」を置いたのは明らかに失敗。もっととっつきやすい作品を冒頭に置くべきだ。あれが冒頭においてあるせいで読まない読者がきっとたくさんいるはずだ。
.07 2013 東欧・ロシア文学 comment4 trackback(-)

comment

だいぶ前に買ったこの本は、わたしもずっと塩漬け状態です・・・。
「ニカ」だけは読んだのですが、「ターザンジャンプ」でちょっと止まって以来、なんだか進まずにいます。
こうして記事を読んで思い出したので、読み直そうかと思っています。
冒頭からではなく、「黄色い矢」から前に進んで読んでみたらいいかも、と思ってます。
2013.02.16 16:02 | URL | kmy #GaU3vP2. [edit]
そうそう、なんだか気乗りしないで読み進められなかった本ってありますよね~。
でも改めて読んでみると意外とすいすい読めるかもしれません。
この作品集で言えば、やっぱり「黄色い矢」が一番いいと思いますので、それから読んでみるのもアリかもしれませんね。
2013.02.17 00:37 | URL | piaa #- [edit]
こんにちは、先日このブログにたどり着き、とても興味深く拝見させていただいています。
とても参考になっています。
また遊びに来ます!更新楽しみに待っていますね!
2013.03.05 17:32 | URL | ロシ #CofySn7Q [edit]
ロシ様、コメントありがとうございます。
これからもよろしくお願いします。
2013.03.07 00:15 | URL | piaa #- [edit]

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