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小川一水 天涯の砦


 小川一水というSF作家の作品は昨年「老ヴォールの惑星」という短編集を読んだ。これはかなり面白かったのだけど…

その「老ヴォールの惑星」のレヴューで私は、『さしてひねったストーリーを持っているわけでもないし、SF的にも唸らせられるような大仕掛があるわけでもない。破滅もなければ残酷シーンもない。』と書いていた。それでもヒューマニズムというか人間を信じる気持ちのような楽天的なところが感じられ、そこがあの作品集の魅力だったわけなのだが、そこがこの作家の長所でもあり欠点でもあるらしいと感じていた。

 で、この作品。これは宇宙ステーション「望天」で不測の爆発事故が発生、第4セクターと呼ばれる部分が破断して、接岸していた月往還船「わかたけ」ともども宇宙に漂流しはじめた。第4セクターのフロアと「わかたけ」船内には空気がなくなった所と気密が保たれた場所があり、空気が残ったスペースに数人の男女が取り残された。「望天」の作業員二ノ瀬は他の生存者を助けだそうとするが…というようなストーリー。
 「ポセイドン・アドベンチャー」や「タワーリング・インフェルノ」と言ったパニック映画を彷彿とさせるストーリーで、パニックSFとでも言おうか、そういった内容だ。

 この作品の一番いい所は、登場人物たちがみんな一癖ある人物ばかりで、馴れ合わない点。こういう作品ではどうしても生存者達が協力し合い、誰かが犠牲的な精神を発揮して主人公を助けるとか、そういうのがお決まりなのだが、この作品にはそういう要素はない。功とキトゥンははじめから険悪だし、田窪はなにやら鼻持ちならない人物だ。二ノ瀬と甘海は凡百の作品なら軽い恋愛感情を抱いたりするのだが、ここでは全くそんなことはなく、二ノ瀬は救出した直後から甘海を足手まといと思っているし、甘海は二ノ瀬を冷たい人間だと思っている。こういうパニック作品ではどうしても『危機を前に協力して云々』みたいなパターンが多い。ところがここでは人間関係の危うさも彼らの置かれた危機と同様に根深く、危険なのだ。
 更にはもっと事情のややこしい人物も生き残っていて物語は思わぬ方向に引っ張られる。

 というわけで『さしてひねったストーリーを持っているわけでもないし、SF的にも唸らせられるような大仕掛があるわけでもない。破滅もなければ残酷シーンもない。』という、私の感じたこの作家への物足らなさは払拭されたのか。いやそれが払拭されるには至らなかった。次から次にトラブルに見舞われるが、想定外なほどのトラブルは起こらない上、ご都合主義的に割りと簡単に脱出に成功してしまうし、当然死んだと思われたあの彼や彼らが生き残っているあたりはいかにも甘い。そのあたりがこの作家の限界だとは言えるかもしれない。

 しかし、それでもこれはなかなか読み応えのある作品だ。SFとしては特別優れているとは言えないが、娯楽作品としてはお薦め。一気に読ませる。
.28 2013 SF comment0 trackback(-)

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