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J.R.R.トールキン ホビットの冒険

hobbit_book.jpg
 映画の公開に合わせて再読。これはトールキンのデビュー作で、完全に児童文学の作りになっている。邦訳も児童文学らしい語り口で一見子供向けっぽい雰囲気の作品なのだが、なかなかどうして侮れない。

 のんきな暮らしをしていたホビットのビルボ・バギンズが故郷を取り戻そうと決起したドワーフの王子トーリンたちの旅に付きあわせられることになるという物語で、いかにも昔話風に始まり、トロルに捕まるシーンなどシンプルな冒険活劇なのだが、徐々に重苦しい展開になっていくのは後の「指輪物語」と同様だ。
 映画一作目ではハイライト的なシーンとなっていたゴラムとの遭遇と指輪を得るシーンはビルボとゴラムのなぞなぞ合戦が映画よりも長く、物語的にははらはらさせるが映画のほうが緊張感が高い。どちらが良いというのではなく、物語として読むのと映像として見るのでは表現の仕方も違うということなのだ。息の詰まるような「闇の森」の描写、トーリンとバルトたちの思いもかけない対立など「指輪物語」同様のダークさも持ち合わせていて、「指輪物語」を知っている読者には、はるか後ろで糸を引いているらしい「死人占い師」(その実態は冥王サウロン)の影が見え隠れして不気味でさえある。

 普通に考えるとラスボスであるはずの悪いドラゴン、スマウグがあっさり、しかも主人公たちではない登場人物によって倒され、その後スマウグが独占していたドワーフの宝をめぐって人間・エルフとドワーフが対立、そこにゴブリンたちも加わって最終的な大戦争に発展してしまうという展開が、凡百の児童文学とは一線を画している。このあたりは第2次大戦という不条理な戦争を経験した作者、というより世界がそう書かせたのだろうか。
 そしてそういった不条理な戦争も悲劇も、ビルボは持ち前の楽天的な明るさで乗り越えていく。そう読むとやはり子供が読むべきポジティブな読み物といえるのかもしれない。

 トールキンはこの作品を執筆していた段階で、中つ国についてどれだけ知っていたのだろうか。「指輪物語」や「シルマリルの物語」をすでに構想していたのだろうか。よく読むと今ひとつ辻褄があわないところもあるように思う。例えばビルボはかなりの回数指輪を使うが、あれはサウロンにみつかる心配はなかったのか。ガンダルフはなぜビルボに白羽の矢を立てたのか。さらに冒頭のホビット村の説明で「マンホールの蓋のような…」という、「指輪物語」で語られるようにビルボが後に書いたのならばあってはならない例えを持ち出しているなど部分部分で児童文学らしい甘さが目立ち、そういう面では不満も残る作品だが、そういう欠点を補って余りある深さを持った作品であると言えるだろう。

 ところで映画の公開に合わせて最近新訳で文庫版が登場しているようだ。訳文はイマイチらしいが、膨大な注釈で研究書としての価値大なのだそうで、ちょっと見てみたい気もする。
.28 2012 英文学 comment0 trackback(-)

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