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メルヴィル ベニートー・セレイノー、バートルビー


 去年買った集英社世界文学全集ベラージュのメルヴィル集。前半の「タイピー」だけ読んで放り出していたのを思い出して後半の「ベニートー・セレイノー」と「バートルビー」を読んでみた。

 「ベニートー・セレイノー」は岩波文庫版では「幽霊船」というタイトルで出ている作品で、メルヴィルお得意の海洋小説である。アメリカの海豹漁船の船長デラノーは、サンタマリア島でぼろぼろな状態のスペイン船サン・ドミニック号に遭遇する。この船が航行不能であると判断したデラノーは自らサン・ドミニック号に乗船するが、船内は非常に混乱しており、若いスペイン人船長ベニートー・セレイノーは言動が怪しい。彼の説明では、嵐で航海士を失い、そのあと長く続いた凪で何ヶ月も漂流したというのだが…
 正直言って、最後の20ページくらいまでは全く面白くない。この船でなにが起きていたのかがはっきりしてからは一気に読めるし、それを踏まえてみれば、確かに前半部分にはそれを匂わす記述がそこら中に散りばめられている。
 ネタバレをせずにレヴューすることがとてもできそうにない内容なので詳しいことは書かないが、ここでの黒人の徹底した悪役ぶりも、彼らに対する差別的な記述も、「白鯨」や「タイピー」を読んでこの作家のリベラルさを知っている読者には意外に思えてしまうだろう。ひょっとしたらメルヴィルは、このような反乱が起きてしまうくらい奴隷制度は良くないことで、このような反乱が可能なくらい黒人は、当時の白人が思っているほどバカじゃないのだということを書きたかったのだろうか。

 一方「バートルビー」は、全く海とは関係のない話で、ある弁護士が事務所で働く代書人としてバートルビーなる男を雇ったのだが、この男が代書の仕事はするのだが、雑用を全く受け入れず、やがては仕事そのものを受け付けなくなっていく。
 バートルビーとは何者だろうか。ただの社会不適合者だろうか。そういえば現代社会にはバートルビーのような人がたくさんいるような気がする。それとも聖人なのだろうか。
 これを書いたメルヴィルは、この物語の語り手であるバートルビーの雇い主の一人称を選んでいるわけだが、彼(語り手)はバートルビーにそれなりに行為を持って接してはいるのだが、最後まで全く彼の心情を理解できないままに終わっている。まあ実際に彼の立場だったら、そりゃ理解できないだろう。現代の、ひきこもりの息子を抱えた父親の心情である。そういう現代性も強く持っている作品で、だからこそ今読まれるべき作品だとも思う。

 というわけでメルヴィル、決して「白鯨」だけの作家ではない。というかこれらの作品を読んで「白鯨」はちょっと異常な作品だということを改めて確認した。いやこの2作も、とても一筋縄ではいかないんだけど…
.18 2012 北米文学 comment0 trackback(-)

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