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上田早夕里 華竜の宮


 2011年日本SF大賞受賞作品。同じ年にあの「魔法少女まどか☆マギカ」が候補作になっていたが、その選評で「小説の方に桁違いの傑作があったことで」受賞を逃したと宮部みゆき氏が述べておられて、その「桁違いの作品」がこれ。

 いやいや。確かに桁違いですわコレ。

 日本SF大賞って実はこれまで、大した作品を選んでない。いや、選ばれるべき作品が選ばれていない。
 2001年は北野勇作「かめくん」だが、これは今となっては彼の作品としてはイマイチ。のちの作品「どーなつ」とかのほうがはるかにいい。飛浩隆も2005年の受賞作「象られた力」よりも2002年の「グラン・ヴァカンス」のほうがずっといい。2009年は伊藤計劃の「ハーモニー」が受賞したが、候補作だった上田早夕里の「魚舟・獣舟」のほうがはるかに優れていた。

 これは過去の受賞作家は選考対象から外していたせいもあるのだろう。だから一度受賞してしまうとそのあとどんな傑作を書いても賞は取れない。結果ベスト作品でないものが受賞作として名前が残ってしまうというおかしなことになってしまう。こういう賞というものは作品に与えるべきもので、作家に与えるべきではないと思うのだが。
 ところが上田早夕里に関しては「魚舟・獣舟」で受賞してなくて良かったなあ、と。この「華竜の宮」は日本SF大賞の歴史の中でも初めてその年のベスト作品が受賞した唯一の例になるのではないだろうか。

 この「華竜の宮」は文庫で上下二巻、850ページほどの大作だが見事な構成と筆力で一気に読ませる傑作だ。SFとしての設定も押さえるところは押さえた上で、しっかり人間を描いていて骨太なストーリーが描き出される。
 これは政府の外交官として海のトラブルを解決するネゴシエーター(作中ではそういう言い方はしないが)である青澄が、世界的なトラブルに巻き込まれる様子を、青澄のアシスタント知性体(要するにAIである)マキの視点中心で語られる。内容としてはアクションよりも相手方政府の要人などとの交渉を中心に描いた作品。

 こう書くとすごくつまらない作品のように聞こえると思うのだが、読んでみるとこれがめっぽう面白い。SF的な仕掛けやツキソメの謎、獣舟の謎などを随所に散りばめ、決して多くはないアクションシーンを巧みに配置して読者を飽きさせない。SF作品としてだけではなく、文学作品としてかなりレベルの高い作品である。長さも全然気にならない。
 救いのない、何とも言えないラストだが、実際に滅びるとなったら人類はこれに近いことをするんではないかと思う。
 ただし幕切れのマキのセリフは、この作品全体を受け止めるにはあまりにも普通で、言葉として軽すぎる気がした。もっとなにか作品全体を締める終わりの文章がありえた気がしてそれが残念だった。

 上田早夕里という作家は、前回「魚舟・獣舟」を読んだときにも感銘を受けたのだが、本当に素晴らしい作家だと思う。ほかの作品もぜひ読みたい。SF以外にも作品がたくさんあるようだ。ただ気になるのがこの作家、ちょっと自作について語りすぎではないだろうか。この作品でもあとがきが二種類もついているが、特に「文庫版あとがき」は不要だと思う。作品が十分素晴らしいのだから、余分なことは語らない方がいいような気がする。
.09 2012 SF comment0 trackback(-)

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