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アナトール・フランス シルヴェストル・ボナールの罪


 アナトール・フランスという作家の作品を読んだのは「神々は渇く」「舞姫タイス」についでこれで三作目なのだが、三作とも全く違う作風で内容的にも共通点が見いだせない。それだけこの作家の懐が広いということだろうか。

 この「シルヴェストル・ボナールの罪」はこの作家のわりと初期の作品で、学士院会員シルヴェストル・ボナールを主人公にしたふたつのエピソードが語られている。稀覯本を求めてイタリアに旅に出た主人公は謎の貴婦人トレポフ夫人と出会うが…という第一部「薪」と、若い日に愛した女性の孫ジャンヌが天涯孤独になり塾(寄宿学校のようなもの)で不自由な生活を余儀なくされている事を知った主人公が彼女を助けようと奔走する第二部「ジャンヌ・アレクサンドル」は全く違う物語で、それぞれに特にひねりのある物語ではないがとても面白く読める。だが、同じ主人公によって日記の形で語られるという点以外に全く共通点がない。
 そもそもタイトルの「シルヴェストル・ボナールの罪」にしても、彼の「罪」ってなんだろう、と考えてしまう。この作品の原題は「Le Crime De Sylvestre Bonnard Membre De L'institut」。「Crime」だから「犯罪」と訳してもよさそうだ。そうするとジャンヌを塾から連れ出して「誘拐」したことを指すのだろうか。

 第一部では、どうでもいいような下卑た人形に執着する主人公の少年時代のエピソードが興味深い。これと長じて稀覯本を求める事にこだわる本の虫の学者先生は、結局なにも変わっていないのだ。そしてある本を手に入れるためにイタリアを訪れたりと奔走する主人公はかなり滑稽である。
 第二部ではジャンヌの後見人や塾の女教師が全くひどい俗物として滑稽に描かれていて、作者は彼らに軽蔑の眼差しを向けているのだが、主人公のほうが強い立場にいるわけでは全くなく、決着も拍子抜けするくらいかなりご都合主義的についてしまい、めでたしめでたしで終わるかと思いきや、最後の最後に置かれたエピソードがあまりに物悲しく、独特の読後感になるのがこの作品の一筋縄で行かないところだ。

 冒頭にも書いたようにこの作家、それぞれの作品のカラーがかなり違っていて、なにやらのんびりした雰囲気で小市民的な出来事を描いたこの作品と、フランス革命の嵐の中でそれぞれの正義に殉じていく人々の愚かさ・高潔さを鮮やかに描いた「神々は渇く」や、聖と俗の対比を鮮やかに描いてみせた「舞姫タイス」では全然重みが違う。それでもこの「シルヴェストル・ボナールの罪」にはなんとも飄々とした魅力がある。まだ作者が三十代と若い時の作品で、後の作品ほど強烈な皮肉や風刺は感じられないからだろうか。
.17 2012 フランス文学 comment0 trackback(-)

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