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E.T.A.ホフマン ホフマン短編集


 ずっと品切れ状態だった『ホフマン短編集』が再発されて、在庫のあるうちに、と思ってさっさと買ってそれっきり忘れていて、あやうく二冊買うところだった。と言ってもこの本昔一度買ってるのでこれ自体二冊目なんだけど。

 ここにはホフマンの代表的な短編が6作収められていて、彼の作品に親しむには好適の一冊である。

 「クレスペル顧問官」はクレスペル顧問官の娘アントニアの物語。アントニアは稀な美声の持ち主なのだが、クレスペルは決して彼女を人前で歌わせようとはしなかった。主人公はその謎に迫るが…という物語。これはこの作家にありがちな怪奇趣味・オカルト的な要素の少ない物語なのだが、クレスペルのエキセントリックなキャラクターが謎を深めてこの作家らしい怪しい雰囲気が立ち込める見事な作品。

 この作家の短編としては最も有名な「砂男」は、スパランツァーニの娘オランピアに恋をしてしまった青年ナタニエルの運命を、彼が幼い日に恐れていた砂男の伝説と重ねて描く。この作品集の中では一番長い作品ながら求心力は強烈。さすがに傑作と言われるだけのことはある。
 この「クレスペル顧問官」と「砂男」は有名なオッフェンバックのオペラ「ホフマン物語」のそれぞれ第3幕、第2幕に使われたストーリーで、クラシック音楽ファンの方ならおなじみのストーリーである。ちなみにオペラでの筋立ては「クレスペル顧問官」の方はほとんどそのままだが、「砂男」の方はかなり薄められた感じで、小説のほうがはるかに巧妙に描かれている。

 鉱山の悪霊トールンベルンに魅入られた青年とその婚約者の悲劇を描く「ファールンの鉱山」など他の収録作もそれぞれこの作家らしい怪奇の雰囲気を漂わせたものだが、ラストに置かれた「隅の窓」だけは少し印象が違う作品で、これは足が動かない青年が窓から見える市場の様子を眺めながらそこに見える人々の暮らしを様々に想像する。語り手の青年の従弟は従兄に従って一緒に市井の人々を眺めながらその暮らしについて語り合い、この作品は戯曲のように会話でテンポよく進んでいく。そこにはこの作家自身が人間を見つめる眼差しが引き写されているようで興味深い。実際ホフマンはこの作品を、死の床で不自由になった体で口述筆記させて完成したそうで、ここに描かれた従兄こそホフマン本人なのかもしれない。そう考えるとなんとも悲痛な作品である。

 ホフマンって結構翻訳も多いのだけど、長編にはわりとグダグダな作品が多い。短編の方が切れ味が良くていいと思う。ホフマンをこれから読もうという人には、正直下手な長編を読むよりもこの短編集を読んだほうがいいだろう。翻訳も全然古さを感じない。オペラでだけ知ってる人や、怪奇小説が好きな方にもお薦め。
.01 2012 ドイツ文学 comment0 trackback(-)

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