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北野勇作 かめくん


 北野勇作が2001年に日本SF大賞を獲った出世作。長らく廃刊で古本屋でも見かけず、もう読めないものかと半ば諦めていたらこの夏突然河出文庫から再発された。

 かめくんは模造亀(レプリカメ)。アパート「クラゲ荘」に住んでいて、会社勤めをしている。そのかめくんの日常をなんだかノスタルジックな雰囲気で淡々と描いた作品。

 多分発表当時はこの雰囲気が目新しかったのだろうし、そういう点が評価されて日本SF大賞などというご大層なものまで受賞してしまったのはわからなくもないのだが、すでにこの作家の後の作品を何点か読んでしまった私には残念ながらこの作品は消化不良な印象が強く残った。

 主人公のかめくんは、自分が人間が、おそらくは戦争のために作った模造亀であることを知っているし、時期が来たら自分の記憶がリセットされることを知っている。そんな中で普通の生活を生きて、図書館のミワコさんにはちょっとした恋心のようなものを抱いたりするのだが、いざラストで記憶のリセットが近づいても恐怖など覚えない。
 それでも止むに止まれぬ感情が彼の手によってこの小説を書かせるわけで、その抑制具合がこの作家らしいとは言えるんだけど、言葉を話さないかめくんが主役なだけに、その感情をそれとなく描写する方に文章の力を奪われた感が強い。会話だけで進行する部分が巧みな作家なのにその部分が生かせなかったのも残念。なにより、のちの作品、「どーなつ」「レイコちゃんと蒲鉾工場」で見られるような絶妙なピンぼけ具合や不条理感がこの作品には足りない。というわけで小説としては「どーなつ」「レイコちゃん」の方が出来がよいと思う。

 とはいえ、のほほんとした空気の漂う中に哲学的ななにか、あるいはどこか狂った何かを潜ませた世界の構築はこの作家ならではのもの。上記2作品も明らかにこの作品の延長線上にあるわけで、やはりこの作家の原点といえる作品であることは間違いないだろう。というわけで北野勇作ファンならぜひ一度読んでおくべきだろう。そうでない人は「どーなつ」の方を。

 以前読んだ「ザリガニマン」との直接の関連は無し。ただかめくんが仕事でフォークリフトに乗って戦うのがザリガニマンというだけのことである。「木星戦争」の詳細も全く明らかにされていない。おそらく作者自身も詳しくは考えていないのではないだろうか。
.08 2012 SF comment0 trackback(-)

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