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立原えりか 飾り窓


 私がどうしてもこだわっている作家が三人(三組?)いる。もちろんこのブログをいつも読んでいらっしゃる方にはレムとストルガツキーであることは了解済みのことだろうと思うのだが、もう一人が、意外に思われる向きも多いだろうが日本の童話作家、立原えりかである。
 三者に共通していることはほとんどの作品が現在は絶版ということくらいだろうか。

 立原えりかという人の書く作品はいわゆる『童話』とカテゴライズされるもので、動物が喋ったり、妖精が現れたりといったファンタジーな部分を持ちながら子供向けの甘さが少なく、以前読んだ「しあわせな森へ」収録の「雪の夜の流れ星」や「木馬がのった白い船」収録の「ぬいぐるみ」などのように、作品によっては残酷なまでに現実を突きつけるものもある。これらの作品は、読めばまちがいなく胸に何かが刺さって痛くなる。読み手の人生経験が豊富であればあるほど、その痛みは強くなるのではないかと思う。かといってこれは『大人のために書かれた残酷童話』などではなく、ピュアな『童話』であることに間違いはないのだ。そこがこの作家が凡百の童話作家とは一線を画している部分である。

 そういう作家の作品であるから、『童話』という一番気楽に読めてしかるべきジャンルの作品でありながら、読むのにはエネルギーが必要だ。この「飾り窓」も数年前に購入していたのだがずっと読む踏ん切りがつかず、今回古本屋でこの作家のあるレア作品を手に入れたのをきっかけにして読んでみた。

 15作の短編が収められたこの作品集には、上記の2作品のような身を切るような痛みはない。どちらかというとこの作家の作品としては甘めの作品が収められていて、普通の童話として読みやすい。そのかわりこの作家らしいインパクトを期待して読むとちょっと物足りないかもしれない。そんな中で気になった作品をいくつか挙げておく。

 「ピアノのおけいこ」は中学生の少年が、通学路の途中である家からいつもピアノを練習している音が聞こえてくるのに気づき、小学校の時に気になっていたピアノを習っていた少女を思い出し、ピアノを弾いているのはあの子のような子かもしれないと思うのだが、実は…という物語。主人公たちの心理描写がシンプルで鮮やかな一編だ。ラストのどんでん返しが切ない。

 「虹のかなた」は目が見えなくなったおばあちゃんに、幼馴染から電話がかかってくる。彼は虹を作る仕事をしているのだ。メルヘンの世界へ行って歳を取らない彼と再会したおばあちゃんの胸に去来するものは、悔恨なのだろうか。

 海に出たまま帰らぬ彼を待ち続ける少女を描いた「しあわせのリボン」は、ひたすらに愛する人の帰りを信じる少女のひたむきな愛が今となっては新鮮に思えるハッピーエンド作だ。

 そして巻末に置かれた表題作「飾り窓」。ある夜青年がデパートの前を通りかかると、ショーウインドウに飾られた人形が自分はあなたの幼馴染だったと語りだす。一緒に妖精の広場に出かけたこと、そこで妖精にもらった魔法のチョークのこと…。そしてそのチョークの力で人形になった彼女は、青年にあなたもチョークの力でこちらの人になって私と一緒に暮らそうと誘うのだが、青年はもうすでにそのチョークを持っていないのだった、という物語。これは単純に何の心配事もない人形としての生活が現実からの逃避であり、チョークが子供の頃の夢であると解釈してもいいのだが、ここでこの作品のタイトルがなぜ「妖精のチョーク」ではなく、「ショーウインドウ」でもなく「飾り窓」なのかを考えてみたい。
 大人なら大抵の人が「飾り窓」と聞けば街娼を連想するだろう。この言葉はそのイメージと決して切り離せない。それはこの作品が書かれた1980年頃でもそうだったはずだ。そう考えると、これは売春宿で幼馴染に出くわした青年の話だと解釈できないだろうか。その彼女と話すうち、いつの間にか純粋さを捨ててきた自分に気づいて愕然とする、これはそういう話ではないのだろうか。

 というわけで全体には読みやすいがこの作家としては比較的地味な作品が多かったかなという印象だ。決してレベルが低いわけではないが、やや深みに欠ける作品が多かったような気もする。この作家でどれかひとつと言われたらこれではなくて前述の「木馬がのった白い船」か「しあわせな森へ」をお薦めする。
.03 2012 立原えりか comment2 trackback(-)

comment

立原えりかさん、検索したら今も活躍なさっているようなのに廃刊が多いとは残念です。私の母に近い年齢の方でした。
かわいい絵が印象に残っていましたが図書館で探してみようかと思います。私も彼女も好きなアンデルセンの童話も間違いなくピュアな童話ですが、残酷で哀しい現実の描写が。アンデルセンはラストに大体浄化と救いがありましたが。

そして、「幸福の王子」原作者がオスカー・ワイルドですものね。
アンデルセンと「幸福の王子」が8才から11才の私が一番好きな童話でした。今もですが。

立原えりかは先ほどこちらの過去の記事を読んだらもっと救いがなく美しいですね。

まだ暑いけれど秋になったとたん猫がぴとっとくっついて寝てくるようになりました。
サッカーはオリンピックの男女を楽しんだ後はフル代表や女子U20ワールドカップを楽しんでいます。

ヨーロッパサッカーも始まったから楽しんでいらっしゃるでしょうね。
2012.09.04 12:38 | URL | mimosa #pSJ6Fihk [edit]
mimosaさん、こんばんわ。

立原えりかさんは昭和12年生まれですから、私の母親と同じ歳ですね。
特に私が取り上げている80年代ごろの作品には鬼気迫るものがあります。
もっと読まれていい作家だと思います。
特に上に挙げた「木馬がのった白い船」と「しあわせな森へ」はぜひ復刊して欲しいと思っています。

欧州のサッカーもすっかりシーズン突入でTV観戦も忙しくて大変です。
でも今はバルサやマンUよりもサガン鳥栖が激アツなので。
そっちが優先かな。
2012.09.05 00:12 | URL | piaa #- [edit]

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