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竜座の暗黒星 現代ソビエトSF短篇集2


 昭和41年(1966年)発売のソビエトSF短篇集。ハヤカワ・SFシリーズというポケミスと同じ新書サイズの本。ソビエトSF短篇集は全3巻が出ていて、いずれの巻もストルガツキーの短編が収められているので以前から欲しかった本なのだがどれも中古市場で高額になっている。この第2巻だけはわりと安かったので今回思い切って購入した。

 まずはじめに断っておくが、この本に収録されているストルガツキーの短編「さすらいの旅をつづける者たちについて」は本稿とは別に後日レヴューしたいと思う。ここではその他の作家による7作について述べることにする。

 冒頭にはアナトリー・ドニエプロフの「カニが島を行く」が収められている。これは兵器として開発されたカニ型の自動機械の実験をある島で行った顛末が描かれた作品。自己増殖するようプログラミングされたサイバネティクス機械が金属を奪い合って進化して行った先に起こる恐怖を、クールな筆致で描いた作品。物語の発想はレムの「泰平ヨンの回想記」にあった洗濯機の開発競争の話と同じようなものなのだが、ここではしっかりパニックSFになっている。ただ、ラストは迎えに来た船をカニが食い尽くして終わり、の方がよいと思うのだが、そのラストはソビエトでは許されなかったのかも知れない。

 次に置かれているのが表題作「竜座の暗黒星」。作者はゲオルギー・グレーヴィッチ。表面温度が10度という「暗黒星」が発見され、片道14年の行程を調査に出た人々の物語。これには驚いた。ここで描かれている「暗黒星」とは低温の褐色矮星のことなのだが、現実に最近表面温度が摂氏25度という星が見つかっているのだ。以前エフレーモフを読んだ時にも思ったのだが、この頃のソビエトSFは科学的に正しい事を元にして書かれたものが多いような気がする。夢物語のような技術が出てこないという点でもリアルだ。
 ただ往復30年近い旅をするには宇宙船がショボすぎ。私なら30年はおろか3年も絶対耐えられない。

 ひとつ飛ばして「宇宙で」はワルシャフスキーの作品。これは宇宙旅行にまつわる幾つかの短いエピソードを連ねたオムニバス短編。それぞれの短編には意匠が凝らしてあり興味深いのだが、オムニバスであることが説明されていない点と、全く違う話に同じ宇宙船の名前が出てくるので混乱必至。アイディアには光るものがあるだけに残念。

 と、以上2篇が宇宙もの。残る4篇のうち3篇はいずれも時間旅行ものである。「ベルン教授の目覚め」(サフチェンコ)は人類が滅んだ後の世界を見ようと冷凍睡眠で18000年の眠りにつくが・・・という物語。これは結構物語が無理矢理な気がする。

 次の「ホメーロスの秘密」(ポレシチューク)はホメーロスの実在を証明しようとタイムマシンで古代ギリシャを訪れた教授と学生アルテムの物語。このラストって要するに主人公たちが訪れた古代ギリシャにホメーロスはおらず、最後に現代に戻らずこの時代に居残ったアルテムがホメーロスになったという事だ。レムの「泰平ヨンの航星日誌」にこれに似た話があったけど、あっちはドタバタだったのに比べやっぱりこっちは真面目だ。

 「雪つぶて」(パルノフ/エムツェフ)はタイムマシンで7ヶ月前に行く話なんだけど、これはストーリー的に矛盾している。7ヶ月前の自分と会ってしまうという禁じ手をやってしまっているため、因果律が起こってしまっている。
 個人的には時間旅行ものはどうしても矛盾が気になってしまう。一番うまく書かれている「ホメーロスの秘密」にしても、厳密なことを言えばアルテムの暗記していたホメーロスの作品はどこから来たのかが説明できないような気がする。

 ラストに置かれた「湾の主」はセーヴェル・ガンソフスキーの作品。南の島を舞台に、サメをも食ってしまう謎の巨大生物「主」を追う物語。ガチSFというよりは脅威の野生動物を描いている。もっともこの作品で語られる「脅威の野生動物」の有り様はまさにSFではあるのだが、肌触り的には創元のロシア・ソビエトSF傑作集に収められていたベリャーエフの「髑髏蛾」という作品に似た印象の作品。
あまりSFということを意識せずに読める傑作だ。

 というわけで非常に面白かった。これらの作家の作品をもっと読んでみたくなるが、御多分にもれずほとんど紹介されていないようだ。
 ちなみに「ベルン教授」「雪つぶて」「湾の主」は以前読んだ世界SF全集33巻にも収録されていて確実に読んでいるのだが、きれいさっぱり忘れていた。また5年も経てば新鮮に楽しめるかもね。
.29 2012 SF comment2 trackback(-)

comment

摂氏25度という低温の褐色矮星が発見されたのを知ったとき、正にこの「竜座の暗黒星」を思い出しました。昔これを読んだときには、世の中にまだ褐色矮星などという概念はなく、低温の赤色矮星であっても惑星と比べれば超高温なのだから、幾らなんでもこんな恒星はありえないだろうと思っていたのですが、実は正しかったんですね。

> この頃のソビエトSFは科学的に正しい事を元にして書かれたものが多いような気がする。

「火を噴く惑星」という金星探検を描いたソ連製SF映画があるのですが、アメリカ映画とは異なって、その時代での「科学的に正しい知識」を元にして真面目に作られています。しかしその「正しい知識」が結果的に完全に間違っているので、今見ると笑える映画になってしまっているのですが・・・。

「カニが島を行く」は未読なのですが、レム作品でも「砂漠の惑星」の方を連想しました。あちら方向の結末というわけではないのですね?
2012.09.19 23:03 | URL | X^2 #CypyILE6 [edit]
X^2さん、こんばんわ。

「カニが島を行く」は内容そのものはは真剣なんですが、結構マヌケなんですよ。
そのマヌケっぷりが私をして「砂漠の惑星」よりも「泰平ヨン」を連想させたんですね。結末は、『放り出して逃げる』パターンです。そのへんもソビエトらしいかもしれませんね。
2012.09.20 22:47 | URL | piaa #- [edit]

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