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森敦 月山・鳥海山


 実はだいぶ前に読んでいたんだけどレヴュー記事を買いていなかったので。
これは森敦が史上最年長で芥川賞を受賞した「月山」を含む2冊の単行本「月山」と「鳥海山」の2冊をまとめて一冊の文庫本にまとめたものである。

 収録されているのは中編「月山」と短編6編。実はこの単行本2冊を、私は高校生くらいの時に買って読んでいる。その時は仏教的なイメージを感じたものの、正直あまりピンと来なかった。いずれの作品もあまりはっきりしたストーリーがある作品でもないし、若い人が読んでもピンとこないのは仕方がないのかもしれない。今回読んで30年ぶりにこの作品の真価がわかったような気がする。

 「月山」は130ページとこの一冊の中でダントツに長い作品で、この作品集中でも最も重要な作品である。生に倦んだ「私」は、死の山である月山を訪れ、寺に住まわしてもらい、そこに住む素朴な人々と触れ合いながら暮らす。その暮らしはそこがまるで死後の世界でもあるかのようで…といったストーリーが独特の語り口でゆっくり語られる美しく静謐な雰囲気が素晴らしい稀有な作品である。

 主人公がなぜここへ来ることになったのかなど全く語られないし、月山が死の山であるなら、冒頭とラストにだけ登場する「友人」だけが現世の人物ということになるのだが、この友人についてはほとんど具体的な描写もない。これが死と復活(あるいは転生)を描いた作品と考えれば、現世の描写など詮ないことでそこは作者がばっさり削ったのだろうし、そんな描写があったらこの作品の価値は大きく減じたであろう。結果、この作品は彼岸での暮らし(になぞらえた月山の暮らし)に焦点を当てた極めて求心力の高い傑作になっている。それでいて表現は平明で堅苦しいところはなく、土地の言葉で朴訥に語られるそれぞれのエピソードは非常に読みやすい。作品全体を包む静謐なイメージは現代の作品としては他ではなかなかお目にかかれない。

 それにしても芥川賞というと最近は本を売るための下らない賞に成り下がったが、こんなレベルの高い作品が選ばれていた時代もあったのだと思うと驚いてしまう。一層最近の芥川賞が情けなく思える。例えばこのブログでも取り上げたクソみたい(失礼)な2002年の受賞作とかが、この「月山」と同じ賞を獲ったとかもう笑うしか無いだろう。

 「天沼」は「月山」の続編というか捕逸編的な作品。その他に5篇の短編(単行本「鳥海山」収録分)が収められているが、これはいずれも「月山」の変奏のようなもの。いずれもこの作家ならではのカラーが強烈に出た作品だが、「月山」に比べれば読まなければならない必然性は低いかもしれない。
 「月山」の単行本、実家から持ってこようかな。
.07 2012 日本文学 comment0 trackback(-)

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