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プルースト 失われた時を求めて 第1編 スワン家のほうへⅡ

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 第1巻からえらく待たされたが、光文社新訳文庫の高遠弘美氏の翻訳による「失われた時を求めて」第2巻が昨年末にようやく発売に。すぐ買ったのだが、第1巻の第1部「コンブレー」がなんとなくとりとめのない内容だったので、なんとなく読み始める気にならなくて、今になってやっと読んだ。

 ところがこれは「私」が自分の子供時代のエピソードを滔々と語る第1巻とは全く違う。この第2巻のほぼ4/5を占める第2部「スワンの恋」では、物語は「私」が生まれる20年近く前へと遡り、社交界の寵児であったスワン氏と高級娼婦(ココット)のオデットの恋の顛末を描く。ここで描かれるのは恋愛以外別に何もすることのない男女の恋模様で、全然ピンとこない人もいるかも知れない。スワンと来たらとんでもないマヌケ男でオデットに持ち上げられてうつつを抜かしているうちにだんだんオデットの身持ちに疑いを持ち始め、やたらに焦りだし、仲間内の集まりでも疎まれはじめ・・・恋に右往左往するスワンは滑稽だが、こういうのは恋愛ベタな男性にはありがちなパターンではある。読んでる私のほうが情けないやら恥ずかしいやら。

 そんなまるで「椿姫」のパロディかとも思われそうな、かなり下世話な内容をプルーストは相変わらず流麗な(言い方を変えると「とりとめない」)筆致で描いていく。「スワンの恋」だけでかなりの分量があるが、章立てもなし、改行も少ない文章であたかも無限旋律のように物語が流れていく。スワン自身もオデットも、そして彼らを取り巻く人々…特にヴェルデュラン夫妻あたりは「スノッブ」を絵に描いたような人々で、しかも文中にあるように自分らが「スノッブ」であることを全く恥じていない、というか彼らの価値観では「スノッブ」はむしろ良いことのようだ。作者は彼らのスノッブぶりをかなり辛辣に、批判的に描いている。

 で、そんな話を470ページも読まされて面白く無いかといえばそんな事はない。ただ現代人の感覚ではピンとこないところもある。例えば「高級娼婦(ココット)」という概念。『娼婦』とあるから売春を生業にしている女性のように考えてしまうが、彼女らは一般的な意味での『娼婦』とはちょっと違う。お金を出してくれるパトロンに体まで提供する、いわば契約愛人のようなものだ。そのへんがわかって読まないと「椿姫」同様この物語も掴めないのではないかと思う。この「スワンの恋」は「失われた時を求めて」全編の中で唯一三人称で書かれた部分なのだそうだが、第1部「コンブレー」とは全く雰囲気が違っていて、まるで別の作品のようだ。そして最後にはスワンは、オデットが自分にふさわしい女ではなかったことに気づいて幕となる。

 さらにこの巻の巻末には、第3部「土地の名・名」が収められている。こちらは100ページほどの短いもので、少年に成長した「私」がジルベルトという少女に想いを寄せるのだが、このジルベルトがスワンとオデットの娘なのである。
 え、スワンさんオデットはやめちゃたんじゃなかったの?とかなんとか言っても結婚しちゃったものはしょうがない。こちらの「土地の名・名」はまた「コンブレー」の雰囲気が戻ってきて抒情的で美しい文章で若者の恋が綴られる。

 プルーストはあらすじだけでは何も語れない。細かい伏線が縦横に張られ、それを美しい文章で縫いこんであるような、そんな作品である。これは美しい日本語の文章で再現された見事な翻訳だと思う。早く続きが読みたいとも思うし、第1巻からもう一度読み直す必要があるかなとも思うのだった。
.12 2012 フランス文学 comment0 trackback(-)

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