スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
.-- -- スポンサー広告 comment(-) trackback(-)

伊藤計劃 ハーモニー


 当ブログ今年のキャンペーン、『日本SFを読もう』第3弾は短い生涯でわずか2作の長編しか残さなかった伊藤計劃の、急逝によって図らずも遺作となってしまった「ハーモニー」。ちなみにもう一作のほう「虐殺器官」の方は未読。

 全人類にもれなく健康と幸福が与えられる時代。そんな社会に異を唱える女子高生ミァハは同級生の友人二人とともに薬物による自殺を試み、ひとり死んでしまう。それから十数年後、生き残ったミァハの友人で国連の螺旋監察官となったトアンの目の前でもう一人の生き残りの友人が突然自殺。なんとこの時全世界で数千人が突然自殺していた。事件の背後にミァハの影を感じたトアンは調査を開始する。

 SFのジャンルとしては近未来ディストピア小説である。そこにミステリ的な要素も盛り込んでいる。
一部ではラノベっぽいとか言われているようだがそうは思わない。ラノベを構成する重大要素の「萌え」は一切ない。回想の女子高生時代はともかく、成長して社会の規範を無視して酒やタバコを求めるトアンに萌え要素はゼロ。むしろごっつい姉ちゃんのイメージだ。
 究極のセカイ系という見方もあるようだが、セカイ系というのを『「私とアナタ」の関係と世界の価値とが等価に描かれた作品』と規定するなら、これは確かにセカイ系であろう。ただ『「私とアナタ」の関係』が恋愛ではないところが他のセカイ系とは違っているが。

 非常に読みやすく、設定も斬新で面白いのだが、いまひとつ登場人物に個性が感じられない点や、そっけない文章もあって作品全体に非常に冷たい印象を受ける。それもこの作品世界にはマッチしているので作品自体のマイナス点ではないのだが、個人的にはあまり好きな方向ではない。AIを主人公にして、それこそ全く血の通っていないはずのキャラクターたちに強烈な個性と陰影を与えた飛浩隆の「グラン・ヴァカンス」と、ある意味正反対の方向性だ。また「グラン・ヴァカンス」の濃密な描写はここには一切ない。

 というわけで個人的な評価としては「グラン・ヴァカンス」には及ばなかったと言わざるを得ない。とはいえ傑作であることには疑う余地がない。日本SF大賞、ディック賞は伊達ではない。文体や世界観など円城塔に似ているような気がするがあれほど空虚なものではなく、アイディア、構成力も素晴らしいもので、SF作家としての力量は相当なものだ。急逝が惜しまれる。 もう一作、「虐殺器官」のほうも読んでみないといけないかな。
.07 2012 SF comment2 trackback(-)

comment

ワタシは「虐殺器官」の方が好きでした。両作に共通する点は、ガジェットはとても魅力的だけどオチが今ひとつぱっとしない(苦笑)とワタシには感じられました。
面白い作品であることは間違いないんですけど。
「ハーモニー」は最後に種明かしを滔々と語っちゃう(だけ)な点が残念。
2012.02.13 01:44 | URL | manimani #3JGacFHI [edit]
よくできた作品ですが、たしかにオチはいまいちですね。
正直あまり好みの作風ではありませんでした。
なんとなく「幼年期の終わり」に似てるような気がしました。
いちおう「虐殺器官」も読んでみようと思っています。
2012.02.13 21:33 | URL | piaa #- [edit]

post comment

  • URL
  • comment

  • password
  • secret
  • 管理者にだけ表示を許可する

プロフィール

piaa

  • Author:piaa
  • Livedoorへ移転しましたので、そちらでお願いします。

    こちらのブログへのコメントはLivedoorに転載しますが、定期的にチェックしないので相当遅くなることもあります。

ブログナビ

P&M_Blog
 トップページ
  ├ 月別アーカイブ
  |  └ --年--月
  ├ カテゴリー
  |  └ スポンサー広告
  └ スポンサーサイト
P&M_Blog
 トップページ
  ├ 月別アーカイブ
  |  └ 2012年02月
  ├ カテゴリー
  |  └ SF
  └ 伊藤計劃 ハーモニー

カレンダー

07 | 2017/08 | 09
- - 1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31 - -

月別アーカイブ

カウンター

ブログ内検索

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。