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トニ・モリスン ソロモンの歌


 トニ・モリスンは以前「ジャズ」という作品を読んだのだが、これがさっぱり理解できず、全く面白くもなくストーリーさえ掴めないという、まあ言うなれば最悪な作品だった。
 というわけでこの作家の作品はもう二度と読まないつもりだったのだが、池澤夏樹編の短編コレクション1に「レシタティフ-叙唱」という短編が収められていて、これが非常によかったのでもうひとつくらい読んでみてもいいかという気になったのだ。

 そこで手にとったのがこの「ソロモンの歌」。この作家の、1977年発表という、割と初期の作品で、文庫本で600ページに達する長編だ。
 これもストーリーを要約するのが難しい作品だ。非常に簡単に言えば父メイコン・デッドと母ルースの不和のため暗い家庭で育ったメイコンの長男、通称ミルクマンが、自分のルーツを探す物語と言えるだろう。しかし、「ジャズ」とは違って特に読みにくいというようなことはなく、普通に読み進めることができた。ということはやはり「ジャズ」という作品、もしくは翻訳の方になにか問題があったのだろう。

 20世紀初頭から中盤にかけての黒人社会の置かれた状況を、ミルクマンをはじめとしたデッド一家という一組の家族を通じて描き出した作品で、作品を通じてたいした事件は起こらず、終盤ではお宝を探したり、恋人のヘイガーや親友ギターに命を狙われるなど、様々なサプライズな展開はあるものの、全体には淡々とした語り口で、命を狙われているといった緊迫感は薄い。それよりも自身の出自を探って祖父の足跡をたどる旅の方がはるかにスリリングである。
 ミルクマンの親友ギターの、差別を受けて歪んでしまった正義を盛り込んで物語に立体感を出したり、伏線の張り方の巧さなど非常に見事に書かれた作品で、長さもさして気にならない。
 そこに神話的な要素を加え、それまでのアメリカ文学でほとんど語られることのなかった黒人のアイデンティティというものについて決して声高にならずに静かに語ったこの作品が、トニ・モリスンの出世作の一つになったのは当然であろう。オバマ大統領が絶賛するのも納得。

 ただ、ラストがよくわからなかった。ギターはミルクマンを狙撃し、その流れ弾が当たってパイロットを射殺してしまうが、そのあとライフルを捨ててしまうのはなぜだろうか。そもそもこのタイミングでパイロットが死ぬ事の意味は?そのあたり解説にも議論があるようなことが書いてあるが、このあたりがまた、本書の神話的な魅力の一部でもあるのだろうか。

 というわけで、トニ・モリスンこれからを読もうかな、という人にはオススメかもしれない。二冊しか読んでない私が言うのも変だが、少なくとも「ジャズ」よりはこちらを。
.23 2012 北米文学 comment0 trackback(-)

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