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スタニスワフ・レム 捜査


 この「捜査」は現代を舞台にした不条理ミステリ小説で、「枯草熱」と並んでレムの全作品中でもかなり異色の作品といえるだろう。今回25年ぶりくらいに再読。

 実は25年ほど前に読んだ時には、なんとも変な小説という読後感しか持てずさほど印象に残らなかった。しかし今回読みながら、この作品がレム自身の代表作「ソラリス」にとても似ていることに気づいた。ある意味で「ソラリス」の回答編ともいえるのではないか、と思いながら読んだのだが、実はこちらのほうが「ソラリス」よりも先なのだった。

 スコットランド・ヤードの警部補グレゴリイは、未遂を含む連続遺体盗難事件を捜査する事になるが、調べるほどにこれらの事件の異常さが際立ってくる。全く解決への糸口が掴めないでいる中、新たな遺体盗難未遂事件が起こり、警備につけていた警官が重傷を負うが、現場に残された足跡などの証拠は「犯人」の存在を否定するものばかりだった。果たしてグレゴリイはこの異常な事件を解決できるのか、といったストーリーなのだが…

 重傷を負った警官の死に際の証言を収めたテープを聴かされる部分などは「小アポクリフォス」を読むケルヴィンを思わせるし、全体の雰囲気にも「ソラリス」と似通った部分は多い。だがそれよりも、、異常な事件である大きな謎を呈示しておきながら、その謎解きには一切の興味を示すことなく、異常な事件に直面した人間のリアクションのみに焦点をあてて描いたという点で「ソラリス」と同じプロットを持っていると言えるだろう。
 「ソラリス」では宇宙ステーションを舞台に、乗組員の記憶を再現して突然現れた「お客」の来訪という異常な事件が発生し、それを巡り物語が展開していく。主人公ケルヴィンの死んだ元妻ハリーが現れた事で、「ソラリス」という小説はSFでもありラブストーリーでもありホラーでもミステリーでもあるというきわめて多義的な作品になったが、一方こちらの「捜査」では死体が動く/消失するという異常な事件がロンドンの町で起こり、主人公はこれを刑事事件として捜査する刑事という事で、もはや全くSFではないし、ラブストーリーの要素も全くない(というか女性らしい女性は全くといっていいほど登場しない)。異常な事件に対する人のリアクションを描いた作品、という点では「ソラリス」よりもある意味はるかに真面目な作品かもしれない。

 『人間が理解できない出来事に接した時、どう反応するのか』という問題はレムの生涯を通じてのテーマだった。これらはそれぞれの作品での状況に対して、「ソラリス」では個人的な問題へと収束させ、「砂漠の惑星」では人間の主観的な勝利、「星からの帰還」ではなんとか状況と折り合いをつけ、「大失敗」では破滅への道を選ぶのだが、いずれもSF作品だっただけに読者の受ける違和感は(「大失敗」を別にすれば)さほど大きいものではなかったといえるだろう。
 ところがSF的な要素が排除されたこの作品ではその問題と現実的な解決が全くむきだしに扱われている。そういう意味でもレムのこのあと続くハードSFの原点的な作品と言ってもまったく問題ないだろう。登場人物全員がなんともいえない無力感を漂わせている点でも、ペシミストとしてのレムが現れ出している。これを読むと「金星応答なし」がなんと能天気なことか。あの作品が全くの修作にすぎないことがよくわかる。

 それにしても、一般的な推理小説を模してこんな作品を書いてしまうレム。やはり一筋縄ではいかない作家だ。
.08 2011 スタニスワフ・レム comment0 trackback(-)

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