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ジェイムズ・ティプトリー・ジュニア たったひとつの冴えたやりかた


 名作として有名なSF。以前から一度読まねばとは思っていたのだが、川原由美子氏のあまりにも少女マンガ然としたカヴァーイラストに恐れをなして手が出なかった。ところが最近片山若子氏のカヴァーイラストに変更になっていて、私は片山ファンでもあり、これを機に読んでみる事にした。

 銀河に横たわる星のない空域、「リフト」。人類をはじめとする「連邦」がそのリフトの探索を始めた時代を描いた三つの短編を収めた連作短編集。表題作の他「グッドナイト・スイートハーツ」、「衝突」が収められている。

 とにかく冒頭の「たったひとつの冴えたやりかた」が非常に有名かつ人気がある。これは16歳の少女コーティーが、リフト周辺を親に買ってもらったクルーザーで飛んでいると、謎の生命体とファースト・コンタクトしてしまう。この生命体は宿主に寄生する微小な生命体で、宿主の身体を使って感覚を得、宿主と会話する事もできる。コーティーはシロベーン(シル)と名のるこの生命体に親近感を覚え、やがて二人のあいだには友情が芽生えるが・・・、といった物語。
 どこかの書評氏が「この作品のラストでハンカチが必要でなかったら、あなたは人間ではない」とか書いたらしいが、その例で言うなら私はどうやら人間ではなかったらしい。
 コーティーのやったことをよく考えてみる。単独で未知に近い宇宙を飛ぶ以上は、プロであれアマチュアであれ、16歳であろうとも宇宙飛行士なのだから、探検家としての覚悟がなくてはいけない。宇宙飛行士が訪れる星にはどんな危険なバクテリアとか病原菌があるかもわからないわけで、そういうものを母星に持ち帰るわけにはいかない。もし未知の惑星で未知の伝染病に感染したなら、病状を詳細に報告した後、治療法を見つけるか、さもなければ感染を防ぐための最大の努力が必要だ。コーティーが置かれた状況はまさにそれである。結果彼女は必要な事を行っただけで、それは宇宙飛行士として当然のことをしたまでのことにすぎない。その非情な決断を16歳の少女が選ばねばならなかった悲惨な話ではあるが、これが50歳のじじむさい男性の決断だったら、その小説を読む「人間」にはハンカチが必要だっただろうか。

 次の「グッドナイト・スイートハーツ」は一転して、回収救難官レイブンが宙賊を敵に回して大立ち回りを演じるアクション作。レイブンが助けたマイラⅡ号に乗っていた女性は80年前の若き日に愛し合ったイリエラだった。
 う~ん。宙賊(宇宙海賊)なんて商売がとても割に合わないような気がするのはさておいて、なんだかなにを言わんとしているのかよくわからない作品だった。ラストもどうなったのかわからない。途中までは面白かったのに・・・というわけで消化不良な一作。

 ラストの「衝突」はコメノという異星人と人類とのファーストコンタクトを描いた作品で、一触即発の状況の中で人類の探査船の乗員達が、コメノの人々がとる行動を交互に描いていく。ファーストコンタクトそのものを描いた作品としてはかなり完成度の高い作品だといえるだろう。
 この三作を通じて、超光速の航法はおろか通信すらできない人類は基地との通信をメッセージ・パイプというものを使っている。「冴えたやりかた」のラストではこれを再生しているのをコーティーの父親らが聞いているのだが、コーティーが行方不明になってから何年経っているのかわからない。宇宙的な規模で言えば最低でも数年が経っていてもまったくおかしくない。なので聞いている父親たちの緊迫感にリアリティがない。逆に「衝突」ではこのメッセージ・パイプが届くタイムラグが緊迫感を産む作用をする。物語的にもセンチメンタルに流れた「冴えたやりかた」よりも二つの社会が接触する時の危険というハードなテーマを極端に深刻にならずにうまく読ませて見事だ。というわけでこの三作のなかでは「衝突」が断然好きだった。
.12 2011 SF comment2 trackback(-)

comment

20代前半の頃、一番SF小説にはまって色々読んでました。10代も30代以降もSFは漫画、映画などで楽しんでいますが、どちらかというとファンタジーの方が子供時代から中年の今まで好きですね。
私にとってSFと青春は何故かぴったり重なります。心情的に未知なるフロンティアとロマンを求めるようなSF小説が青春の一時期と波長があったのでしょう。

その頃読んだ「冴えたやり方」に私は涙しなくても胸がキュ~ン(苦笑)だった思い出が。
今、読んだら私の感想もまた違うかもしれませんね。

ちなみにその頃私が一番好きだったSFはエリザベス・A・リンの「遥かなる光」で大人になって読んだファンタジーで一番だったのは「最後のユニコーン」でした。

今思えば、両方、大人になりかけの二十歳ちょっとの青い心にぴったりでした。
2011.10.14 23:21 | URL | mimosa #pSJ6Fihk [edit]
mimosaさん、こんばんわ

残念ながら私の場合「冴えたやりかた」はピンと来ませんでした。多分30年前に読んでもピンとこなかったでしょう。なんでかな。
翻訳のせいもあるでしょうが、コーティーの語り口が好きでないですね。今読むと古臭いというのもありますが、ぶっちゃけコーティーが私の好みのタイプではないんですね(笑)。

エリザベス・A・リンの「遥かなる光」…う~む、浅学ながら全く知りません。アメリカSFってクラークとかアシモフとか大家の作品があまりにつまらなかったのでその他の作品をあんまり読んでないんです(苦笑)。
今度古本屋で気がけてチェックしてみます。
2011.10.15 01:18 | URL | piaa #- [edit]

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