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メルヴィル タイピー


 メルヴィルというと「白鯨」ばかりが有名で、その他にどんな作品があるのか全く知らなかったのだが、これを古本屋で発見して思わず買ってしまった。この集英社世界文学全集ベラージュ版では他に「バートルビー」など2作が併録されているが、いちおう「タイピー」だけ読んでみた。

 主人公は捕鯨船の乗組員として南洋を旅していたが、船員の暮らしに嫌気がさして船がマルケサス諸島のヌクヒーヴァ島に入港した時に同僚と二人で脱走する。逃避行の末、凶暴な食人族と聞かされていたタイピー族に囚われた二人だったが、なぜか非常な厚遇を受ける。
 筋立てだけ見れば冒険小説みたいにも思えるが、実際に読んでみると冒険的な要素はほとんどなく、実際に主人公と同じ経緯で1ヶ月タイピーの村で生活したメルヴィルの実体験を基にした、かなりノンフィクションの要素が強い作品である。当時誰も知らなかった南洋の未開の人々の暮らしぶりを克明にレポートした旅行記というか紀行文というか、そういう要素が強い作品である。

 メルヴィルという人は非常にリベラルな人で、未開人だから、というだけの理由でタイピーの人々を蔑んだりはしない。彼らの文化や生き方に理解を示し、逆に彼らの楽園でのような暮らしを羨むような記述もある。そんな彼らの楽園の暮らしが、自分達白人が進出する事破壊されるのではないかと危惧する。このあたりは文明批判的なものも含まれてきて興味深い。そのあたりはこのページを読んでいただくと非常に参考になる。リンク先は「タイピー」と「白鯨」に関する非常に興味深い考察になっているので是非ご一読を。
 そういえば「白鯨」にも食人族の男クィークェグがかなり重要な役回りで出てくるが、クィークェグもそうやって楽園を追われた島の民なのだろうか。そう思って読むと「タイピー」で主人公の世話係として登場するコリ・コリとクィークェグが重なって見えてくる。
 そんなリベラルなメルヴィルも、伝え聞いてきた食人の風習を目の当たりにし、恐れをなして逃げ出すのだが、どうもこの作品、そのタイピー村からの脱出シーンがどうもよくわからない。タイピーの偉い人たちはそれまでは主人公が海岸に行くことすら頑なに拒んできたのに、このラストだけはなんだか簡単に脱出を許してしまう。きっと本当はもっとなにかあったのではないかと思ってしまう。

 この作品の中ではタイピー族の美しい娘ファヤウェイに主人公が惹かれるのだが、このファヤウェイに限らずタイピー族は非常に美しい人々であると描写されているので、どんな人々なのかと疑問に思ってググってみたら、マルケサス諸島はタヒチの一部で、あのゴーギャンも最晩年この諸島の島に住んでいたのだそうだ。この作品に描かれているヌクヒーヴァ島のタイピー村も、ゴーギャンの描いたタヒチのような楽園だったのだろう。
しかし、そんな楽園は、もはや地球上に残ってはいない。メルヴィルが危惧したとおり、文明人が「文明」を伝えた結果、楽園はことごとく失われたのだ。
.06 2011 北米文学 comment0 trackback(-)

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