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内田百 ノラや


 内田百集成第9巻として発売されている、猫に関するエッセイを集めた一冊。「吾輩は猫である」と並ぶ古典的猫文学の傑作ということで読んでみた。

 家に居ついた野良猫をノラと名づけて、飼うでもなく飼わないでもなく半飼い猫としてかわいがっていた百先生だったが、そのノラがある春の日に出て行ったきり帰らなくなった。百先生は手を尽くしてノラを探し出そうとするが見つからない。ノラのことを思うたび涙にくれる百先生の前に、ノラにそっくりだが尻尾が短い別の野良猫、クルが現れる。

 飼い猫を失った飼い主のつらい気持ちがこれでもか、というほど盛り込まれたこの作品、猫好きには大絶賛され、そうでない人には理解できないのだそうだ。たしかに飼い主の心情を思えば、これほど切実なものはないだろう。繰り返し同じような事が書かれているが、ノラへの強い感情を感じさせる。だが読んでいてずっと違和感を感じたのも事実だ。

 私は猫は好きだ。でも近所の野良猫と仲良くなってかわいがることはあるが、飼ったことは一度もない。だから私は野良猫と人間の関係性についてしか語ることができないのだが、少なくとも相手が野良猫である以上、今の関係と言うのはあくまで一過性のものであるという事は理解していなければいけない。猫は自分を好いてくれる人を知っているが、その人に執着する事はない。だから、特にオス猫であれば発情期が来たらそれまでの関係はおしまいである。百先生はノラに餌を与えて家に上げてかわいがることでなし崩しにノラを飼い猫にしたつもりだったのだろうが、生まれついての野良猫であり、半飼い猫であるとは言っても外出の自由が保障された自由な猫であるノラの意識としては、百先生一家はただエサをくれてかわいがってくれる、ただそれだけの存在だったのだ。ノラにとっては発情期遠征のほうが百先生一家よりも重要だった事は言うまでもない。ノラの失踪は起こるべくして起きたのだ。

 だから百先生がノラを思って泣いたりするのは、気持ちはわからんでもないが、それはちょっと違うんじゃないかと思うのだ。外出自由なノラには、『出て行ったきり帰ってこない』という選択をする権利があると思うのだ。きっとノラはその名のとおり野良として一生を全うしたのだろう。「飼い猫」に安住せず野生の呼ぶ声にしたがって野良に戻った、それがノラの望みだったのなら、まあ心配してやるのはいいが、可哀相に思って泣くようなものではないだろうと思ってしまう。
 猫は人が思っているよりもずっとクールに物事を見ている。血統書つきのブランド猫よりも経験的に知能の高い野良猫はなおさらだ。そのへんを履き違えると百先生の轍を踏むことになる。

 百先生が入れあげたのが猫でよかった。たちの悪い玄人女だったらさぞ始末が悪かったろう。
.18 2011 日本文学 comment2 trackback(-)

comment

piaaさん、こんにちは♪

これまた私の大好きな百先生の『ノラや』。
いなくなったノラを探したり、クルツの最期を看取ったりする場面には、私も百先生と一緒にしくしく泣いたりしたものです。
ですから、piaaさんのクールな感想はちょっと新鮮でした(^o^) そして、やっぱり私という人間は、猫の気持ちを分からないんだなあ……道理で猫に好かれないと思った;
2011.09.19 08:19 | URL | ntmym #- [edit]
あ、いやいや私もクルツの最期のシーンはちょっと泣きそうになりましたよ。
クルツは野良でしたが最期に飼い猫になって楽をしたいと思って百先生のところに来たんでしょうね。実際に結構そういう、年取ってから飼い猫志望の野良猫っているんです。だからクルツは百先生の元で幸せな晩年を過ごしたのでしょうね。
クルツの場合、若くて自由が欲しかったノラとは違うんじゃないかと思います。

猫は自分を好いてくれる人を嫌ったりはしませんよ。大抵の野良は警戒心が強くて寄ってこないだけです。なかには人に甘えたくてうずうずしている猫もいますから、恥ずかしがらずに声をかけてみましょう。
2011.09.19 22:07 | URL | piaa #- [edit]

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