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新田次郎 孤高の人


 山岳小説と言えば新田次郎。というか他の作家を思いつかないんだけど。私は登山にはまったく縁がないが、なぜか新田次郎の作品は好きで昔結構読んだ。この「孤高の人」も当然読んでいたのだが、先日坂本眞一のコミック版を読んで、オリジナルのほうも久しぶりに読んでみたくなった。

 大正時代。神戸で勤め人をしながら登山を始めた加藤文太郎は、その常識はずれの脚力で日本アルプスを次々に踏破、やがて「単独行の加藤文太郎」として登山界で名が知られるようになる。この作品は実在の人物である加藤文太郎の人生を追った作品なのだが、ノンフィクションではない。加藤の人生をベースに新田が自由に脚色したフィクションである。特にこの作品の場合、脇役の登場人物の描かれ方が実際と違うなど問題点もあるらしい。そのあたりをよくわきまえて読む必要がありそうだ。
 そういう硬い事は抜きにして、とにかく面白い小説である。登山のシーンは私のような門外漢が読んでも山の魅力と恐ろしさが伝わってくる素晴らしいものである。この小説読んで登山始めました、と言う人も実は結構いるんじゃないだろうか。

 加藤の人生を追った作品なのだから、当然登山以外のシーンも多い。何かと加藤の邪魔をする会社の上司、影村や、「主義者」として警察に追われることになる元同僚の金川、深窓の令嬢っぽく登場しながら身を持ち崩し、最終的には宮村を狂わせ加藤の死の遠因を作る園子などが織り成す人間模様もうまく絡めて非常にリーダビリティが高い。そのへんがこの作品の魅力を形作っているといえるだろう。ただの登山バカの物語ではなく、登山と言う趣味に情熱を燃やす一社会人の物語として普遍的な物語になっているのだ。影村、金川、園子の三人の「ジョーカー」が絡み合って間接的に加藤を死の山行へと追いやるあたりも非常に巧みに書かれている。このラストは読者にとっても非常に悔しいものだ。一社会人である加藤に、読者は知らず知らずのうちに親近感を覚えているからである。

 加藤文太郎は、プロレタリアである。当時登山と言うのは高額な装備が必要な富裕層のスポーツで、そこに登場した地下足袋で山を歩く賃金労働者=プロレタリアの加藤の出現と活躍は登山界にとってはそれこそ革命的なことだったのかもしれない。彼の存在が登山というスポーツを一般に広める役割を果した側面もあるのかもしれない。
 登山が好きな方も、そうでない方もぜひ一度読まれてみることをおすすめする。ちょっと近くの山に登ってみたくなるかも。
.23 2011 日本文学 comment0 trackback(-)

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