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皆川博子 蝶


 2005年に発表された皆川博子の代表作とされる短編集。2~30ページの比較的短い作品が8編収められている。

 全部で200ページほどの薄い本なのだが、これは強烈な一冊。純日本風の仕立ての中に情念の世界が描かれる鬼気迫る作品が並んでいる。8作に共通して他から採られた詩に彩られているという特色もある。
 冒頭の、屋根裏部屋にいる叔父の亡霊が現れる「空の色さえ」からそのトーンは明らかなのだが、これはこの作品集全体で言えば小手調べに過ぎず、ページが進むにつれ作品の内容はエスカレートしていく。どの作品もみなそれぞれにすごいのだが、少年少女を主人公に据えた2作が鮮烈。

 「想ひ出すなよ」というタイトルの、少女の一人「わたし」の一人称で語られる作品では、この少女の、他の少女に対する劣等感や優越感というものがうまく盛り込まれて4人の少女の力関係が表現され、そこに少女の一人、祥子の「姉」が出現する事で少女たちの関係がぶれ出していく様が簡潔に語られ、やがて祥子の「姉」の正体が明らかになった時に起こるおぞましい出来事が見事なまでにクールな筆致で描かれて読者はうならされる。冒頭と結びの語りも絶妙。

 「妙に清らの」では同居する叔父のところに嫁に来た綾子と、彼女に惹かれる少年のありきたりな物語と見せてラストでは異様なまでに美しく、かつ凄惨な世界が少年の眼前に繰り広げられる事になる。おぞましくも美しいそのシーンに、読者も主人公の少年同様目をそむける事すらかなわなくなるのだ。そこに至るまでに祖父のエピソードなどを積み重ねる事で、この家の「歪み」をあぶりだして行き、一見唐突にも見える衝撃的なラストに繋がっていくのだ。

 幻想的で残酷・凄惨な作風は最近の作家…川上弘美や小川洋子とかに近いものがあるのかもしれない。そちらは数作しか読んでいないので単純に比較はできないが、作品そのものの力はこちらのほうが数段上だと思う。文章そのものの美しさ、磨かれた言葉の見事さもさることながら、これらの作品が詩歌にインスパイアされて書かれたのか、それとも作品世界にぴったりくる詩歌を探したのかはよくわからないがそのシンクロ率というか嵌り具合も見事だ。
 とにかく壮絶に素晴らしい作品集だ。こんな凄い本を知らなかったなんて…もう日本文学がつまらないなんて言いません。というかこういう凄い本が話題に上らない日本の文壇のほうに問題があるのかな。
.23 2011 日本文学 comment2 trackback(-)

comment

(憶えててもらってたようでうれしいです)

でしょ!
こんな作家と同じ時代に生きて呼吸しているなんて!
高齢のようですがまだまだ新しい作品を出して欲しいものです。
2011.03.15 19:38 | URL | ojyamasimasu、ぴのきおですw #- [edit]
そうそう、この本は(ojyamasimasuさん改め)ぴのきおさんにご紹介いただいたのでした。実はけっこう前に買ったのですが読む暇がなくて遅くなりました。

これは確かに凄かったです。意外と最近の作品だということにも驚かされました。皆川さんは昭和5年生まれなので今年81歳ですが、まだまだ頑張って欲しいものです。
2011.03.16 01:11 | URL | piaa #- [edit]

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