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∀(ターンエー)ガンダム


 1月のスカパー無料放送で全50話が一挙放送された∀(ターンエー)ガンダム。ついに全話観終わった。毎日2回くらい観ても1ヶ月近くかかった。∀ガンダムは1999年から2000年にかけて放送された、「ガンダム」の生みの親、富野由悠季が総監督を務めた作品。

 「ガンダム」というと富野由悠季が手がけた「機動戦士ガンダム」(いわゆるファーストガンダム)に始まり、「Zガンダム」、「ZZガンダム」、劇場作品「逆襲のシャア」、「F91」をはさんで「Vガンダム」があり、その後富野監督の手を離れたTVシリーズが「Gガンダム」、「ガンダムW」、「ガンダムX」と続いた。それからガンダム20周年記念作品として登場したのがこの「∀ガンダム」である。
 この「∀ガンダム」、これまでの「ガンダム」とは全く違う作品である。ファーストガンダムから約一万年後、地球の文明は過去の戦争で完全に崩壊し、数千年をかけて再生をとげたが、文明は19世紀程度の技術レベルで停滞したままになっている。月の住民の少年ロランは北アメリア大陸のヴィシニティという小さな町にやってくる。ここの実力者ハイム家で働くようになったロランは地球の生活を満喫していたが、ある日月の住民であるムーンレイスが地球帰還作戦を始め、巨大なモビルスーツが降下してくるが、それに驚いた地球人が攻撃を加えたことがきっかけで、戦争に発展する。そんな中ロランは突然動き出した古代の遺跡のモビルスーツに乗ることになってしまう。一方ハイム家の長女キエルは月の女王ディアナが自分にそっくりなのに驚く。

 という風にあらすじを要約するとやっぱ戦争するんじゃん、と言われそうだが、このアニメの登場人物たちは決して戦争を望んでいないし、否応なしに戦争に巻き込まれるような状況にもなかなか追い込まれない。全編を通じて戦闘シーンが極めて少ない。それどころか極めて牧歌的な描写が多く、あたかも「世界名作劇場」のようなシーンが展開する。全編を通じて死ぬ登場人物も少ないし、富野アニメ一流のもったいつけた/意味不明なセリフも極めて少なく、登場人物もみな人間的で感情移入しやすい。主人公のロランはこれまでのガンダムの主人公とは全く一線を画す善良で素直な青年だし、そのロランのまわりに、月出身ながら地球の市民を代表するキャラになるキースや、父を殺されムーンレイスを憎み軍隊に入って戦うソシエなど多彩なキャラクターを配して非常に巧みに物語を進めていく。
 中盤のキエルとディアナが入れ替わるあたりからは全くロボットアニメ的なものとは異質の「面白さ」で物語が進んでいく。最後の10話くらいはさすがにガンダムらしい展開になるものの、全体には牧歌的でスローな作品で、そういう意味では「ガンダム」としてというよりも「ロボットアニメ」として極めて独特な作品である。それでいて「ガンダム」の世界を引き継いでいるからこその深みをも持っている。ある意味非常に深遠な物語だ。

 富野アニメにはいくつかのパターンがある。ひとつは「第3勢力が途中で出現して台頭する」こと。Zのネオジオン、ダンバインなら地上軍がそれに当たるが、この作品でもギンガナム軍がそれにあたるのだが、もうひとつ重要なパターンとして味方が敵になったり敵が味方になったりすることがある。それも女性キャラだ。こちらはZのレコア、ザブングルのエルチ、キングゲイナーのアデットなど枚挙にいとまがない。「味方が敵に」というだけなら終盤のグエンの裏切りも男性キャラとは言え範疇なのだろうが、「∀」ではこれの究極のヴァリエーションとしてキエルとディアナの「入れ替わり」を描いている。
 そういう点でも総合的に見てこれは「ガンダム」の、富野アニメの文字通り「∀(すべて)」を包括した作品であるといえるだろう。

 「∀ガンダム」の物語の前提は、二つの異なる価値観の出会いというものである。なのでこれはある意味ファーストコンタクトものとも言える。かたや19世紀の技術しか持たず、人が人らしい暮らしをして満ち足りている地球の世界。一方科学技術によって支えられ、争いもなく何不自由なく暮らしている月の世界。しかし月の女王ディアナは地球の暮らしに憧れ、地球の領主のひとりであるグエンは月の技術によって産業革命を起こしたいと考えている。この作品は、これが出会ったときどうなるのかをじっくり描いてみせる。ディアナはキエルと入れ替わる事によって地球での市井の生活を体験し、やがて地球に住む事を選択するわけで、かたやグエンは失脚し、メリーベルとともに海外へ逃亡する。製作者が「19世紀の生活に戻る」ことを選んだようにも思えるのだが、本当にそうだろうか。すでにこの戦いの途中、地球上にはモビルスーツや宇宙船やなんかが、それもかなり頻繁に埋もれている事がわかっている。これら発掘品の研究によって、ムーンレイスの協力があろうと無かろうと地球の技術は飛躍的に向上するだろう。結果的にはグエンが思うように世界は進んでいくのかもしれない。ならばこのあと、地球と月の技術レベルは急速に接近していくだろう。

 ロランとギンガナムの戦いは、性善説と性悪説の戦いである。暴力の象徴とも言うべきギンガナムはターンエーとターンエックスが反応して出したナノマシンに取り込まれ、善人のアイコンとも言えるロランは逃げる事が出来て生き延びる。善が勝ったという単純な話だが、さてモビルスーツを掘り出した地球の人々は、やはりこのあと、ちょっとした紛争の解決にモビルスーツを使うようになるのではないのか?それならば、そのあとに来る秩序がどんなものだったかはともかく、ギンガナムが言うように月光蝶で全てを消し去ったほうが良かったのではないだろうか。いや、そうではないのだ。そうではないという事を、あの最終回のラスト5分、挿入歌「月の繭」にのって語られる、アニメ史上最高と言ってもいいほど美しいエピローグが示している。人はニュータイプなんかにならなくてもわかり合って平和に、人間らしい生き方を選ぶことが出来るのだ、と。

 モビルスーツのデザインがどうとか、そういうことが気になる人には向かない作品だが、「作品」としての全体の仕上がりはこれまでの、いやそれ以後の「ガンダム」や富野アニメと比較しても頭抜けている。TVアニメの、しかもロボットアニメでここまでの「作品」がありうるとは正直思っていなかった。しかもこれが10年以上も前に、手書きのアニメで作られていたなんて…!!
 他のガンダムシリーズやマクロスとかエヴァとか見てる暇があったらこれを見たほうがいい。他のアニメがいかにクズかよくわかる、そういう意味でもすごい作品だ。

2011年2月8日加筆・修正しました
.03 2011 アニメ comment0 trackback(-)

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