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チェーホフ かもめ


 チェーホフは小説家としてよりも戯曲作家として有名で、この「かもめ」や「桜の園」が代表作に挙げられることが多い。先日読んだ「かわいい女・犬を連れた奥さん」が面白かったのでこれも読んでみた。

 戯曲というのは芝居の台本である。だから余分なエピソードはないし、展開もわかりやすく書かれている。だから普通に字面を追って読んでいけば非常に理解しやすい。シェイクスピアが読みやすいのは現実に芝居として上演するための台本として余分なものをそぎ落としてあるからだ。だから一見複雑に見える「ハムレット」「リア王」も、本として読む時、ストーリーを追って、登場人物の心情を考える事は何も難しいことではない。もっとも「ハムレット」の場合は人物そのものが矛盾をはらんでいてアレなのだが。

 …で、この「かもめ」、そのつもりで読み出したら、さっぱりわからない。普通に読むと、どうやら何組もの男女の恋愛関係が複雑に絡まりながらも、その中でトフープレフとニーナの関係を中心に描いているように思える。『愛するニーナが他の男のもとに去り、煩悶しながらも作家としてのキャリアを積みはじめたトフープレフは、男に捨てられたニーナと再会するが、もはやニーナの心に自分の入り込む隙がないと思い知らされ自殺する』という風にストーリーを要約する事もできる…と思うのだが、本当にそう読んでいいのだろうか。トフープレフの最後のセリフは、あれは自殺する事を決意した男のセリフだろうか。しかもこれは巻頭にあるように「喜劇」なのだ。いや待て、それともここで言う「喜劇」とは一種のアイロニカルな表現なのだろうか。

 というわけで最後まで読んでよくわからなかった私は、もう一度はじめからこの戯曲を読み直してみた。この作品の読みにくさは、トフープレフの「本筋」に複数の「副筋」が絡み合って構成されているところにあると思う。トフープレフにかなわぬ恋をして、彼を忘れるためにメドヴェジェンコと結婚するマーシャ。トフープレフの才能を全く認めない、それどころか徹底的にバカにしている母親アルカージナ。老いらくの不倫愛に燃えるマーシャの母ポリーナと、彼女を疎ましく思っている不倫相手。その中でも特に重要なのはマーシャの副筋で、これはトフープレフとニーナの関係を裏返しにしたようなものである。ただし、「本筋」と「副筋」がさほど違うカラーで進行しないので、シェイクスピア(特に「リア王」)のような「本筋」と「副筋」の対比による鮮やかさは全くない。

 で、2回読んで感じたのは、この作品の主人公をトフープレフだと考えると読みそこなうのではないかという事。この作品はニーナを中心に読むべきなのではないだろうか。ニーナは終幕で「私はかもめ」と繰り返すが、これは第2幕でトフープレフが撃ち殺した湖のかもめそのものを指している。ニーナはトフープレフと彼の青臭い芸術を愛していたが、洗練された作家トリゴーリン(アルカージナの愛人でもある)に惹かれ、彼に弄ばれ破滅する。かもめはニーナの破滅の象徴で、終幕でトフープレフが出会うのはすでに破滅して何も残っていないニーナなのだ。トリゴーリンは自分が頼んだというかもめの剥製を見せられても覚えてすらいないが、これも彼のニーナに対する気持ちがいかにいい加減なものだったかを示している。ニーナの破滅はトフープレフをも破滅させる事になるが、これはもはや別の話といってもいい。しかし、ニーナは愛情生活に破滅してはいたが、人生そのものを投げ出してはいなかった。だから死ぬのはトフープレフだけだ。ここは女性の強さ・したたかさを感じさせて近代的。

 正直言ってわかりにくい戯曲だ。2回読んでもなにが面白いのかよくわからなかった。先日読んだイプセンの方がテーマもはっきりしているし良いと思う。チェーホフはどうも小説の方が性にあいそうだ。
.14 2010 東欧・ロシア文学 comment2 trackback(-)

comment

こんばんは。
チェーホフの4大劇の中では、私は「ワーニャ伯父さん」が好きです。
「かもめ」よりは分かりやすく、チェーホフ劇で繰り返し出てくる「それでも生きていかなければ!」というテーマが語られている作品かと思います。
2010.08.18 22:24 | URL | ふくろう男 #TT0fzUCU [edit]
「かもめ」はいまちとつピンと来なかったのですが
いちおう4大戯曲は読んでみようと思っています。
小説の方がなかなか面白かったこともあって、今後読んで行きたい作家になりました。
2010.08.19 22:40 | URL | piaa #- [edit]

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