スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
.-- -- スポンサー広告 comment(-) trackback(-)

チェーホフ かわいい女・犬を連れた奥さん


 チェーホフは「かもめ」「桜の園」と言った戯曲が有名なロシアの作家。これはそのチェーホフの短編小説を7編収めた短編集。

 7編を通じて、どの作品でも大した事件は起こらないのだが、もっとも大事件がおこるのが「谷間」という作品。これはこの作品中で最も長い作品なのだが、父が孫に財産を譲ろうとしたのに腹を立てた次男の嫁が生まれたばかりの長男の息子を殺害してしまう。なのにこの嫁は何の罪にも問われず、最後の方では家の実権を握ってしまう。そういう不条理な事を、チェーホフは怒っているわけでも告発するわけでもなく、ラストでは川端の短編に時々見られるような薄明るいイメージで締めてしまう。
 表題作の一つ「かわいい女」では誰かにすがっていなければ生きていけない自分の意見のない女性を淡々と描いている。読者の目から見たら明らかなこの女性の愚かさを、作者は指弾するわけではない。愚かである事を指摘するだけだ。

 こういうふうに、この作家は決して声高に何かを主張するわけではない。でありながら当時の社会風刺をまぶしていて、それが現代にも十分通用するのだ。なので今読んでもかなり鮮度が高い。

 「犬を連れた奥さん」ではちょっとしたアヴァンチュールのつもりが本気になってしまい深みにはまる男女を描いている。今でもよくあるような話なのだが、この小説はラストの見事な切り方が素晴らしい。ぐだぐだと恋愛の顛末を描いてしまっては台無しだというのをこの作家はよくわかっているのだ。
 「中二階のある家」「イオーヌイチ」はいかにもロシアっぽい道具立てが魅力的な恋愛もの。特に「イオーヌイチ」はプーシキンの「エフゲニー・オネーギン」のパロディのようなストーリーで、求婚して断られた娘に数年後に迫られて辟易する男を描いていてニヤリとさせる。「中二階のある家」の方は生意気な言動のために愛する女性の姉を怒らせてしまう失策を犯す男を描いている。
 ラストに収められた「いいなずけ」では自立する女性を描いていて、女性の時代であった20世紀の幕開けにふさわしい作品だといえる。それまで封権的な社会の中で苦しむ女性たちを描き続けたこの作家にとっては絶筆となったわけだが。

 さてこの本、翻訳者が小笠原豊樹。あれ、この人ってブラッドベリの「火星年代記」なんか訳してる人だよね?なんでロシア語のチェーホフを…?と思ったら、この方は英語・ロシア語、フランス語の翻訳も手がけているそうだ。すごいな。
.02 2010 東欧・ロシア文学 comment0 trackback(-)

comment

post comment

  • URL
  • comment

  • password
  • secret
  • 管理者にだけ表示を許可する

プロフィール

piaa

  • Author:piaa
  • Livedoorへ移転しましたので、そちらでお願いします。
    http://blog.livedoor.jp/piaa0117/

    こちらのブログへのコメントはLivedoorに転載しますが、定期的にチェックしないので相当遅くなることもあります。

ブログナビ

P&M_Blog
 トップページ
  ├ 月別アーカイブ
  |  └ --年--月
  ├ カテゴリー
  |  └ スポンサー広告
  └ スポンサーサイト
P&M_Blog
 トップページ
  ├ 月別アーカイブ
  |  └ 2010年07月
  ├ カテゴリー
  |  └ 東欧・ロシア文学
  └ チェーホフ かわいい女・犬を連れた奥さん

カレンダー

09 | 2017/10 | 11
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31 - - - -

月別アーカイブ

カウンター

ブログ内検索

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。