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完訳 千一夜物語 第3巻


 「千一夜物語」の第3巻は全体が「オマル・アル・ネマーン王とそのいみじき二人の王子シャールカーンとダウールマカーンとの物語」に当てられている。いや、この長大な物語は第3巻だけでは収まらず第4巻の頭まで続いているのだ。そこでここでは本の構成は無視してこの物語全体でレヴューすることにする。

 イスラムの王オマル・アル・ネマーン王は大変な色好み。360人の側室を持ち、毎夜そのうちの一人と夜を共にしていた。中でも一番のお気にいりはキリスト教徒の国から来たサフィーア。彼女は懐妊して双子の姉弟、ノーズハトゥとダウールマカーンを生む。ところがマル・アル・ネマーン王も全く知らなかったのだがこのサフィーアは隣国のキリスト教徒の国コンスタンティニアの王女だった。王女を辱められたことに対して復讐を誓うキリスト教徒軍と回教徒軍の衝突のさなか、マル・アル・ネマーン王の第1王子シャールカーンはキリスト教徒の女王アブリザと出会う。ここから三代にわたる抗争が繰り広げられるという、単独の物語としては「千一夜物語」中最長のエピソードである。

 これまでの、いかにも民話然とした第1巻第2巻とは大きく違い、この物語はなかなか硬派な大河ドラマ仕立て。戦乱や愛憎も描かれ、書きようによっては大変な小説になりうる素材である。これをわれらがシャハラザードはいつものように機智に富んだ語り口で軽々と語っていく。極端なまでにデフォルメされたキリスト教徒の野蛮さなども非常に興味深い。あまりにもデタラメな描き方にはつい笑ってしまうが、昔のアメリカ人の日本人観みたいなもの。よその国のことを大した知識もなく書くとこうなるという見本みたいなものだ。所々にイスラムの道徳的な挿話が挟まっていて、ここで物語の流れが寸断されるのもこの作品らしい。やがて物語の中心は王子ダウールマカーンに移り、姉ノーズハトゥと生き別れになった二人の数奇な運命が描かれる。この辺は民話らしい展開でとても面白い。一方マル・アル・ネマーン王はキリスト教徒の後ろで糸を引く老婆「災いの母」の手にかかってあっさり暗殺されてしまう。バクダッドに帰還したダウールマカーンは王座につき、兄のシャールカーンとともに父の仇を討とうとコンスタンティニアに攻め入るが、「災いの母」の姦計にかかる。

 …というわけで読み応え十分。非常に起伏に富んだストーリーが展開する。ダウールマカーンの息子カンマカーンが活躍する最後ではちゃんと伏線が回収され、罰せられるべき人物は罰され、誉められるべき人物は誉められて、この手の物語としては珍しいくらいきれいに終わる。それにしても途中で関係のない話に脱線するのは「千一夜物語」ならば当然だが、「アズィーズとアジィーザの物語」はあまりにもひどい話だ。イスラムの男尊女卑の思想がもろに出た一遍。まあそれを言うなら、本編の「オマル・アル・ネマーン王とそのいみじき二人の王子シャールカーンとダウールマカーンとの物語」にしても、諸悪の根源は息子の思い人まで手篭めにしてしまう常軌を逸したマル・アル・ネマーン王の色好みではないか、といえるわけだけれども。
.23 2010 世界の民話 comment3 trackback0

comment

おお、シャルカーンまでいきましたか。さすがです。

 宗教性については、ユダヤ教徒(ズル賢く、カネに汚く、ウソツキでケチ)や、ゾロアスター教徒(悪の権化、ほとんど人間以下)と比較すると、キリスト教徒は野蛮で筋肉バカだけど、武勇を尊び、中には名誉を重んじる者もいるわけで、非イスラム教徒の中では一番マシと評価されているように思えます。
 アーサー王伝説のムスリムの騎士パロミデス卿も微妙な立ち位置ですし。
2010.02.24 16:54 | URL | カンタニャック #- [edit]
「千一夜物語」にはいろんなお話がアソートになっているので、他民族・他宗教へのスタンスも作品ごとに微妙に違うような気もします。
このお話ではキリスト教徒のアブリザを回教徒の英雄にも劣らぬ女傑として描いているのが興味深いですね。
2010.02.25 01:25 | URL | piaa #- [edit]
おっしゃるとおりで、様々な見方が併存できるだけの多様性があるところが、千夜一夜の面白さですね。
2010.02.25 10:47 | URL | カンタニャック #- [edit]

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