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ストルガツキー 滅びの都

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 ストルガツキーの全作品中、最大の問題作。
共産主義社会を強烈に批判した内容のせいで、作者自身がこの作品を発表する事の危険性を理解していたため、ペレストロイカ後まで出版されなかった。このへんの事情は「そろそろ登れカタツムリ」と似ている。
 はっきり言ってSF的な要素は非常に少ない。SFと言えるかどうかは読み手の取り方次第である。
 作品は、おそらくは地球外の謎の都市(太陽が電球のように点いたり消えたりする、という記述で私はラリー・ニーブンの「リングワールド」を連想したが、スペース・コロニーのようなものか?)を舞台に共産主義の「実験」が行われている。そこでは社会に義務を果たす必要が当然あって、職業も数ヶ月ごとに配置換えされ政府職員だったり警察官だったりごみ収集員だったり何でもこなさなければならない。
 ここに住むアンドレイはヒヒの襲撃を受けたり、幽霊屋敷「赤い館」でレーニンの亡霊とチェスを指さなければならなかったり、クーデターに加担したりするのがドタバタ調で描かれるが、いずれも「実験」の範疇とされている。間抜けなコミュニストのアンドレイははじめは妄信的に「実験」を支持しているが徐々に不条理を感じはじめる。
 やがて「アンチ都市」と呼ばれる未確認の地域の調査に向かったアンドレイは、そこで「実験」の第1段階の終了を知る、という物語。

 昨夜紹介したゴールの「クムビ」が共産主義のユートピアを描いた作品だったのと正反対で、作者は共産主義のすべての悪しき面を描き出すのに腐心したのではないかとも思うほどの作品である。
 ところが70年代のソビエトで書かれたこの作品は驚くほど現代的である。
 硬直して融通が利かず、自分たちの取り前だけが心配なお偉いがた。危機に対しても何の対応も取れない政府。社会に対する不満を胸に抱えながら長いものには巻かれろとばかりの覇気のない民衆…
 …これは1970年代のソビエト?…それとも2005年の日本なのか…?
 全体主義国家ソビエトと対照的なはずの自由社会ニッポンの問題点が同じなのはなぜなのか?
 そして全体主義の呪縛を乗り越えたアンドレイはどこへ…? 別の次元(別の体制の下)で同じ問題に直面するのか…?

 恐ろしい作品である

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.07 2005 ストルガツキー comment16 trackback5

comment

>恐ろしい作品である
同感です。

アンドレイの物語は、ダンテ「神曲」の地獄めぐりにたとえられていましたが、<都市>の世界を地獄と捉えるなら、アンドレイはいつまでたっても楽園に行き着かないわけです。
これを自分の生きている世界に置き換えるとなんとも言えない恐怖を感じますね。

まぁ、私は楽天的な人間なので、深刻には考えずに、まだまだ、これから新境地を開拓できるんだなと、良いように解釈してますが。
2005.04.08 10:20 | URL | くろにゃんこ #Rr/PoIDc [edit]
ストルガツキーは共産主義について書いたわけで、この作品の状況が現代日本に似ていると感じるということは、
共産主義にしろ、資本主義にしろ腐った時には同じ臭いがする、ということなのでしょうか。
もちろんソビエトは腐敗していただけでなく、言論の自由もなかったわけですが…

 この作品の原題は直訳すると「滅びゆく運命の町」だそうですが一体何が滅びゆく運命なのでしょうか?
2005.04.08 22:59 | URL | piaa #- [edit]
この<都市>の状況が日本に似ていると感ずるというよりは、アンドレイの置かれている状況が、日本人の状況に似ているといえるのではないでしょうか。
宗教もろくに信じていないし、未来に展望もない、確かなものが何もない不安定さ。
そこから、何を見出すか、それがこの作品のテーマであると思います。

<都市>の世界は、アンドレイのためだけに存在すると私は思うのです。
だから、彼が新しい認識を持てば、その世界は消滅し、また新たな世界が出現する。
私は、そのように捉えています。
piaaさまは、どのように感じられましたか?
2005.04.09 11:08 | URL | くろにゃんこ #Rr/PoIDc [edit]
説得力のあるいい解釈ですね

ただ私は教導師の言う「第2圏」こそ作者たちの住む現実のソビエトなのではないかと感じました。
彼らにとって現実のソビエトは地獄の続きなのでしょうか?
2005.04.09 20:16 | URL | piaa #- [edit]
お二人の意見を拝見して、どちらもなるほど!という感じです。
私が「滅びの都」を読んで感じたことといえば、理想を目指していたはずなのに、
次々と疑問が噴出してくる世の中の複雑さというところでしょうか。
善いとか悪いとかを簡単には片付けることが出来ないというかーー。
それ以上は今でもまだ深く掘り下げられていません。
作者が意図したのはどういうことだったのかーー。
私もこの会話に参加したかったのですが、力量が足りませんでした・・・。
中途半端な意見ですみません。
まだ考えは全然まとまらないんですけど、
ストルガツキイのすごいところは、読み方によっては色々な解釈ができる、ということですね。
問題を問題のまま提示するというのは、今までの読書経験ではあまりありませんでした。
私にはちょっと新しい感覚で面白いです。
2005.04.10 20:27 | URL | ntmym #- [edit]
意見を交換する事自体素晴らしい事ですよね。
googleで検索してもすぐわれわれのブログがヒットするほどマイナーな作家だし。
だからntmymさん、力量不足なんて言わないで。
「こんな一節が気になった」ってだけでも他の人に考えるきっかけを与えたりするんですから…
2005.04.10 23:41 | URL | piaa #- [edit]
ほんとうにこんなマイナーな作家の小説について話し合えるなんて、
私は今、最高に楽しいです!
しかも、それを見た誰かがまたストルガツキイに興味を持ってくれるかもしれない、
と思うとちょっとどきどきします。
私なりのやり方で、楽しく読み、考えていきたいなあ、と思っています!
piaaさん、どうもありがとうございます!
2005.04.12 09:34 | URL | ntmym #- [edit]
と、言うわけで課題図書がまだまだたくさん!ntmymさんは「蟻塚」かな?
私は「白鳥」を読み直したいんですが、その前に2冊ほど-ベリャーエフと東欧作家の短編集を-読まないといけないのでもう少し先になりそうです
2005.04.15 00:52 | URL | piaa #- [edit]
ご名答です。
今日「蟻塚」を借りてきました。
土日で読むぞ!!
あと「願望機」もあります。
まだまだ盛り上がりますよ!
それにしても、ベリャーエフ、ちょっと面白そう・・・。
まずい、また読みたい本が増えます・・・。
2005.04.15 19:31 | URL | ntmym #- [edit]
私の読んでいるのは、世界SF全集第8巻という奴で、
「ドウエル教授の首」「無への跳躍」の2つの長編が収録されています。
なんせ戦前の作品なので内容的にちょっと古いけど…
2005.04.15 23:06 | URL | piaa #- [edit]
まだまだ、「滅びの都」に辿り着けてませんが、ようやく「みにくい白鳥」読了しましたのでTB張らせて頂きました!新入り白鳥族頑張ります。
2005.05.03 12:58 | URL | kaji #- [edit]
早速見に行きます!
2005.05.03 20:08 | URL | piaa #- [edit]
やっとのことで、読了しました。
いやあ、なぜか妙に時間がかかってしまいましたが。個人的には、『みにくい白鳥』以上に楽しめました。

次は『ストーカー』いこうかな、と思っています。
『高い城・文学エッセイ』への布石、という意味も込めて。
2005.05.22 14:59 | URL | マヨネ #0oB6Q2cs [edit]
お待ちしておりました!早速見に行きます!
2005.05.22 17:51 | URL | piaa #- [edit]
TBさせていただきました。
ここでのコメの会話も面白かったです。
2年越しの参加^^;
2007.11.21 03:45 | URL | manimani #- [edit]
ついにお読みになったのですね!
かなり難解ですがその分深い作品です。
私も久しぶりに読んでみたくなりました。
次はぜひ「みにくい白鳥」を読んでみてください。
2007.11.21 22:10 | URL | piaa #- [edit]

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まいった。感想をどう書いたらいいか分からない。ましてや、ストーリィなどもってのほかだ。なんて言ってばかりはいられないので、とにかく書くことにする。支離滅裂でも、どうか許して。本書はストルガツキイ最後の長編小説で、SF的な要素も「みにくい白鳥」同様に、設定

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