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スタンダール パルムの僧院


 世界の古典的名作として名前が挙がる作品はたくさんある。シェイクスピアの諸作、「ドン・キホーテ」「ファウスト」などなど、どれも古いながらも強烈なイメージと現代に通じる要素を持っている。だからこそ長い年月を生き延びて今も読者に愛されているのだろう。
 ならば、スタンダールの名作、この「パルムの僧院」もきっとそんな作品なのだろうと思って手にとったのだ。

 ちなみにパルムとはイタリアのパルマの事。パルマは小公国で、この国を舞台に青年ファブリスの生涯をたどる作品…といえばなんとなく普通の、ドイツによくあるような教養小説(ビルドゥングス・ロマン)かと思われそうだが、この作品はそんなものではない。まず第一にこの主人公ファブリスという青年は男前で女にはやたらにもてるが全く考えの浅いどうしようもないクズ野郎である。そんなファブリスを溺愛する彼の叔母で美貌の持ち主のサンセヴェリナ公爵夫人が、ファブリスのおイタを庇おうとしてパルム公国全体を巻き込む大事件を引き起こす、とまあこんな話。

 ファブリスはナポレオンに憧れ、本来は敵であるナポレオンの軍に加わりワーテルローの戦いに参加するがほとんど何もできないままに負傷して戻る。もちろん敵に味方したわけで国では犯罪者である。叔母の機転で僧職について追及を逃れたファブリスだが僧職についても女好きは止まらない。旅芸人の女とねんごろになったファブリスはその女の連れ合いを行きがかりから殺害してしまう。もともとファブリスに良い印象を持たなかったパルマ大公はこれを重く見て彼を逮捕、塔に監禁してしまう。ファブリスはそこでかつて出会ったことのあるクレリアという娘と恋に落ちる…というファブリスの物語に、その彼を救おうと躍起になる叔母のサンセヴェリナが画策する様々な陰謀が絡み合って小説そのものはとても面白いとは思うのだが、いかんせん登場人物たちの価値観が今の私たちには全く理解できない。

 当時の貴族という奴がいかに強力な特権を持っていたのか、この作品にはまざまざと描かれている。ファブリスは僧職の身でありながら女は抱き放題、後始末は金でつけ、邪魔な亭主は殺してしまう。クレリアはファブリスが投獄された理由は十分知っていたはずで、それなのになんでこんな男にほれるのか全く理解できない。クレリアが他の男と結婚しても夜這いして子供まで作る。もう最低である。女にだらしない、くだらない男がいて、そいつの後ろ盾の叔母が魔性の女だったというだけで国をも揺るがす事件になったという、そういう貴族社会の弱点を暴いた作品なのかもしれない。またその公爵夫人の魔性っぷりがまたとんでもない。下工作から要人暗殺まで何でもありだ。しかもそれがすべてファブリスへの愛から出ているという、いやはやなんと言うか…
 この作家は当時の貴族というものがどれほど腐りきっていたかを描こうとしてこの作品を書いたのかな。もしそうならこれは大変な成功作だ。これを読んで君主制など即刻打破すべきだと思った当時の読者は多いのかもしれない。

 小説としては記述が断片的でまるで何かの報告書のように味気なく、文章にも特に美しいものも見られず、正直読み進むのが苦痛だった。さらに古い翻訳のせいかセリフなどに違和感が多い。物語のバックボーン的にもあまりにも我々現代人の感覚から遠すぎる。これよりも200年以上前のシェイクスピアやセルバンテスのほうがはるかに現代的。21世紀の我々が読む意義は小さい作品だと思った。個人的にはとても嫌いな小説だと言わざるを得ない。これがなんで名作として読まれ続けているのかなあ。「赤と黒」も一気に読む気が失せた。
.04 2009 フランス文学 comment5 trackback0

comment

はじめまして。しばらく以前から、こちらの記事(特にロシア・東欧文学系)を読ませていただいています。
「赤と黒」はかなり以前に読みましたが、個人的には面白いと思います。実は「パルムの僧院」の方は未読なので、
> 小説としては記述が断片的でまるで何かの報告書のように味気なく、
以下が暴言なのか至極尤もなのか何とも判断できないのですが、これで懲りずに「赤と黒」もお読みください。
2009.12.06 22:26 | URL | X^2 #CypyILE6 [edit]
X^2さん、コメントありがとうございます。

文章の味気なさも実は翻訳のせいなのかもしれませんが、そう感じたのは事実ですし、発表当時に「こんなもん小説ではない」と言われたのもさもありなん、と思いながら読みました。
でもそれ以上にバカで女狂いでぼんぼんのファブリスという男にムカついて、その彼を必死で庇う公爵夫人らに全く共感できませんでした。現代の読者なら大抵そうなのではないかと思います。

「赤と黒」は大抵これよりも高く評価されているようなのでやはりそのうちには読んでみようとは思っています。
2009.12.07 00:36 | URL | piaa #- [edit]
年末に人文書院のスタンダール全集の方を借りてきて、とりあえず第一部を読み終わりました。なるほど、piaaさんの書かれている意見はその通りです。

ファブリスは考えなしのまま衝動的に行動し、その結果多くのトラブルを巻き起こしては周囲が尻拭いに奔走されます。女性関係にだらしなく、やたらに喧嘩っ早くて思慮が足りない(というよりまるでない)この男は、典型的な「だめんず」なのですが、自業自得の危機を他力本願で乗り越え続けるというこの展開は、確かに読んでいて段々不快になりますね。

現実社会では、この手のだめんずは、たとえそれなりにうまく世の中を渡っているにしても、社会的な地位はあくまで下の方でしかないのですが、この小説の場合は上層階級に居続ける点が、また頭にくるところです。

勝手に想像すると、piaaさんがここまで不快になるのは、もしかすると「娘が万一この手のだめんずを家に連れてきたら、親としてとても我慢できない」という思いがあるのではないですか?

昔に「赤と黒」を読んだときは、主人公の気持ちにかなり共感できる部分があり、一気に読み進む事ができたのですが、案外今読み直すと、もはや共感が出来なくなっているのかもしれません。
2010.01.10 14:24 | URL | X^2 #CypyILE6 [edit]
あはは、そうですね。娘の連れ合いとしてならどんなにだめんずでも、お金を山ほど持ってればOKです。
タイガー・ウッズの奥さんみたいにン億ドルの慰謝料もらえるんなら、どんなしょうもない男でもOKですよ(笑)

以前読んですごく共感できて好きだったものが、今読むと全然って事結構ありますよね。個人的にはブラッドベリの「たんぽぽのお酒」が激しくそうでした。
2010.01.10 21:39 | URL | piaa #- [edit]
このコメントは管理人のみ閲覧できます
2010.11.23 01:58 | | # [edit]

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