スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
.-- -- スポンサー広告 comment(-) trackback(-)

コードウェイナー・スミス シェイヨルという名の星


 コードウェイナー・スミスは先日再発されたばかりの長編『ノーストリリア』が有名だが、この『シェイヨルという名の星』も『ノーストリリア』同様彼のいわゆる『人類補完機構』シリーズと呼ばれるサーガの中の作品の中からの短編集で、ここには4作の短編が収められている。

 『人類補完機構』シリーズは15000年ものスパンの歴史を元に書かれているが、ここでは『ノーストリリア』の時代に至る2000年ほどの間のエピソードが年代順に収められている。
 スミスの描く未来世界は、かなりディストピア的で、この作品集の冒頭に収められた『クラウン・タウンの死婦人』は虐げられた下級民の反乱を描く作品なのだが、そこには目をそむけたくなるような残酷なビジョンが綴られていく。下級民とは、動物を人間型に改造した生き物で、ほとんど人権が認められておらず奴隷に近い扱いを受けている。人間(真人)である女性エレインは、運命のいたずらから(本当はその運命も定められていたのだが)、犬少女ド・ジョーンの革命と殉教に立ち会うことになる。ド・ジョーンら下級民は禁じられたデモを行って下級民が「愛」の感情を持っていることを訴える。作者はこの物語をジャンヌ・ダルクになぞらえて描き、その結果ド・ジョーンもまた生きたまま焼かれることになる。残酷なビジョンと、その後ろに見え隠れするなにか美しいものがなんともいえない不思議な印象を生み出す作品だ。

 『帰らぬク・メルのバラッド』は『ノーストリリア』でもヒロインとして大活躍したク・メルと第7世ロード・ジェストコーストとの秘めた愛を描く掌編。『クラウン・タウンの死婦人』の最後で初代のロード・ジェストコーストの誕生が語られるのでこの二つの短編の間には7世代が経過した事になる…とはいってもこの時代、人間は数百年の寿命を持っているのではっきり何年経ったとはいえないが、この本の巻頭にある年表では上記のとおり約2000年が経過しているようだ。ド・ジョーンの頃よりはだいぶマシだが、それでもやはり下級民は差別されていて、ロード・ジェストコーストとク・メルはお互いに愛しながら結ばれる事はないのだった。これが書かれたのは1960年代。作者はこういう差別…現実の黒人差別とか…の根絶は不可能だと考えていたのだ。アメリカで黒人大統領が現実になった今、ある意味で現実はSFよりも進んでしまったのかもしれない。

 表題作『シェイヨルという名の星』は刑務所惑星の解放が描かれた作品で、この刑務所惑星の地獄っぷりがまた凄い。今からその星に行く囚人に「心をこわしてあげようか」と提案する善意の医者がいるくらいなのだ。そこに描かれるシェイヨルの光景は、まさに地獄だ。
 この作品はダンテの「神曲」を下敷きにしたのだそうだ。そういう過去の名作や有名な故事から物語を取って来て、見事に彼一流のSF作品に仕立ててしまうあたりがこの作家の腕の立つところだ。

 この作家の作品は、ほかに『鼠と竜のゲーム』『第81Q戦争』の二つの短編集が出ているが、この『シェイヨルという名の星』を含め三冊とも入手困難。『鼠と…』はかなり古いのを確保してはいるが…
 『ノーストリリア』を出したんだから他のも出してよ、ハヤカワさん。
.25 2009 SF comment4 trackback0

comment

わーい、コールドウェイナー・スミスだ!!(酔っぱらって書いてます。)

畏友佐藤大輔氏が、悲しい中間管理職としてちょっと出してる(ラインバーガー博士として、ク・メルのオリジナルつき)のはヒミツだ。(いやあまり知られていないだけか)
2009.09.25 19:14 | URL | カンタニャック #- [edit]
カンタニャックさん、どう返したらいいのかよくわからないコメントありがとうございます。
私は佐藤大輔さんの作品は全く読んだとがありませんし、多分これからも読むことはないと思われます。

スミス、絶賛する人かなり多いようですね。私も(絶賛とまでは行きませんが)かなり好きなのでほかの2冊もぼちぼち読もうと思っています。
2009.09.26 00:21 | URL | piaa #- [edit]
4作のうち「老いた大地の底で」だけが取り上げられていませんが、ちょっと書きようがなかったとかですか?「人類の再発見」という補完機構史上で重要な出来事の起源となる作品なのでしょうが、実の所、私には面白みが解りませんでした。
ところで補完機構シリーズ作品を色々読んでも、下級民の容姿のイメージが今一つピンと来ません。私が読み落としているのかもしれませんが、例えばWikipediaに元祖猫耳と書かれているク・メルも、実際に猫耳や尻尾がある描写はなく、基本的に人間と同じ姿なのでは。クラウンタウンの下級民たちに関しては、確かに部分的に元の動物という描写がありますが、これは(補完機構の基準で言えば)出来損ないな訳ですよね?
 それから「帰らぬク・メルのバラッド」は三国志演技のある場面の翻案だとなっていますが、対応する話ってありましたっけ?
2012.12.28 20:41 | URL | X^2 #AoMrgHUA [edit]
容姿やファッションについては、基本的に小説を読んでいる時にはよほど詳しく書いてない限りあんまり気にしないたちなのでアレなんですが、人類補完機構シリーズの下級民についてはなにかひと目で見分けのつく特徴があるのではないかと考えてます。髪の色が違うとか、耳の形が違うとか、瞳の形が違うとか。でなければあれほど露骨に差別されないと思います。

「老いた大地の底で」ですか?全然覚えてません。今パラパラめくってみましたが全く記憶に無いですね。
2012.12.29 01:36 | URL | piaa #- [edit]

post comment

  • URL
  • comment

  • password
  • secret
  • 管理者にだけ表示を許可する

trackback

trackbackURL:http://piaa0117.blog6.fc2.com/tb.php/1212-0b6d32ea

プロフィール

piaa

  • Author:piaa
  • Livedoorへ移転しましたので、そちらでお願いします。
    http://blog.livedoor.jp/piaa0117/

    こちらのブログへのコメントはLivedoorに転載しますが、定期的にチェックしないので相当遅くなることもあります。

ブログナビ

P&M_Blog
 トップページ
  ├ 月別アーカイブ
  |  └ --年--月
  ├ カテゴリー
  |  └ スポンサー広告
  └ スポンサーサイト
P&M_Blog
 トップページ
  ├ 月別アーカイブ
  |  └ 2009年09月
  ├ カテゴリー
  |  └ SF
  └ コードウェイナー・スミス シェイヨルという名の星

カレンダー

09 | 2017/10 | 11
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31 - - - -

月別アーカイブ

カウンター

ブログ内検索

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。