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高橋しん トムソーヤ


 マーク・トゥエインの名作「トム・ソーヤの冒険」を高橋しんがアレンジしてコミック化した作品。
 ANDREさんに勧められて手に取ってみた。

 トムはタロという14歳の少年に、ベッキーはハナというタロの同級生の女の子に、そしてハックルベリーは美大生のハルに置き換わっている。この作品は大学でもやるとこがなく、なんとなく空虚な日々を送っていたハルの視点で、タロとともに事件に巻き込まれて行くさまを、ストーリーそのものは結構原作に忠実な展開で描いている。だが女性であるハルを物語の中心に置くことで、この作家らしい独特の味わいが醸し出されていく。

 高橋しんという人の語り口はとても独特だ。絵の雰囲気が非常に不安定で、頭身がころころ変わるし、同じキャラクターでも全く違う顔で描かれる事さえある。だから慣れない人にはとても読みにくいだろうと思う。逆にある程度慣れてくるとこの作家独自のペースにすっかりはまってしまう。
 絵が不安定、と言ったが、要するに絶対的な画力という点ではかなり弱い作家だとも思う。最近この人の作品を何本か読んだが、「最終兵器彼女」のちせとシュウジ、「きみのカケラ」のイコロとシロといった主人公たちの顔がはっきり思い出せない。しかし、この顔が思い浮かばない、という一点こそが、マンガの作家であるこの作家の最高の強みなのだ。彼らの主人公は、顔が印象に残らないがために匿名性と普遍性を併せ持つのである。一般にはマンガというメディアは、キャラクターがはじめにあって、そこから世界が構築されている。例えば「ゴルゴ13」「ジョジョの不思議な冒険」「Dr.スランプ」「北斗の拳」…一昔前のマンガというのは必ず強烈なキャラクターがあってそこから世界が出来上がっていたものだ。ところが、最近はそういうのははやらなくなってきたようだ。そんな中でも特にこの作家の作品は、キャラクターのありようがとても薄い。逆に言えば大げさなところが全くなく、とてもリアルな存在としてキャラクターが配されている。
だからマンガ作品でありながら、活字の作品を読むのにちかい感情移入が可能になる。

 この作品、長崎県が舞台なのだが長崎市近郊の田舎町という設定だ。「八つ釜」という山の洞窟が出てくるのだが、これは西海市西海町の「七つ釜鍾乳洞」がモデルだろう。だが西海市には鉄道はない。ハルやタロたちが身を隠す島は軍艦島(端島)を思わせるシルエットだが、軍艦島は長崎市のずっと南にあり、とても泳いで行けるようなところではない。というわけで、この作品は具体的などこかの町を舞台にしたわけではなさそうである。方言はかなり正確だが、いくつか間違いもある。例えば95ページのタロのおばさんのセリフ「タロ!朝帰りなんてどがんつもりたい!」は「…どがんつもりね!」が正しい。こういう場合は語尾に「たい」は付かないのだ。あとタロのガールフレンド、ハナが徹頭徹尾標準語なのはちょっといただけない。こんな「田舎のかわいい子」の役回りのキャラこそ土地の言葉で話させるべきだと思うのだが。

 そういう言葉や、美しい風景描写とがあいまって、ノスタルジー溢れる夏の田舎のキラキラ輝く冒険が見事に一冊に収まった好編である。疲れた大人の読者に、ぜひ読んでもらいたい作品だ。
.15 2009 コミック comment2 trackback0

comment

ちょっとバタバタとしていて
お邪魔するのが遅くなってしまいました。
早速読んでいただけたんですね!
どうもありがとうございます。

ぱっと見、どこが「トム・ソーヤ」?という設定なんですが、
以外にも原作に忠実だというのがなかなか面白いですよね。

長崎のどのあたりが舞台のモチーフになっているのかなど
大体分かる感じなんですね。
方言を含め、そのあたりはどうもピンとこないので、
piaaさんのご指摘、とても興味深く拝見いたしました。

2009.07.24 00:52 | URL | ANDRE #- [edit]
実は原作「トム・ソーヤ」ちゃんと読んだ事ないんです。
映画かなんかで観ただけかも。
高橋しんのマンガはいいんですが、やや読みにくのが難点ですね。
うちの娘なんかも読みにくいって言ってます。

やはり地元の人間としてはどこの町がモデルなのか気になってしまいました。
どこでもなさそう、というのが結論です。
2009.07.24 22:35 | URL | piaa #- [edit]

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