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フランソワーズ・サガン 悲しみよ こんにちは


 今新潮社では、「海外名作新訳コレクション」と銘打って古典的名作の新訳を文庫で次々に出しているのだが、これはその中の一冊。長年親しまれてきた朝吹登水子氏の旧訳に変わってこの春発売された河野万里子氏による新訳である。

 17歳の少女セシルは、奔放な父のレイモンとその愛人エルザと三人で南仏の別荘へやってくる。そこに父のもう一人のガールフレンド、アンヌがやってくる。レイモンがアンヌとの結婚を考え始めたことで自由を失うことを危惧したセシルはある計画を思いつく…

 本の裏表紙の解説には、『20世紀文学が生んだ少女小説の聖典』とある。いや~、これはいわゆる『少女小説』などとくくってしまえるような作品ではない。これを書いた1954年、サガンは18歳だったそうで、その時代と書き手の年齢を考えると驚くべき作品である。実際この作品は発表当時大変なセンセーションを起こしたそうだが、さもありなん、と思う。だが現代の目から見ればそれほどとんでもない話というわけではなく、今流行のケータイ小説の方がずっと過激である。現代の読者にセンセーショナルさを感じさせなくなったこの作品の魅力は、文体自体の輝きに尽きるのだろう。

 私は旧訳を読んでいないので、今回の新訳がどう変わっているのかはわからないのだが、旧訳が50年ほど前のものだということを考えると、今回の新訳は必然的なのかもしれない。その河野万里子氏による新訳は非常に読みやすく、シャープな印象を受ける。この作品自体、セシルの語りで進行していくのだが、セシルの、若さゆえの残酷さが滲み出た文章になっていて、内容と文体が見事にシンクロしている。

 で、作品についてだが、セシルという少女は支離滅裂である。彼女がはっきり愛しているのは父(というよりも父とふたりの自由な生活)だけである。恋人のシリルへの気持ちさえ曖昧だし、アンヌに対する気持ちになるとこれはもう愛憎が入り混じった感情である。だが、その支離滅裂ぶりこそ実は非常にリアルなのだ。
 男性は少女に対して幻想を持っている事が多い。これはロリコンの多い日本人だけではない。例えば映画の『レオン』。これは殺し屋が仏心を出して少女を助け、やがてその少女のために命を落とすといった筋立ての作品だが、ここには『少女の純粋な愛情が汚れた男を救う』みたいな日本のバカなアニメによく見られるものとさほど変わらない価値観が埋め込まれている。しかし、実際の少女たちはそんなに単純ではない。彼女らが生身の人間である以上、自分の思うとおりにならない事に苛立ったり、衝動的に行動してみたりするのが当然なのだ。この「悲しみよこんにちわ」や「ロリータ」が衝撃的だったのは、そういう残酷で支離滅裂な行動をとる少女をリアルに描ききる事で、世の男達が持つ彼女らに対する幻想を真っ向から否定した点にあったのではないだろうか。
 だからこの「悲しみよこんにちわ」を支持している読者はほとんどが女性なのではないだろうか、とも思う。

 …それにしても、なんでレイモンみたいなロクデナシがこんなにモテるのだろう。幻想を持っているのは男だけではないのかもしれない。
.04 2009 フランス文学 comment0 trackback0

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