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ル・クレジオ 黄金の魚


 昨年(2008年)のノーベル文学賞受賞作家、ジャン=マリ・ギュスターヴ・ル・クレジオ。ぜひなにか読もうと思っていたのだが、これは彼の1997年発表の作品。図書館で借りてきた。

 小さいときに人さらいにあってモロッコに売られてきた黒人の少女ライラ。運命は彼女をパリへ、アメリカへと押し流していく。黒人女性がたどる変転と旅の半生を描く作品…ストーリーというともう本当にこの程度しか書きようがない。
 このストーリーともいえないストーリーを、ライラ自身の書いた手記の形で読ませるこの作品は、放浪の人生の中にあっても常に自分をしっかり持って奢らず、絶望せずしなやかに生きる女性を描いて独特の透明感を持つ。その反面常にライラの視点で描かれるエピソードはどうしても断片的で物足りない印象を受ける。ここは読者によって感じ方が大きく分かれると思うのだが、ストーリーも、その中に挟まれるエピソードもどれも不完全燃焼な感じで全体にとりとめなさが目立つ作品のように思えてしまった。全編を通じてライラの感情がはっきり描かれないところも苦手だ。物語の推移からしてライラは誰かを愛したり憎んだりしたはずなのに、そういう感情についてははじめから書き手が「書かない」と決めているような文章で、そのあたりがどうしても好きになれなかった。

 同じようにアフリカから出てきて頑張る黒人女性を主人公にした作品だと、以前セネガル出身の女性作家ファトゥ・ディオムの「太平洋の海草のように」を読んだ。これは瑞々しい佳作だったが、この「太平洋…」と「黄金の魚」では書かれた時期もわずか5年位しか違わないのに、「黄金の魚」の方がはるかに古臭く感じてしまう。同じパリに住んでいながらこの二人のヒロインの観るパリの色のなんと違うことか。「黄金の魚」に描かれるパリの薄暗さは「椿姫」のパリとさして違いがない。一方、「太平洋…」が描くパリは今私達が(映画ではなく)ニュース映像で見るパリそのものだった。
 どうしてそういうことになるのか。それはル・クレジオが白人男性で、ファトゥ・ディオムが黒人女性だからだと言っていいのだろうか。

 この作品は私のメンタリティにはなじまなかった。とはいえラストの輝きなど感動的な部分もあり、ル・クレジオという作家、きっと他の作品で本領を発揮しているのだろう。でもどれを読めばいいのかな。「砂漠」あたりだろうか。
.05 2009 フランス文学 comment4 trackback0

comment

ル・クレジオはワタシも何か読んでみたいなと思いつつ、何を読んだらいいのか判然としなくて手を出せずにいます。
途中で作風が変わったと、どこかで読んだ気がするし。
文庫の「海を見たことがなかった少年」も本屋さんで見かけないんですよね。
2009.05.06 01:00 | URL | vogel #9JN9NMwM [edit]
vogelさんこんばんわ。

私も何を読むべきかさっぱりわからず、図書館で見つけた何冊かの中から適当に選んできましたが、どうやら選択ミスだったようです。
たしかに「海を見たことが…」も見かけませんね。河出から「大洪水」が文庫で出てますが、文庫なのにまさかの1365円!いくらなんでも高すぎですよね。というわけでまたそのうちもう一作は図書館で借りようと思います。
2009.05.06 23:11 | URL | piaa #- [edit]
こんばんは。
クレジオは、本当につかみにくい作家ですよね。
私はデビュー作の「調書」を読みましたが、世界が剥がれ落ちていくような読書で、ものすごく時間がかかった思い出があります。

やはり一作ではよくわからない作家だったので、次は「大洪水」か「砂漠」を読んでみようかな、と思っています。
「砂漠」の表紙が、マグナムの写真家によるところがちょっと気になっています。
2009.05.07 21:41 | URL | ふくろう男 #- [edit]
ふくろう男さん、こんばんわ。
ル・クレジオ、ほんとになに読んだらいいんでしょうね。これ一作では正直「え~これってノーベル賞作家なの??」って感じでした。

>「大洪水」か「砂漠」
やっぱそのへんでしょうか。
2009.05.08 00:29 | URL | piaa #- [edit]

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