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光瀬龍 百億の昼と千億の夜


 昨年再発されていて、ぜひ読みたかったのだがなかなか本屋さんに置いてなくて、よその町に行ったときにやっと見つけた。光瀬龍は6~70年代を代表する日本SF界の重鎮。これはその光瀬の代表作である。

 アトランティスの失われた文明について調べるうちに、彼らの滅んだ日の、アトランティス執政官オリオナエの記憶を得たプラトン。
 梵天王から天空が破滅に瀕していると聞き、梵天王と対立する阿修羅王と会うシッタータ。
 滅びを加速するために「救世主」として現れたナザレのイエス。
 これらの後ろで糸を引く「惑星開発委員会」の存在。そしてはるかな未来、廃墟となったトーキョー・シティでシッタータは目覚める。

 …と、極めてストーリーを述べるのが難しいこの作品は、1966年に書かれた宗教的・哲学的で壮大な作品だ。前半はプラトン、シッタータ、イエスのそれぞれの時代が描かれ、それぞれの現象に惑星開発委員会という謎の組織が絡んでいることを示す。彼らは文明世界にわざと綻びを作り、滅びを仕組んでいるかのように見える。阿修羅王はそれを感じ取り、強大な力を持つ惑星開発委員会に戦いを挑んでいるのだ。
 この「惑星開発委員会」は仏教でいう、56億7000万年後の末法の世に現れて救いをもたらすとされる弥勒や、キリスト教でいう「最後の審判」をもたらす神を使って文明をコントロールする存在として描かれている。”シ”とか「新星雲紀」などの謎めいた言葉がこの作品の独特な雰囲気を盛り上げる。
 後半は、トーキョー・シティに蘇ったシッタータ、あしゅらおう、おりおなえがナザレのイエスの妨害を受けながらも「惑星開発委員会」の真実に迫ろうとする。ZEN-ZENという街にたどり着いた彼らの前にはデータ化された市民の偽りの理想社会が提示される。このあたりはかなり冷やっこい東欧SF的またはディック的で、書かれた時代を考えればとてもいいアイディアなのだが、惜しむらくはシッタータたちがそれをただ外から見ているだけで、自分達の認識を疑うようなシーンがないためにここで感じさせうる恐怖感が薄い物になってしまった。ここは残念。
 かなり難解な作品と言うこともできる。ラストシーンまで読み進んでも、はっきり言って何も解決しない。あしゅらおうが立ち尽くすその無常観こそこの作品の到達点なのだろうか。

 全体には滅びのイメージが強烈に美しく、冒頭とラストの「寄せては返し…」のリフレインが強烈な印象を残す。1966年にすでに日本SFはこんなに強烈な傑作を持っていたという事が素晴らしい。多少の道具立ての古臭さはあるものの、その哲学的な内容は今読んでも全く色あせていない。

 実はこの作品は1977年に萩尾望都の手によってコミック化されている。こちらの方でご存知の方も多いのではないだろうか。私もそっちから入った口である。コミックと原作は多少の異同はあるものの、これは極めてよくできたコミック化だった。こちらもぜひ。
.21 2009 SF comment(-) trackback(-)

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