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セルバンテス ドン・キホーテ(後編)


 再び旅に出るドン・キホーテとサンチョ・パンサの冒険を描いた、「前編」から約10年後の1615年に刊行された「後編」。
 この「後編」の成立の裏には「前編」の大ヒットを受けて現れたアベリャネーダという別の作家による「続編」の存在がある。この「続編」の存在に憤慨したセルバンテスが、正しい「続編」として発表したのがこの「後編」なのである。

 ところが、驚くべき事には、この作中でもすでにドン・キホーテの物語はすっかり有名になっているという事だ。自分達の物語がベストセラーになっていて驚いたり、贋作の「続編」に立腹してみたり、果ては「前編」での多少矛盾のある記述に対する読者の疑問点に答えたりまでする。
 また、作者自身が「前編」で直接は関係ない物語(「藪から蛇を出した男」など)が挿入されたりして散漫だった事を反省して「今回はそういうことがないようにする」と宣言したりと、どこまでも型破りだ。
 さらには「前編」の読者でドン・キホーテとサンチョ・パンサにぜひ会いたいと思っていた公爵夫妻が登場、ドン・キホーテの妄想に話をあわせる遊びに興じるものだから一層物語はややこしく面白くなって行く。
 そういう物語の構造自体も非常に現代的だし、登場人物の行動を支える心のあり方や描き方がこれまた非常に現代的で、400年も前の小説でありながら全く古さを感じさせない。

 さてこの作品の解釈だが、wikipediaによると『出版された当初は滑稽本として高い評価を受けており、ドン・キホーテのキャラクターも道化としてのイメージで受けとられた。
 18世紀には、『ドン・キホーテ』から、騎士道に代表される古い悪習を諷刺という形で打倒するという道徳観や批判精神を読み取っている。
 19世紀の解釈はロマン主義によるもので、ドストエフスキーは『ドン・キホーテ』を「人間の魂の最も深い、最も不思議な一面が、人の心の洞察者である偉大な詩人によって、ここに見事にえぐり出されている」「人類の天才によって作られたあらゆる書物の中で、最も偉大で最ももの悲しいこの書物」と評した。19世紀はこのような、ドン・キホーテの感情を尊重した悲劇的な解釈が主流になったが、現在ではこの見方もP・E・ラッセルなどによって批判されている。』
(一部抜粋)とある。まあこのように多様な解釈ができる(言い方を変えると『どうとでも取れる』)作品である事は間違いない。しかしその本質は諧謔である、と私は思う。「物悲しい」とは言えなくもないが、決してそれがこの作品の本質とは言えないと思う。私が思うに、作者はとにかくリアルでありながら度外れた、滑稽で面白いものを書こうとして努力したのだと思う。そしてその試みは大成功を収め、400年もの時を経ながらもこの小説の巧みさとアイディアは我々現代人を感服させ、笑わせるのだ。

 ラストはちょっと唐突な気がしないでもないが、セルバンテスは作中でも贋作をことあるごとに貶していて、よほど贋作が出回ったのが気に入らなかったのだろう。ちょっと寂しい気もするが、これ以上の贋作が書かれることを嫌ってのこのラストなのだ。

 とにかく面白かった。古典だからと尻込みして読んでいない人がいたら、こんなに面白い作品を敬遠しているなんてもったいない、と言いたい。機会があればぜひ読んでほしい。
.28 2009 その他欧州文学 comment0 trackback0

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