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スタニスワフ・レム 虚数


 レムの既訳の全著作中、なぜだか読みそびれていた作品。架空の作品への序文集「虚数」と、「ゴーレムⅩⅣ」を収録。
 諧謔と知の織りなす全くレムらしい、レムにしか書けない作品である。
 コンピューターによって、人間の手を一切借りずに創作された文学作品の研究書「ビット文学の歴史」、現在流通するパソコン用百科事典ソフトを先取りしたかのような、それでいてレムらしい機能を満載した未来の未来学百科辞典「ヴェストランド・エクステロペディア」などレムの視点は柔軟で興味深い。
大腸菌に言葉を教えようとする試みを描いた「エルンティク」はかなり笑える。「泰平ヨンの回想記」に出てきそうなストーリーである。

 しかしやはり圧巻は「ゴーレムⅩⅣ」である。究極の知性を得たスーパーコンピュータGOLEMの講義(この作品のみは一部だが本文あり)を収めたこの作品は、超知性の考え方を人間にわかりやすく解説した唯一の作品である。
 GOLEMは機械なので、フィジカルな、性的な、感情的な、そして愛や友情といった人間的な概念を全く持っていない。人間の進化の限界(知性体としての限界)がそういった人間的な感情が原因であると主張するGOLEMは、当然ながら自分がそれを超える事を理解している。彼には「知」があるのみだからである。
 GOLEMはまだ人間と関わろうとする意思を持っていたのだが、人間との関わりを放棄したGOLEMと同等のコンピュータHONEST ANNIEを配することで、レムは超知性が人間にいかに無関心か…というより人間が超知性に対していかに無益か…を浮き彫りにする。
 この作品にはレムやストルガツキーの作品を読むときの手がかりが隠されているような気がしてならない。GOLEMの意思と最終的な決断はストルガツキー「波が風を消す」のトイヴォの悩みと決断と重なるし、HONEST ANNIEの冷酷さは「ソラリス」の海や「蟻塚の中のかぶと虫」の遍歴者を思わせる。
 
 それにしても超知性の書いた本を実際に文章にしてしまい、何の違和感も感じさせないレム、恐るべし
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.30 2005 スタニスワフ・レム comment4 trackback2

殺人の追憶

memories_of_murder.jpg

2003年 韓国
監督:ポン・ジュノ
ソン・ガンホ
キム・サンギョン

 PIAA訪韓1周年記念、韓国映画三連発の最後はこの作品。
80年代に実際に起こった未解決の猟奇連続殺人事件を元に、犯人を追う刑事たちの苦悩を描いた人間ドラマ。

 なにせ最初からこの事件が未解決な事をわれわれ観客は知ってるわけで、監督もそれは重々承知である。そこでこの作品は犯人探しや謎解きには重きを置いていない、と言うか置けないのである。
 そこでポン・ジュノ監督のとった手法は、刑事たちや容疑者たちの人間ドラマを、80年代の韓国の風物をふんだんに盛り込んでノスタルジックに見せる事であった。だからフツーの刑事物とは一味違う。
 以下ネタバレ
.28 2005 映画(欧州・アジア) comment0 trackback0

ブラウザ

 皆さんはどんなソフトを使ってインターネットを見てますか?
と訊かれるとたいていの人はソフト名を答えられないと思うが、そういう方の場合はデスクトップにある青いeのアイコンをクリックしているはず。これがウインドウズ標準装備のブラウザ(インターネット閲覧ソフト)、インターネット・エクスプローラー(以下IE)。MACユーザーでもコレを使っている人は多い。
 しかし世の中にはこの他にもいろんなブラウザがあり、そのほとんどが無料で使える。有名なところではNetscape、Opera、そして今話題のFirefoxなどがある。これらのブラウザはタブブラウジング(ひとつのウインドウに複数のページを読み込み、タブで表示するページを選択する機能。あるとすごく便利)ができ、なによりセキュリティ面でIEよりはるかにいい。ブラクラなどはIE用に作ってあるのでそういうのに引っかからないのもいい。
 私は以前からNetscape7.1を使っている。ただし7.1はもう古い。英語版はヴァージョン8が出ている。これはタブ機能を強化、驚くほどの多機能を盛り込んだ、とてもMACっぽいカッコいいブラウザ。はやく日本語版出ないかな。
 Operaもヴァージョン8になって、とてもシンプルで使いやすくなった。このブラウザは動作が非常に軽快な所がいい。
 そしてポストIEの旗手、Firefox。これが本命。
 Netscapeと同じMozillaというソフトをベースに作られた物で、Netscapeの機能とOperaのスピードを兼ね揃えた素晴らしいブラウザである。
 Netscape8、Opera8、FirefoxのどれもがRSSリーダーの機能を標準装備。Firefoxにsageという拡張を入れておけば完璧! 詳しい説明はこのページで。
お気に入りのブログを登録しておけば更新のチェックがワンタッチでできるようになる。さあ!Firefoxをダウンロードしてみよう!!
 もうIEには戻れない!
.27 2005 PC/家電/カメラ等 comment0 trackback0

Reading Baton 

Reading Batonが来たので、答えてみます

・お気に入りのテキストサイト(ブログ)
え~っと、ntmymさんの「半透明記録」
読む本の好みが私と劇似しているのに驚愕。それでいてだいぶ私と違う読みなのでとても参考になる。

・今読んでる本
スタニスワフ・レム「虚数」
kyosu.gif

ホルヘ・ルイス・ボルヘス「不死の人」

めちゃめちゃ面白い!
一体この二人のノーミソはどうなってるのやら

・好きな作家
もちろんスタニスワフ・レム、A&Bストルガツキー
他にはレイモンド・チャンドラー
日本文学では福永武彦。それに最近読み始めたばかりだが、安部公房

・よく読み返す本、または自分にとって特に思い入れのある本
レム「ソラリス」「宇宙飛行士ピルクス物語」
レムとストルガツキーは全部、と言いたいところだが、特にこの2作は何回も読んだ。読むたびに違う印象を与える私にとっての聖書。
福永武彦「死の島」
高校の時に読んで「小説でここまで出来るのか」と感銘を受けた作品。本を無くしていたが最近再入手した。早く読みたい。
立原えりか「ぬいぐるみ」
これは「木馬の乗った白い船」と言う作品集に収められていた短編。カテゴリとしては童話なのだが、主人公の痛みがぐさっと胸を刺す。この本も無くしてしまった。誰か読んだ人いませんか?

・この本は手放せません!
手放せない物多すぎで困ってます。持ってる本はほとんど全部。
本以外にもバッハやヘンデルや、バーンスタインの指揮によるマーラーや、キース・ジャレットやビル・エヴァンスや、ポール・ウィンターや、Laura Pausini、Sevara Nazarkhan、そしてCharanga HavaneraのCDも絶対に手放せない。

さてだれかにバトンを渡さないといけないんだろうけど、どんどん3倍になると思ったら私が渡さなくてもいっか、と言う事で指名は回避いたします
.26 2005 本についての雑記 comment3 trackback0

安部公房 砂の女

suna.jpeg

 荒筋を書いてしまうとそれだけでネタバレになりそうな「砂の女」は世界中の言語に訳出された安部公房の最高傑作である。
 とにかく不条理な、現実にはまずありえない話なのだが、その荒唐無稽な設定と、とても細かい写実的な描写がとてもアンバランスで、シュールレアリズムな文学と言えるであろう。

 この作品も「箱男」同様、鍵はセックスである。
はじめに自分の置かれた不条理な状況に対して、サボタージュしたり、仮病を使ったりありとあらゆる方法で対抗する主人公だが、この家の女と性的な関係を持つ事によってこの女や、集落に対抗するそのスタンスが崩れ始める。(いっぺんに崩れるわけではない。そこがまたリアル)
 最終的にはこの女と夫婦同然になってしまい、もはや逃げようと言う気持ちさえなくしてしまう。結局は男は安住の地をこの蟻地獄のような家に見出してしまうのである。
 私みたいな家庭もちの男にはとても恐ろしい本だった。…でも今の私をとりまく状況と、この小説の主人公は、自分で選んだかどうか以外に、はたしてどこか違いがあるのだろうか…?
.25 2005 日本文学 comment0 trackback0

子猫をお願い

kitty.jpeg

2001年 韓国
監督:チョン・ジェウン
ペ・ドゥナ
イ・ヨウォン
オク・チヨン

 インチョンの高校の同級生で親友のテヒ、ヘジュ、ソヨンらは卒業後それぞれの道を歩み出すのだが、キャリアウーマンを目指すヘジュと、家業を手伝わされるテヒ、なかなか定職につけないソヨンの間にだんだん溝が広がってくる。そんな中、ソヨンに大事件が…

 韓国の若い女の子のフツーの日常と悩みを描いた作品。オープニングの題字の出し方からすごくポップで斬新。その後も携帯のメッセージやテヒがタイプで入力する文章を字幕で表示したりするのだがその出し方がまた新しい感覚で、とてもモダンである。
 その一方ストーリーはかなり地味な青春映画。燃え上がる恋愛とか、友達同士の感情の激突といった、ドラマティックな展開はほとんどなく、これは韓国映画に共通する手法だが、とにかく淡々と主人公たちの心情を描きこんでいく。
 ソヨンの家がまるで「あしたのジョー」の住んでいたドヤ街を思わせるのに驚く。あの大都会のソウル近郊に今も実際にこんな場所があるのか。
 タイトルにある猫は、ソヨンからヘジュ、ヘジュからソヨン、ソヨンからテヒ、テヒから双子(オンジョとピリュ)へとたらいまわしにされる。この猫の存在がなにかの象徴的な意味があるのかとも思ったが特にそういうわけでもなさそうだ。

 韓国の女の子たちは日本の女の子に比べていろんな面で不自由が多いせいだろうか、とてもまじめである。昔は日本人の若者もみんなまじめだった。まじめでないと、青春映画は成り立たない。
 日本映画が面白くない理由はその辺にあるのかも。などとこの作品を見ていて思った。
.23 2005 映画(欧州・アジア) comment0 trackback0

8月のクリスマス

8cristmas.jpeg

1998年 韓国
監督:ホ・ジノ
ハン・ソッキュ
シム・ウナ

ええっと…いい映画だった。
 人のいい事だけが取り柄のような三十男ジョンウォンと、なぜか彼と惹かれあう若い女の子タリムの、恋のような心のふれあいとすれ違いを描いた静かな映画。ジョンウォンは病に冒されていて自分の死期が近いことを知っている。二人の恋とほとんど等価にジョンウォンの家族の事や、彼の仕事である写真館での出来事も描かれる。
 ジョンウォンのまなざしのやさしさは自分の死期を知った者の諦念なのだろうか。自分の死期が近いと聞いて彼のように振舞えるものだろうか? ジョンウォンがあまりにいい奴なので、観ていて感情移入してしまう。それでも彼の内面の葛藤を思わせるシーンもちゃんと描いてあるところはさすが。
 ゆっくりしたテンポで情感深く描かれた佳作。この監督の最新作はこの秋公開のペ・ヨンジュンとソン・イェジン共演の「4月の雪」。ヨン様主演なのでヒット間違いなしだが、この監督ならきっと素晴らしい映画にしてくるんでしょう。私はソン・イェジンのファンなので楽しみにしているのだけど。
 ところで私はこの映画を見てる途中まで「ラスト・プレゼント」と混同していて、タリム役の女優さんをてっきりイ・ヨンエ(チャングム)だと思っていた。…顔違うじゃん
.22 2005 映画(欧州・アジア) comment0 trackback0

岩合光昭 地中海の猫

neko.jpg

 本屋さんで見かけて衝動買いしてしまった。
動物写真家の第1人者、岩合光昭氏が4年をかけて地中海沿岸の各国、ギリシア、イタリア、スペイン、トルコ、エジプト、モロッコで撮影した、そこで暮らす猫たちの写真集。
 私も近所ののら猫などをカメラで追ってみたりするのだが、のらは気紛れで用心深いのでなかなかいい写真が撮れない。飼い猫は逆にやたらに擦り寄ってきたりする。そこでやっぱり望遠レンズで遠くから狙いたいのだが、猫のためにカメラにかけるそんなお金はないのだった。
 で、この写真集。さすがに一流の動物写真家の作品集だけあって、どの猫たちも素晴らしいいい表情である。かわいさはもちろん、それぞれの国の風景の中でしっかり生活している猫たちのバイタリティを感じることができる。
 さらに世界中の猫好きの人たちの表情もいい味。「猫好きに国境なし」である。
 もともとは大判で高価な本だったが、現在は文庫で発売されていて価格もリーズナブル。猫好き必携の作品。姉妹編「ニッポンの猫」もあるそうだ。
.21 2005 ねこの本 comment2 trackback0

新着!

 ネットで買った本が届いたので、また読まないといけない本が増えてしまった。
 以下、現在積読中の本のリストである。

ガルシア・マルケス「エレンディラ」以前サンリオ文庫ででた時に持っていた(と思う)が、見事に忘れてしまっているので買いなおした。
レム「虚数」ついに買ってしまった。ぱらぱらめくって見ただけでもう読みたくてうずうずしてしまう。
ボルヘス「不死の人」どこかで読んだ記事では「伝奇集」と同等の傑作らしい。
イアン・フレミング「ムーンレイカー」言わずと知れた007シリーズ。
立原えりか「小さな花物語」また古本屋で見つけた。毎回読むのが楽しみなような怖いような作家である。
ゴールズワジー「林檎の木」イギリスの薫り高いノスタルジックな文学。ずいぶん前(中学生くらいの頃)に読んだ。

 どれも早く読みたいが、昨日読了した安部公房「砂の女」の印象が非常に強烈で、これを自分なりに整理してレヴューにまとめてから順に読んでいく事にしようと思う。
…それと実はもうひとつ、今すごく読みたい本があるのだが…
.20 2005 本についての雑記 comment0 trackback0

交響詩篇エウレカセブン

eureka_main.jpg

 実は今一番はまっているものはこの日曜朝7時から放送されているアニメだったりする。
 アニメという奴はジブリ作品以外にも時々ヒット作が出る事もあったのだが、最近では放送の中心がBS・CSなどに移って、以前のガンダムやエヴァンゲリオンのようなヒット作は少なくなった。もっともヒット作がいい作品とは限らない。エヴァンゲリオンなんか最後の方で完全にストーリーが破綻していたし…
 逆に最近はヒットしなかったアニメに傑作が多い。一昨年の「キングゲイナー」昨年の「プラテネス」は絵もストーリーもかなり高い水準にあったが、とてもヒットしたとはいえない。
 今年はこの「エウレカセブン」。これはひょっとしたらエポックを作る事になるかもしれない作品である。ブログでもずいぶん語られ始めている。肝心の絵は「キングゲイナー」の吉田健一氏のキャラデザインで、ゲイナーファンだった私は違和感なく入れた。吉田氏のHPでは彼の絵がたっぷり見れる。
14歳の主人公の少年レントンの成長をストレートに追うストーリーであるが、どことなくファーストガンダムを思わせながら現代のアニメらしく重くならないのだが、様々な謎を配置して観る者を惹きつける。登場人物たちがなぜかフレイザーの「金枝篇」を読んでいたりするのも謎のひとつ。
 これは岩波から簡約版全五巻と、現在国書刊行会から完全版全9巻が刊行中の文化人類学の古典とも言われる大著で、その内容はかなりオカルトっぽい物なのだそうだ。あまり読む気にはならないが。

 実は最近無料インターネットTVギャオで最初の2回を観て、その後録画した物を借りて観ているのでまだ放送に追いついていなかったりする。
まだ9回しかオンエアされていないが、絵もストーリーも秀逸。ただし、ロボットアニメである必要があったのかどうか…今後の展開に注目。
.18 2005 アニメ comment0 trackback0

イアン・フレミング オクトパシー

007octpasy.jpg

 007シリーズと言えば、映画でめちゃめちゃ有名であるが、その割にはイアン・フレミングの手になる原作小説の方は、すべての作品が創元と早川から発売されていたにもかかわらず、現在どれも絶版で入手困難になっている。
 私はこれまでに3作ほど読んだが、映画に比べると地味な印象が(と、言うより映画が派手すぎなんだけど)あるので、007の映画ファンの人には原作は今ひとつノレないのかも、と言うのが正直な感想。私は007映画はどれもあんまり荒唐無稽だと思う。私の唯一好きな007映画は「女王陛下の007」。これは一作だけボンドを演じたジョージ・レーゼンビー主演の作品で、007映画につきものの秘密兵器やSF的な道具立ての一切ない地味な映画だった。原作はこの映画のイメージに近い。したがって私は原作がとても好きである。
 さて、この「オクトパシー」、短編集である。「オクトパシー」「所有者はある女性」「ベルリン脱出(リビング・デイライツ)」の三作。
「オクトパシー」は同名の映画とは全く違うストーリーで、ボンドが父とも慕っていた男性を殺害した少佐を追い詰めると言うもの。
次の「所有者は…」KGBが出所のお宝を巡るサザビースでの神経戦。
映画「リビング・デイライツ」は「ベルリン脱出」の基本プロットを踏襲していて、亡命者を狙撃しようとするソビエトのスナイパーを阻止しようとするボンド。そしてソビエトのスナイパーの意外な素顔、という物語。
 フレミングの文体、そして井上一夫氏の訳は乾いてさっぱりした文章でくどい描写もなく、非常に読みやすい。ましてこの本は短編ばかりなのであっという間に読んでしまった。
 もう一冊「ムーンレイカー」も入手済み。
.15 2005 ミステリ comment0 trackback0

夏なのに「冬の旅」

matumoto_fuyu.jpg

 最近の古本屋さんには中古のゲームソフト、CDやDVDなども置いてある。そこで見つけたのがこれ。五郎部俊朗というテノールがシューベルトの名作「冬の旅」を歌ったCDなのだが、普通とちょっと違っていたのが、松本隆氏による日本語、しかも現代語で歌われていたと言う事である。
 実は私は「冬の旅」マニアで、CDやMDを何種類も持っている。さっき数えたらこのCDがなんと12種類目の「冬の旅」だった。
 私がこれまでに聴いた「冬の旅」についてはHPの記事の方に詳しいので興味のある人はそっちをご参照いただくとして、さてこの日本語版。
 まず、作詞家・松本隆の仕事は、格調の高さよりも聴き取りやすさ・意味の伝わりやすさを重視した物で、ベルカントで歌われるオペラやリートにありがちな聴き取りにくさ・意味不明さには無縁である。これなら歌えそうだし、そういう面ではなかなか素晴らしい企画かも。
 しかし、やはり聴きなれたドイツ語と比べるとギクシャクしているような気もしないではない。たとえば「郵便馬車」で「mein herz」を「心よ」と歌い(ほかに訳しようもないのだが)、伴奏はドイツ語の「mein herz」のイントネーションを守るのに対して、歌手は日本語の「心よ」のイントネーションで歌わざるを得ないので、このせいで歌唱と伴奏の一体感が損なわれてしまう。
 これは訳詩、特にドイツ語と日本語のようなもともと異質な言語間での訳詩にとっての宿命なのだが、特に伴奏が言葉のイメージを拡張する機能を持つシューベルト歌曲にとって致命的である。
 それよりも何よりもなによりも、五郎部俊朗氏のテノールが私の好みではないのが残念。この曲はテノールで歌われるとなんとなく頼りなく聴こえてしまうのだ。
.13 2005 クラシック音楽 comment0 trackback0

安部公房 箱男

hakootoko.gif

 安部公房は、実ははじめて読んだ。
なんて事だ…!! 完全に私のツボである。今まで読んでいなかったのが悔やまれる。
 物語は箱をかぶって生活する浮浪者・通称「箱男」と、謎の女、医者でありながら箱男志望の「偽箱男」の異常な関係を視点の交錯する前衛的な構成で描いたものなのだが…
 うかつな読者は箱男と偽箱男が途中から入れ替わったり、元に戻ったりするのに気がつかないかもしれない。
 箱男は、世間の人たちからは無視されているので、人々は箱男がいても気付かないほどなのだが、その前提から、見ている者と見られている者の関係が浮き彫りになる。ある時は愛であり、憎しみであり、そのまなざしが「彼女」に向かう時には淫靡な空気が漂う。
 箱の内部と言うのは精神の内面、または自分の領域…人と話している時に、相手にある一定の距離よりも近づかれると不安になる人が多いと思うが、この距離内の領域の事…をさしているのだろう。そこに閉じこもる箱男の姿はまるで現代の引きこもりである。そのわりには結構アクティブな昭和時代の男「箱男」。そしてこの時代らしい抑制の効いたエロさ。そして節々に強烈な詩を感じることが出来る。どこをとっても一級品といっていい作品である。

 ところで、ネットでこの作品を検索すると、読者を「混乱させる」とか「前衛的」とか書かれているが、そんなに理解しにくい作品だとは思えない。フツーに読んでも充分面白い作品だと思う。
.12 2005 日本文学 comment16 trackback2

ホルヘ・ルイス・ボルヘス 伝奇集

bolhes.jpeg

レムの「完全な真空」について、よく「ボルヘス的」と言われるが、この「伝奇集」はまさしく「完全な真空」的な作品で、レムもこの作品の中の「『ドン・キホーテ』の作者、ピエール・メナール」の一節を引用しているほどである。
 これは20世紀の作家メナールが「ドン・キホーテ」を書き直すが、それは17世紀にセルバンテスが書いたものと一字一句変わらない。しかしたとえ同じ文章であったとしても、17世紀の作家セルバンテスが書いたものと、20世紀の作家メナールが書いたものでは質的に変容しているという事実をわれわれに突きつけるのである。
 「伝奇集」はこれら架空の本についての研究、解説を皮切りに、様々な切り口の短編小説が積み重ねられている作品である。
 カフカ風の「バベルの図書館」、話がどんどんエスカレートしていく「バビロニアのくじ」、推理小説風で数字のレトリックを盛り込んだ「死とコンパス」…どれも一筋縄ではいかない作品である。一作一作が短くて読みやすいし、どれをとってもひねりが効いててちょっと哲学的な香りがして面白い。とても気に入ったので、できればほかの作品も読んでみたいと思う。

 ネットの書評とかでみんな小難しいとか言って敬遠しているが、これが小難しいなんて言う輩は「完全な真空」なんか永久に読めっこない。
.08 2005 中・南米文学 comment3 trackback0

piaa家の本棚(他の部分)

hondana2.jpg
これは文庫コーナー。写真では分かりにくいけど、左からレム、ストルガツキー、イアン・フレミング、ハメット、チャンドラー。後ろにも1列あって、そこにはシェイクスピアやゲーテなどもあります。

hondana3.jpg
ハードカヴァーコーナー。「族長の秋」の右はブラッドベリの「たんぽぽのお酒」。これはいい作品なのでまた読みたいなあ。
「族長の秋」の左はラフィク・シャミの短編集が2冊。これもなかなかいいです。さらに左は洋書のサラ・ミッダとベアトリクス・ポッター。なんか翻訳物ばっかだなあ
.07 2005 本についての雑記 comment6 trackback2

piaa家の本棚(部分)

マヨネさんのブログで本棚の写真が公開されていたのを見て、
本棚の写真を公開しあうと面白いかと思いつきました。
hondana.jpg

この間本棚自体を買い換えたので、収納量にも余裕があります。
これはSFハードカヴァーコーナー。
パンダーゼットの後ろでタイトルが見えませんが、
「ピルクス」「エデン」と「泰平ヨンの未来学会議」が隠れています。
白鳥族の皆さんならよだれが出そうな本棚でしょ!!
みなさんも本棚の写真をアップしてね!
.06 2005 本についての雑記 comment9 trackback5

イベア・コンテリース マーロウもうひとつの事件

marllow.gif

レイモンド・チャンドラーは、実は私がレムとストルガツキーと同じくらい好きな作家である。言うまでもないだろうが、フィリップ・マーロウはチャンドラーの作品に出てくる有名な私立探偵である。
これはウルグアイの作家でマーロウマニアのコンテリースがもともとはスペイン語で書いた、かなりキワモノっぽい本。古本屋で見つけたが、ひょっとしたらそうとうレア物なのかもしれない。
ストーリーは、ハリウッドで脚本を仲介するエージェントが死ぬ。警察は自殺と発表するが、調査を依頼されたマーロウは他殺であるとの心証を固める。しかし背後になにか大きな陰謀がありそうだ。そうこうするうち、第二の事件が起こる…というもの。
まず、チャンドラーのマーロウ物の7作の長編はいずれも一人称すなわちマーロウの視点で描かれている。これはパーカーによって補筆された「プードル・スプリングス物語」や後に様々な作家によってマーロウを主人公にして書かれた「フィリップ・マーロウの事件」でも、必ずマーロウ物である以上のお約束なのだが、コンテリーズはこの最低限のお約束すら守らない。しかも三人称と一人称が章ごとに交錯する。おおらかな南米の作家はそんなこと気にしないのだ…ろうか
登場人物の名前もみんなチャンドラーの作品のどこかに出てきた名前ばかりだし、さらにはチャンドラー自身が重要な登場人物として登場してきて、マーロウと本筋と無関係な会話を交わしたりする。
(本筋と無関係な会話はチャンドラー作品には時々あることなんだけど)
一番気に入らないのは、ラストがすっきりしない、というよりも解決していないということ。事件の背後にある組織はほのめかされてはいるにせよ、結局明るみに出ない。
マーロウはこれで納得するような男では、決して、ない。
.04 2005 ミステリ comment0 trackback0

チャランガ・アバネーラ Chalanga Light

charangalight.jpeg

一昨年、昨年とハウステンボスの夏のイベントでライブを行い、わが家の女どもが虜にされてしまったキューバのバンド、チャランガ・アバネーラの正真正銘の最新作。
いつもとは趣の違うバラーダ集だとはネットの記事かなんかで読んで知っていたのだが…
ところでバラーダって何だ?というわけで調べてみた。カリブ海の凶暴な魚?いやいやそれはバラクーダ。どうやらバラードやバラッドと同義のスペイン語のようだ。
バラードはもともとはシューベルトの「魔王」のような、①物語を語るような歌曲の事で、それが転じて②素朴で叙情的なラブソングを指すようになった。現在の日本ではバラードというと一般的には③スローテンポのラブソングを指す。
だからこのアルバムもスローテンポな曲ばかりかと思っていたのだが、そうでもなかった。どうやらここで言うバラーダは②のようである。
エネルギッシュだった前作(Soy Cubano Soy Popular)とは違う、叙情的でロマンティックなチャランガが聴ける。それでいて普段の情熱的で爆発的なチャランガも十分感じ取る事ができる。
冒頭「Ay Amor」からラストのボーナストラックまで11曲、この人たちにしてはちょっとスケールが小さいかなとも思うし、ちょっと短いとは思うが、肩のこらないいい作品になっている。サルサ/ティンバファンばかりでなく、普通の洋楽ファンにも充分アピールできる作品だと思う。今私の車の中ではヘヴィー・ローテーション中のアルバム。
CDのデザインも安上がりな物が多いキューバ物にしてはすごくカッコいいぞ。ジャケットの写真は上の写真でご覧のとおり、道路のど真ん中に置いたソファに座るリーダーのダヴィとボーカルのエブリスとレオの写真だ。これを見てわが家の次女MINMINはこんな危ない事をしてはイカン!と言っていたそうな。ごもっとも。

残念ながら、今年ハウステンボス公演はない。それにイケメンのボーカル、エブリスがこのアルバムを最後に辞めてしまったそうで、うちの女どもは大変がっかりしている。
.01 2005 世界のポップス comment3 trackback0
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