追悼 ジョー・ザヴィヌル

2007-09-12-Wed-23:52

 1970年代にジャズ・シーンの中心だったWeather Reportのリーダーでキーボード奏者のジョー・ザヴィヌル氏が9月11日に亡くなったそうだ。
 Weather Reportは私が若い頃に本当に入れ込んだ唯一のグループだった。まだワールド・ミュージックという言葉すらなかった時代に、アフリカなど第三世界のプリミティブなサウンド取り入れ、これとシンセサイザーによるエレクトリックサウンドを融合した大胆なサウンドは私にとって衝撃だった。私がワールド・ミュージックに興味を持ったのもこのグループの、ザヴィヌルの音楽があったからである。
 ザヴィヌルの音楽は、ただ音楽の好みにとどまらず、本の選び方から物の考え方に至るまで私に強い影響を与えていると思う。

 そのザヴィヌルが死んでしまった。ショックだ。

キース・ジャレット・トリオ/星影のステラ

2007-06-09-Sat-22:30

 キース・ジャレットがゲイリー・ピーコック、ジャック・ディジョネットとのトリオ(通称スタンダーズ)を結成したのが1983年。スタジオ録音の「Standards Vol.1」「Vol.2」(どちらも名盤)を発売している。これは1985年に録音された初のライヴアルバム。以降このグループの作品はすべてライヴ収録になる。

キース・ジャレット ケルン・コンサート

2007-01-24-Wed-13:21

 キース・ジャレットが1975年の今日、1月24日にドイツ、ケルンのオペラハウスで行ったソロ・コンサートのライヴ録音。
 キース・ジャレットのソロ・コンサートは全くの即興で演奏される事で有名。彼はその後も何度となくソロ・コンサートのライヴをレコードにしているが、その中でも頂点とされているのがこの「ケルン・コンサート」である。

ギル・エヴァンス/ギル・エヴァンスの個性と発展

2006-11-02-Thu-00:12

 ギル・エヴァンスは1912年生まれジャズ・オーケストラの編曲者・指揮者。マイルス・デイヴィスとコラボレーションした「スケッチ・オブ・スペイン」(1960)が有名。これはギルのオーケストラをバックにマイルスのミュート・トランペットで「アランフェス協奏曲」などを演奏した傑作である。私もこのアルバムではじめてギルの音楽に触れたのだった。

マイケル・ヘッジス Beyond Bondaries

2006-10-22-Sun-00:48

 ピアノをやめちゃったMINMINはギターをやると言って練習を始めたがやはり三日坊主だった。そんな彼女だが、耳はいい。ある日車でアル・ディメオラの「Race With Devil On Spanish Highway」を耳にすると「なんでこんなに早く弾けるの!?」と唖然としていた。
 私はディメオラやパコ・デ・ルシアが好きなのだが、そんなのばかり聴いていると、たまに高中正義なんか聴くとすっごく音が少なくて、さびしい音楽を聴いている気になってしまうのだった。

 さてマイケル・ヘッジスというギタリストのことはウインダム・ヒルのアーティストとして知ってはいた。ウインダム・ヒルといえばニューエイジ・ミュージックの代表的なレーベルで、ピアノのジョージ・ウィンストンが有名。確かにヘッジスの演奏にもウィンストンに通じるものがあるが、ウィンストンのピアノが技術的には普通だったのに比べ、ヘッジスのアコースティック・ギターのテクニックは驚異的なものであった。

 …というのが前知識としてはあったのだが、私は彼の演奏をちゃんと聴いたことがなくて、彼の代表作「Aerial Boundaries」を聴きたいと思ったのだが、現在国内盤はカタログにないようだ。で、TSUTAYAで20曲入り、すべてのトラックが彼のソロ演奏というベストアルバム「Beyond Bondaries」を借りてきて聴いてみた。

 これはすごい。確かに超絶技巧だ。とてもひとりで弾いているとは思えない部分もある。それでいてアル・ディメオラなどのような驚くような早弾きで技術を見せつけるわけではなく、音楽が自然に流れて聴きやすい。

 なんでも彼はギターに独特のチューニングを施すらしい。例えば「Aerial Boundaries」と言う曲では CCDGAD(5,6弦がオクターブ)という極めて独特のもの(『そんなの弾けるの?』by MINMIN)だし、そのほかにも様々なチューニングを使って演奏するらしい。私は楽器についてはよくわからないのでそのへんは他のページに譲るが、そうやってギターの奏法の自由度を広げたパイオニアだと言っていいだろう。現在活躍する押尾コータローあたりはこの人の影響を色濃く受けている。

 それら超絶技巧や異色のアイディアを消化して当たり前なアコースティックでナチュラルな音楽に仕立てているところがまた、いい。だからこれはウィンダム・ヒルらしくBGM的に流して聴いてもいいし、集中してよく聴くとその技術とアイディアの懐の広さに驚かされてしまう、一枚で二度おいしいアルバムである。

 マイケル・ヘッジスは1997年自動車事故で亡くなった。まだ40歳そこそこだった。惜しい。

ビル・エヴァンス コンセクレイション

2005-12-20-Tue-13:13

1978年のその夜、ウイリアムはギグがはねたあと、一人でバーのカウンターで飲んでいた。
彼は仕事上の悩みを抱え込んでいたのだが、彼の回りの人間はそんなことには気がついていないようだった。
彼の職業はジャズ・ピアニスト。
かつてはあのマイルス・デイヴィスのグループでプレイしたこともあった。マイルスのグループに、革新的といわれたモード奏法をもたらしたのは彼であった。

マイルスのグループを離れてからずいぶん長いこと彼は、ピアノトリオで演奏を続けていたのだが、彼は、自分の演奏が以前ほど輝いていないのではないかという想いで悩み続けていた。
もちろん、あのヴィレッジ・ヴァンガードのようなわけには行かない事は彼にもわかっていた。
あの時はスコットがいてくれた。
あの夜、スコットのベースは神の息づかいのようだった。
それにインスパイアされてウイリアム自身のピアノも、ポールのブラシまでが冴え渡っていて、とても普通では考えられないくらい研ぎ澄まされた演奏だった。
だがスコットはあの後すぐ死んでしまった。
その後もさまざまなベース奏者やドラマーと共演した。
中にはとても素晴らしい演奏だった事もある。
ギタリスト、ジム・ホールとの共演などはとても素晴らしかった。
だが、やはり彼にとってあのヴィレッジ・ヴァンガードの夜は特別な体験であった。

彼はバーボンのグラスに向かって呟いた。
「あの時の感覚の半分でも、今感じることができたなら…」
「できたなら…?」
低い声が鸚鵡返しに反問してきて、ウイリアムは驚いて声の方を振り返った。
自分一人しか座っていないと思っていたカウンターの、しかも彼のすぐとなりに、その黒いスーツの男は座っていた。
その男は細身の白人で、鋭い目つきをしていたが、口元には笑みを浮かべていた。
「いや失礼致しました。つい耳に入って気になったものですから…ウイリアム・エヴァンスさんですね。
わたしはあなたの昔からのファンでして、レコードもたくさん持っていますし、こうして実際によく聴きにもきているんです。例のヴィレッジ・ヴァンガードの夜もあの場所にいたんですよ。」
「…それはどうも…」
「いやあ、あの夜は本当に最高でした。まるで悪魔の翼に触れたかのような演奏でした。」
ウイリアムは苦笑しながら答えた。
「わたしはスコットのベースに神が降りたかと思っていたんですが」
彼は謎めいた笑みを浮かべてウイリアムの言葉を受け流した。
「ところで先ほどおっしゃった『あの時』とはやはり今わたしが申し上げた、1961年のヴィレッジ・ヴァンガードの事ですね…もう一度あの時のような演奏がしたいと?」
ウイリアムは苦笑いを浮かべた。
「聞かれてしまってはしょうがないですね…その通りです。あの夜の不思議な感覚が忘れられません。スコットにもポールにももちろんわたしにも、あの夜だけ特別なインスピレーションが降りてきたのです…後にも先にもあんなことはなかった。もう一度あんな演奏ができたら…」
「命も惜しくないですか?」
ウイリアムはしばらく男を見つめ、それから自分のグラスへ視線を落としながらもはっきりと答えた。
「…そうですね…命も惜しくない」
「では、わたしと取引をしませんか」
「なんですって?」
驚いてウイリアムは男の方を見た。男はまったく冷静な顔をしている。
「あなたは一体…」
「そうですね…人々はこう呼びます。『悪魔』ってね。ファウスト博士の話はご存知でしょう?あなたにもそれと同じ契約はいかがかなと思いまして。要するにあなたには最高の演奏をできるパートナーとインスピレーションを提供いたします。あなたの魂と引き換えにね」
ウイリアムは笑ったが、男は真剣な顔でこちらを伺っている。
「いいでしょう」ウイリアムは言った「最高の音楽を作り出せるのなら魂なんてどうでもいい」
「それでこそ芸術家というものです」
男は言いながら書類を取り出した。あまりにもその手の動きが速かったのでまるで宙から取り出したかのようだった。いや、実際そうだったのかもしれない。
「ここに細かい契約内容が書いてあります。良くお読みになったうえでサインを」
「言ったろう、最高の音楽を作り出せるなら、魂なんてどうでもいいって」
言いながらウイリアムは懐からペンを取り出そうとしたが、男はそれを押しとどめて言った。
「サインは血でお願いします。何しろ特別な液体ですからね」
「哀れなファウスト先輩にもそういったんだろ?」
「もちろんそうですよ。あなたのご存知のスコット・ラファロ氏にもね」

それからしばらくして、ウイリアムはマークとジョーという若いミュージシャンに出会った。三人で演奏するうち、求めていた最高のパートナーであることが分かった。ウイリアムは雑誌のインタビューに答えて、現在のトリオはスコットとポールがいた頃に匹敵する、と言っている。彼らは演奏を重ねていくうちにどんどん進化していった。その様子は「パリ・コンサート」や「ジャーマン・コンサート」を聴くと良く分かるが彼らの演奏はどんどん完璧に近づいていく。しかしそれにつれて、ウイリアムの体調は悪くなって行った。

そして1980年9月、サンフランシスコのキーストン・コーナーでウイリアムのトリオが演奏したライブ音源が現在「Consecration」(捧げ物) と呼ばれる2枚組(現在は分売)のアルバムになっている。
1曲目の「You and the Night and the Music」でいつになく燃え上がる音楽の中に、既に彼の肩に悪魔の翼が触れるのを聴くことができる。
そして最後に演奏したと言う「My Romance」。私はいつもこれを聴いて思う。ウイリアムは悪魔の呪縛に打ち克ったのだろうか…?

ウイリアム(ビル)・エヴァンスは1980年9月15日、サンフランシスコで帰らぬ人となった。

※この記事は以前P&M Entertainmentに掲載したものから転載しました

ビル・エヴァンス ワルツ・フォー・デビー

2005-12-15-Thu-23:55

ビル・エヴァンス、スコット・ラファロ、ポール・モチアンの三人が1961年6月25日にヴィレッジ・ヴァンガードに出演したときのライブは、この「ワルツ・フォー・デビー」と「サンディ・アット・ヴィレッジ・ヴァンガード」の2枚のアルバムとなって世に出た。
 ジャズという音楽は数人で即興演奏を行うというフォーマットであるわけだが、ここで聴く音楽はこのジャズという形態の音楽で実現できる最高級のものであるといえる。三人のミュージシャンがあたかもひとつの『音楽を創造するもの』に融合したかのような強力な一体感。最初の「マイ・フーリッシュ・ハート」のはじめの何音かで、世界にそうたくさんはない「完全なもの」の美を感じ取ることができる。

 不思議なのはこれが演奏されたときに居合わせた人々が、ほとんど聴いていないことである。CDで聴くと演奏の間も話し声や皿の音がずっと聞こえているし、曲の終わった後の拍手もまばらでおざなりである。
 こういう環境でこういう集中度の高い神がかりな演奏が行われたというのも興味深い。

 スコット・ラファロはこのライブの10日後に交通事故で急逝、このトリオはわずか4枚のアルバムを残して終焉を迎えてしまう。
 その後もビル・エヴァンスはさまざまなミュージシャンと組んでトリオを演奏し続けるが、なかなかこの最初のトリオに及ばないと悩み続けることになる。

 そして1978年…

ビル・エヴァンス エクスプロレーションズ

2005-12-07-Wed-23:22

ビル・エヴァンスがスコット・ラファロ、ポール・モチアンとのトリオで発表したアルバムはわずか4作。
「ポートレイト・イン・ジャズ」「ワルツ・フォー・デビー」「サンディ・アット・ヴィレッジ・ヴァンガード」そしてこの「エクスプロレーションズ」。
 そのどれもが珠玉の作品であり、いまさら私がここでいろいろ述べるまでもないのかもしれない。
 その4作の中でも私の最も好きなのがこの「エクスプロレーションズ」である。タイトルは「探索」の意味。マイルスの「ナーディス」以外はほとんど知られていない曲ばかりを取り上げ、知られざる曲の「探索」でもあり、新しいハーモニーとインタープレイの「探索」でもあると言えそうだ。
 1曲目の清新な「イスラエル」から惹きつけられてしまう。
「ハウンテッド・ハート」「ハウ・ディープ・イズ・ジ・オーシャン」などバラード曲の美しいこと。よく言われるようにラファロのベースはすばらしいが、モチアンの抑制の効いたドラミングもすばらしい。
 このトリオはこのアルバムを経て、あの有名なヴィレッジ・ヴァンガードのライヴに到達するのである。こちらについては後日。

ウエザー・リポート Tale Spinnin'

2005-05-27-Fri-00:00
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私が初めて聴いたウエザー・リポートのアルバム。
思えば私がワールド・ミュージックという物に興味を抱くようになった…と言うかその遠因になったアルバムと言えるだろう。
ウエザー・リポートは、ジョー・ザヴィヌル(key)とウェイン・ショーター(ts,ss)を中心にしたグループで、70年代後半から80年代にかけて当時引退していたマイルスに変わってジャズ界をリードした。
世界中からの素材を取り入れてエレクトリック・サウンドとジャズの即興性で味付けした独自な音楽が特徴で、後にジャコ・パストリアス(bs)が加わって「Black Market」「Heavy Weather」の二大傑作を生み出した。
この「Tale Spinnin'」はジャコ加入直前の作品で、一般的な人気は前述の二作に比べてかなり低い。しかし、私はこのアルバムが大好きなのである。
1曲目(LPのA面)の「Man in the Green Shirt」で、一気に惹きこまれる。軽快で美しく、どことなくエキゾチックな音楽である。4曲目(LPのB面)「Badia」はなにやらマダガスカルあたりのイメージということらしく、当時最先端のヴォコーダーを駆使した神秘的な曲。ドライでクールなイメージの「freezing Fire」を経て優美で神秘的な「Five Short Stories」で終わる。完璧な構成である。
45分間の間に他の音楽とは全く違う世界を見せてくれる。今聴いてもエレクトリック楽器こそ古くなったがその国境をも一跨ぎに飛翔するかのような音楽の精神は全く古くない。
とにかくこの作品に、高校生だった私は打ちのめされた。音楽の多様さと言う物に目を開かせてくれた。
ザヴィヌルさんありがとう

リターン・トゥ・フォーエヴァー ライト・アズ・ア・フェザー

2005-05-23-Mon-21:21
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最近は、70〜80年代のジャズっていうか当時はクロスオーバー・ミュージックと呼ばれていた(後にフュージョン・ミュージックと呼ばれるようになって陳腐化した)音楽を聴きたくなって、引っ張り出したのがこれ。
リターン・トゥ・フォーエヴァーはピアニスト、チック・コリアのグループで、これは1972年のアルバム。前作「リターン・トゥ・フォーエヴァー」も超傑作だったが、前作から引き続きの、浮遊感漂うサウンドがとても心地よいアルバム。うまいのか下手なのかよくわからないフローラ・プリムの歌もこの作品にならマッチしているといえるだろう。
チック・コリアが後に繰り返し演奏する事になる「スペイン」や「チルドレンズ・ソング」の原型が聴ける点でも貴重。
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